昼前の事、なにげなく携帯を見たら着信記録が残っていた。
息子からのもので、「なんだべさ?」と 折り返し電話して話を聞くと、 「S君が受かったよ~!」 という連絡だった。
「ほ~!」 と驚くと同時に、涙腺がうるうる の感じ、というのは、このS君、息子と小学校一年生からの友達で、いわゆる親友関係でもあり、
僕も幼い頃から二人を連れて何度もキャンプ旅行へ連れて行ったりしていたので僕もよく知っている。
我が子みたいな感覚すら持ち合わせていて、そのS君が1~2%しか通れない厳しい枠を突破して仕事に就けたのだから、嬉しくないはずがない。
中学で息子達が構成していた不良非行グループの中でわりかし気の弱いS君は、どちらかというと、からかわれやすい存在でもあり、
しかしながらその裏表のない性格と愛想の良さで皆から好かれていた。
ただ、不良非行グループの一人である以上は、当然? 勉強なんか出来るはずもない訳で、130人位いた学年生徒達の、一番下から5番目あたりまでを順繰り交替している、
俗に言うところのお馬鹿(当然家の息子含む)?連中だ。
*ちなみにその成績最低争いの中の二人(家の息子とそのS君)が国家公務員になるとは、本当に世の中は分からないものです・・・・ みんな地元の小さな会社に勤めているのに。
中学卒業直前からマリンスポーツに身を浸し、一年後に一念発起して高校へ進学、やがて大学して今の公務に就いた家の息子と、そのS君は少し似たような足取りをたどっている。
親友である以上は少なからずなにがしかの影響を与え合うのは男の子達の普通の姿でもあるのだけど、S君も家の息子に劣らず、勉強を心の底から嫌がっていたわけでして、
当然?彼は高校への道を望まずに就職をした。
ところがそこは、今盛んに言われている完全ブラック会社(なんとか鮨)で、そこに来て”中卒”でしかない彼はそうとう辛い思いを積み重ねる毎日。
しかしながらその学歴故に、他に就職出来るところなんか早々有るはず無いのは当然で、ただひたすら奴隷のような扱いを受ける生活を送っていたわけです。
ところが、高校から大学に進学して、毎日を笑顔ですごしている家の息子にずっとそれでいいのか?と諭され続け、ついにブチ切れてしまった。
学歴がないというだけで存在する、世の中の絶対的現実に嫌気がさしてしまったということだ。
普通なら腐る人間が多いのですが、そのS君がもっている性格がそういった方向に彼自身を向けさせなかったのと、”たまたま”親友である息子の励ましが上手くシンクロしたみたいで、
アルファベットすらろくに書けなかった彼は、猛烈に勉強を開始。
*エリートや偏差値秀才が持ちやすい ”お勉強が出来る=優れた人間” というつまらない思想とプライドはなんの根拠もない、単なる妄想でしかありません。
故に、現実(社会)の厳しさに触れてそれが簡単に破壊されてしまうと、昨今のメデイアを賑わすような大事件を引き起こしたりする。
これは基本的人間性が弱くてもろい事に起因するわけですが、際限なく地に落ちて行きやすいうえに、そこから再浮上するのが極端に難しい。
それに比べて落ちこぼれ連中(不良非行系の行動力のある子)というのは反抗期が普通の子より激しい子が多く、親や学校で叩かれ、なおかつ底辺を這う様な成長をしてきているので、非常に打たれ強いんです。
*ただし、ネグレクトや虐待、滅茶滅茶な家庭環境(例 親が薬物中毒)等で育った子は除きますが・・・
そうしたグループ全体が浮上するという事はよく有って、その為には起爆剤となるようなコア=仲間の一人で成功していく姿 なんかを現実的に目の当たりにすると、「あいつが出来るのなら!」と意識付くのと、元々の
