鉄拳 パラパラ漫画 『母の辛抱と、幸せと。』
「アホだよね~~~!」本当に 昨日の朝の事なんですけど、いつもの家掃除の際に掃除機では無く、拭き掃除に変更した僕。
で、絞った雑巾片手にキッチンの床を拭いたんですけど、 濡れて滑りやすくなった床にしゃがんで拭くために力を入れた瞬間、
右足だけがツルリとすべって、変な風に膝下をねじりながら膝を強打・・・ ドン!! という鈍~~い音。
「痛~~~~~~~~~~~~!」 と、 なんとか立ち上がり、でもそのまま雑巾を洗って、そのまま痛み抑えて他の部屋も拭き掃除。
全部が
終わり、その時は痛みがそんなでもないくらいに低下していたので、大丈夫だろうなと、その時は思っていた。
そんなことより”明日は晴れる”という天気予報でウキウキ気分で職場に。
倉庫からセイルやボードを出し、予想できる風速に併せて持って行く道具を替えるのですけど、そのついでに細かい補修や改造もして、
後は明日の暖かい南風に心を踊らせて、 帰宅。
目覚めてみると空は明るく、 「オッシャ! 今日は晴れ!」 で、気持ちは高揚するけど、やっぱり膝が変。
こうなると、唯々葛藤をする自分になるわけでして、 痛いのを無視してウインドサーフィンに行くかどうか?になってくる。
自分なりにまだ残る痛みを分析して、 最後に出したのは、 今日は無理しないでおこう! という判断。 まだシーズン入り口ですから。
「はて!、そしたら今日という一日をどう過ごしたらいいのだろうか?」 そう考えてすぐに思い浮かんだのは親父の畑。
前回草刈りを一月以上が経つ、 すっかり足腰が衰えた親父が、畑の雑草をきちんと刈れていればいいけど・・・・
だぶん、駄目だろうな・・・ というのが、自分の正直な気持ち。
そこで、家を出るとすぐに実家に電話して、 いまからそっちに行くよ! と伝えた。
高速道路は、なぜか? いつもより空いていて、予定より大分早く着いた。
宅急便を受け取るために偶々母親が顔出していて、 親父が家に居ない、聞くと畑に行って居るとのこと。
すぐにエンジンをかけ、5分もかからないところにある畑へ向かう僕。
多分・・・・想像はつくけど、出来れば 綺麗に草の刈られた畑出であってもらいたいと心から願う。
でもね、現実は厳しい。
到着と同時に目に入るのが親父の姿、そして知り合いらしき人が側に居て話をしている。
その先に広がるのはすっかりと、緑色に染まった畑。
想像は付いていたけど、 そこまで親父の体力は弱っているのかと・・・・
とにかく、農機具小屋から刈払機を出し、混合ガソリンを入れると作業開始。
まったく風も無く、 梅雨の後の湿気のすごさ、そして余りにも伸びきった雑草。
むしや蚊、草木や 刈払機で刎ねた小石等から足を守る為、カッパみたいなジャケットを下には居ているのですが、
出る汗の量が半端じゃない。
日陰で友人と話す親父の姿を背に、 唯ひたすら、草ボウボウの畑を刈り囲んでいく僕。
なぜか泣けてきて、ボタボタと額から落ちてくる汗と涙が混じり、それを汚れきったタオルで拭っていく。
誰しもに訪れる老い、 決して避けることのできない現実。
透き通るように整備されて綺麗になっていた昔の畑と、そして目の前にある雑草が生い茂るだけの畑。
ひとしきり、雑草を刈り終わると、 全部雑草だと思っていた部分に、埋もれていたジャガイモが見えてくる。
そして、小屋から鍬を出して、 芋を掘り起こしてかごに入れていく。
後2週もすれば大きなジャガイモになっていただろうなと・・・・
かったときは、既に葉よりも、雑草の方が背丈が伸びていて、 ジャガイモが下に植えられていたのが見えなかったんですね。
すおっかり雑草に覆われていたので、多分地下の芋は全滅だろうなと思っていたのに、 きちんと実がなっていた。
そんなに大きくは無いけど、普通に売られているのとそんなに差が無い程度が2/3。
そうしている間に 自分の幼き日の情景が目に浮かんできた。
小学生当時、 小さいけど庭付きの平屋造の市営団地に住んでいた時、 親父は毎週朝から畑の世話をしていた。
鶏が居て、産みたてのまだ温かい卵に、 とれたてのキュウリの塩もみ、 ほうれん草の味噌汁。
それが普通で当たり前だった・・・・、再び泣きたい気持ちになり、
掘り起こしたジャガイモを一つ一つ籠へと入れていく。
草刈りで約1時間半、 そして掘り起こしで1時間。 とにかく風も無く、上も下もぐっすりと染みこんだ汗でただただ重く感じる。
掘り出した芋をひとしきり籠に入れ終わったところで、 熱さ避難で家に帰っていた親父が心配して着てくれた。
籠をその車に積むと、 汗だくの服は脱いで別の籠に入れ、 二人で家に戻る。
昼飯を用意していてくれた母親、そして親父、 僕の取り囲む宴は 幼き頃より全く変わる事が無い。
でも、ただ一つ異なるのは、 以前の様な強くて恐ろしく、厳しい親父では無く、 ただただ、優しくなってしまったということ。
出来るなら、 今でも 突然げんこつを頭に食らわせて、 叱りつけるその姿であってもらいたいと、心から願う。
人の人生は一方通行。 決して元には戻らず、ただただ先に向かって歩み続けていくのみ。
いつかは自分にも訪れる一時、 その時自分は親父とどう違うであろうか?
ただ、そのことだけを思う僕なのです。
翔