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日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

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毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2024 Uesugi Hayato(上杉隼人)

『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【31】(2023/10/28)

2023-10-29 01:06:52 | 桐生タイムス
 マーベルの山に挑む 
アメリカ文化の成り立ちを詳細に追う1冊

マーベル・コミックは1961年からスーパーヒーロー・コミックの出版を開始し、以来、アメリカ文化の基盤を作り上げてきた。すでに2万7000冊以上出版され(印刷されたページは50万ページ以上だ)、この数字はさらに伸びている。出版点数はあまり膨大で、すべて読破するのはほぼ不可能だと思われる。だが、ある程度の制限はつけたものの、このマーベルの山に果敢に挑み、ほぼ読破した者がいる。今月の「永遠の英語学習者の仕事録」はこの人物、ダグラス・ウォーク(Douglas Wolk)の大変な野心作『マーベルのすべて』(All of the Marvels)を紹介する。

★    ★    ★
I realized that I’d become able to find something to enjoy in just about any issue, new or old. Sometimes, it was a detail that connected to another one on the story’s perpetually expanding canvas. (It’s a truism about superhero comics that nobody ever stays dead, but it’s more broadly true that nothing in them goes away forever. Any character or gizmo or situation that’s ever appeared in the Marvel narrative is fair game for any of the story’s subsequent tellers; someone a decade or three later will inevitably come up with a plot in which Crystar the Crystal Warrior or Arcanna Jones or the Leader’s Brain-Wave Booster can serve some purpose, and it will be richer for a reader who recognizes that element from the first time around.)
 新旧どの号にも何か楽しめるものがある、と気づいたのだ。絶えず拡大を続けるマーベル・コミックのキャンバスにおいては、あるストーリーの細部が時に別のエピソードにつながる。(スーパーヒーロー・コミックでは誰も死なないのが定石だが、平たく言えば一度出てきたものは事実として何もなくならないということだ。マーベル・コミックに登場したどんなキャラクターや装置も、展開したどんな状況も、その後のほかの作者によってほかのストーリーで語り直される。10年、あるいは30年のちに、クリスタル・ザ・クリスタル・ウォリアー*1やアルカナ・ジョーンズ*2といったキャラクターや、リーダーが作り出したブレイン・ウェーブ・ブースター*3といった装置は、いつかきっとどこかのシリーズに再登場するだろうし、元ネタを知っている者はさらに楽しみが増すだろう。)


 マーベル・コミックは「あるストーリーの細部が時に別のエピソードにつながる」ことで、どこまでも拡大し続ける。出てくるキャラクターも膨大で、当然日本では知られていないものもたくさんあるから、ここに示しただけでも*を付けたものには以下のような注が必要だ。

*1 クリスタル・ザ・クリスタル・ウォリアー(Crystar the Crystal Warrior) 1983年5月刊行に初登場。クリスタル王国の支配者で、クリスタルの創造物に変身する能力を持つ。クリスタルはマーベル・ユニバースの一部だったが、それほどの人気を得ることができなかった。
*2 アルカナ・ジョーンズ(Arcanna Jones) 1978年12月の『マーベル・プレミア』に初登場。強力な魔術師で、テレキネシス、テレパシー、魔法のエネルギーを使いこなし、スクワドロン・シュプリームやアベンジャーズほか多くのスーパーヒーロー・チームのメンバーだった。
*3 リーダーが作り出したブレイン・ウェーブ・ブースター リーダー(Leader)はハルクの宿敵。頭部は巨大で、驚異的に高いIQと超人的な知性を持つ。ブレイン・ウェーブ・ブースター(Brain-Wave Booster)を発明し、自身の知性と精神能力をさらに向上させて、人の心をコントロールしたり、自分の意識をほかの人に乗り移らせることができるようにしたりした。リーダーは1962年11月刊行の『テールズ・トゥ・アストニッシュ(驚くべき話)』に初登場、ブレイン・ウェーブ・ブースターは1964年12月刊行の同タイトルに登場。

★   ★   ★
わたしは元々、ポップ・ミュージック批評を仕事としている。そこでひとつ学んだのは、人々の支持を得る作品には何かがある、ということだ。何か人々の注意を引き、楽しませるものがある、似たようなものはあっても、ほかのものには決して形にできない何かがある☆1、ということだ。芸術的にはすぐれているが、商業的に成功しなかったものは言うまでもなくたくさんある。本書後半で、そうした多数の作品に賛辞を送りたい。だが、当たったコミックは、ヒット曲がどれもそうであるように、どこか違う☆2。コミックやポップ・ミュージックといった下位文化を扱う批評家たちの仕事のひとつに、そうしたヒット商品が持つほかにはない魅力を突き止めることがある。
 