連帯感強いですから、全体がそのコアに引っ張られながら上昇をし始める傾向があります。
ほどなく高校卒業程度認定試験(大検)に合格、そして4年制大学へ進学、将来は警察官になりたいと夢見て・・・・
短大を卒業した家の息子は、やはり当時の就職氷河の風にかなり翻弄されたけど、ほぼ一年という年月をかけて公務職に付、今は家庭を持って一児の父親なんぞをやってる。
しかしながらS君は今年の春に大学を卒業したものの、希望の公務員試験には受からずに、その後希望する仕事の就職試験に次々と落ちては失意する事の繰り返し。
そのS君と僕が久々に顔を会わせたのが今年の11月、丁度息子が自活のための引っ越しをしていた時で、その手伝いに来てくれたのが彼だった(無職)。
彼は、僕の運転するハイエースの助手席に座って、往復する車の中で色々と話をしたんだけど、何年もの間、学歴差別?とブラック企業で大変苦しんだ経験のある彼は、
二度とそうした会社に就職したくないとしきりに語っていた。
しかしながら、なる程な~と僕も思う様な会社を受けも、ひたすら落ちるだけの繰り返し。
話しているうちに、有る事に気が付いた僕、「一体何を自分がしたいのか?を解っているのか?」と、 そう僕は彼に聞いたわけなのですが、「やはり警察官になりたいです・・・・」と、
なんとも力の無い返事が帰ってきた。
でも、今の御時世、これだけ経済と社会情勢が悪い状態で人気の高い公務員に簡単になれるはずがないのは当然で、とにかく難しさと倍率が半端じゃないわけだ。
そこで僕は彼に質問、「日本の警察でなければ駄目なのか?」と、 すると英語力がウンウンといって更に肩を落とす。
これだな・・・・と思った僕は、すこし余計なお世話かもしれないと思いつつも、多少のお灸を据えつつ、お話。
それは家の息子に施した事のある方法と全く同じで、簡単に説明するなら 人生とはどんなものか? ・ 運不運は自分の考え方と、どう繋がっているか? ・ 自分の未来のどこに主軸を置き、
その為にどれだけ努力をしたのか?、するべきか? 等々を 出来るかぎり短い時間に凝縮して話した。
なんでもそうだけど、一度で駄目なら、もう一度。 それが駄目ならまだ受ける、それでも駄目なら畜生!という気持ちで又受けて、それで駄目なら根性入れて受ける、更にそれでも駄目なら
受かるまでやるのだと。
就職試験に「あなたは一度しか受けてはいけません!」等と書かれでもしていないかぎり、何度でもやればよい。
例えそれが書類審査で落とされ続けたとしても、際限なく挑み続ける前向きな姿勢というのが何より大切。 相手も人間であることを第一に考えて行動する必要がある。
ただね、単に履歴書を闇雲に出しても駄目なんだよと・・・・、そして少しだけ他の者達より浮揚出来る方法を直接伝授(たいしたことはありませんが)し、最後に「頑張れ!」と激励した。
そして迎えた、たった一人の採用枠への挑戦、その結果が息子からの電話だったわけです。
「英語ができねえ~だと?」そんなもの、 10~20Kgぐらい体重が落ちて、半分鬱になるほど苦しむ経験をすりゃ~、誰でも話せるようになる。
言語なんて所詮その程度の物でしか無いわけで、学術論文を書く訳じゃ~有るまいし、別段難しい事でも偉ぶれる様な物でも無い。
たまたま?かは分からないけれど、 英検だTOEFLだの話せる他者(エリート?)を差し置いて彼が通ったのは、自分の気持ちと強い意志が採用担当官の心を動かしたのだと僕は思っている。
まあ、なにはともあれ、S君の新しい人生に乾杯の言葉を贈りたい。
おっとと・・・・最後に、米国本土で受ける、銃器取り扱いの訓練はきびしい~ぞ~! 泣け泣け! 新米MP隊員君。
だはははははは!
中村あゆみ It's All right