英語道(トラスト英語学院のブログ)

トラスト英語学院(長野県伊那市)塾長。英語指導や自身の英語学習雑感、趣味のランニングと筋トレについて綴ります(^^)

大学入試制度改革は拙速か?

2018年03月20日 | 2020年大学入試制度改革
以下に、昨日の朝日新聞(DIGITAL)の社説を引用します。
入試英語改革 東大の重い問題提起

民間の英語検定試験を合否判定に使うのは拙速ではないか。センター試験の後を継ぐ「大学入学共通テスト」に、東京大がそんな疑問を投げかけた。

新テストは20年度から始まる予定だ。来月には最初の受験生となる世代が高校に入学し、どんな授業をするかの模索も始まっている。そんな状況での異議申し立てに批判も出ている。

しかしこの間、政府が入試改革を急ぐ陰で、高校や大学の不安が置き去りにされてきたのは確かだ。新テストの大枠が決まった昨年春、朝日新聞は社説で準備不足を心配したが、解消されたとは言いがたい。

今からでも遅くない。文部科学省は現場からの問題提起を重く受けとめるべきだ。

民間試験は、従来の「読む」「聞く」に加えて「話す」「書く」を課すために導入が決まった。この4技能の大切さについてはおおかたの異論はない。

東大が訴えるのは「公平・公正の担保」への疑問だ。

五神真(ごのかみまこと)総長は、とりわけ話す力は「学生の育つ環境によるばらつきが大きい」という。授業だけでは身につきにくく、海外生活や留学の経験者、英会話教室などにお金を使える家庭の子が有利になる。さらに年に数回ある民間試験を「お試し」で受けられるかどうかで、差がつくともいわれる。

そもそも民間試験は複数の業者や団体が実施していて、留学用やビジネス向けなど目的も難度もまちまちだ。異なるテストを使って、受験者の力を公平に比べることができるのか。文科省は可能との立場だが、「身長と体重を同じ指標で測るようなもの。科学的ではない」といった指摘も多い。

こうした疑問を積み残したまま、導入に踏み切ってよいものか。ためらう大学は東大だけではないだろう。

入試は大学が自らの教育方針に沿って選抜方法を決めるのが原則だ。国公私立を問わず、民間試験にどれくらい信頼を置くかによって、自主的に配点の割合を決めればよい。認識が変われば周知期間を確保してその割合を変えてもいいし、使わない判断があってもいい。

そのうえで、関係者は改善策の検討を続けるべきだ。公平さを重視する観点から、時間や経費がかかっても国が独自に試験を開発すべきだ、という声も根強くある。

多くの人が納得する仕組みをつくるのは容易ではない。それでも、現場の声に耳を傾け、見直しを重ねることで、難題の答えを探らなくてはならない。
(3月19日 朝日新聞社説より引用)

記事中にあるように大学入試は「大学が自らの教育方針に沿って選抜方法を決めるのが原則」だと思います。そうしないと均一化されて全く面白みがありません。2020年からの大学入試制度改革では二次試験は現状通り維持されると思われますので、完全な均一化はもちろん免れます。

今回の東大が投げかけた疑問は移行期間の民間試験利用についてであり、この期間はセンター試験と民間試験を併用するからまだいいでしょう。しかし、移行期間を過ぎた後は民間試験のみになります。それ以降、何をどう利用して受験生の英語力を点数化するかは、CEFRの段階別評価を利用するとは言われていますが、曖昧なままです。CEFRを使えば、4技能を数値化できるので受験生の英語力を測ることはできるかも知れませんが、スピーキングに関しては人対人の判断になり、客観性が担保できなくなる可能性もあります。

民間の英語検定試験を合否判定に使う判断は、各大学に委ねられるべきであり、使わないという選択肢もあるべきです。

まだまだ議論の必要があるのに、拙速感が否めない大学入試制度改革。東大による今回の問題提起は一石を投じてくれることでしょう。


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