 著者も詳細な注を無数に付けている。☆を付けたものがそうで、もちろんすべて訳さなければならない。

☆1 人々の支持を得る作品には何かがある……ほかのものには決して形にできない何かがある 文化的な成功は、大企業が大衆に押し付けることによってのみ実現するという考えをよく耳にする。資本主義の機械を駆使すれば確かに大衆に届けることはできるが、どんなに金をかけようが誰も望まないものをヒット商品にすることはできない。W・H・オーデンの言葉を引用すれば、「中には忘れられるべくして忘れられた本もある。無条件で記憶されなければならない本はない」ということだ。
☆2 ヒット曲がどれもそうであるように、どこか違う 音楽評論家ロバート・クリストガウ(1942~ )の言葉を引用した。

 
 この本を大変うれしいことに、作品社から翻訳出版させていただけることになった。おそらく700ページを超える大冊になると思うが、翻訳をなるべく早く仕上げて、2024年の早い時期に刊行したい。
アメリカ文化の成り立ちを詳細に追う1冊として、マーベル・ファン、アメコミ・ファンのみならず、多くの読者に手に取っていただけるものになると思う。

Douglas Wolk, All of the Marvels: An Amazing Voyage into Marvel’s Universe and 27,000 Superhero Comics(2022)

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。現在、2023年後半最大の話題書の1冊を鋭意翻訳中。
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桐生市長を表敬訪問しました(2023年9月29日)

2023-10-03 19:17:13 | 桐生タイムス
翻訳書は90冊になるのですが、桐生発祥の講談社からの翻訳書が50冊に達したことをお祝いしていただく形で、9月29日、桐生市長を表敬訪問して参りました。

桐生は講談社の創業者野間清治(1878-1938)の生誕の地。

その講談社からそんなに本を出せるなんて、夢のようです。

さらに精進します。 

2023/10/03 上杉隼人



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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【30】(2023/9/30)

2023-10-01 08:51:25 | 桐生タイムス
『ディズニー ヴィランズ タロット』に続いて、今度は……
『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』!

本コラム「永遠の英語学習者の仕事録」第20回(2022年10月22日)で、『ディズニーヴィランズ タロット』(ミネルヴァ・シーゲル著、鏡リュウジ監訳、上杉隼人訳、河出書房新社)を紹介したが、ちょうど1年後の来月10月24日、今度は『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』が発売される。今度も大変光栄なことに、占星術界の大家、タロットの第一人者の鏡リュウジさんとの共同プロジェクトだ。
 現在、非常に大きな仕事を進めていて、毎日机にへばりついている時間が長くなり、エコノミークラス症候群になってしまった(すでに完治)が、そんな中で『ディズニーヴィランズ タロット』のPRビデオの制作はすごく楽しめたし、とてもリラックスできた。ぜひご覧いただきたい。

 今月の「永遠の英語学習者の仕事録」は、この『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』の仕事をご紹介したい。

★    ★   ★
 ディズニー、マーベル、スター・ウォーズ関連の書籍の翻訳刊行では、原書にないものを書き足す時はもちろん、販促用チラシやPR動画やインスタグラムなどの宣伝文も、すべて英訳を添えて許可を得なければならない。これは意外に大変だし、場合によっては日英翻訳者に依頼することになるが、わたしは日英翻訳も手掛けるので、今回も楽しく仕事を進めることができた。
 
 たとえば、

『ディズニー ヴィランズ タロット』に続いて、今度は……

『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』!


といったの売り文句はどんな英語にすればよいか?

In 2022, Disney Villains Tarot Deck and Guidebook was released. This year, Disney Alice in Wonderland Tarot Deck and Guidebook is making its debut!

 
 とすればいいだろう。
 今回も翻訳版には原書に情報を付け足した。それについての英訳も必要だ。

日本語版にはふしぎの国の住人たちの一言説明も! 

Includes a short introduction for each character in Alice in Wonderland.


 以下、その例を、上杉の英訳とあわせていくつか紹介する。

マッドハッターは風変わりなお茶会(マッド・ティーパーティー)を開催する。3月うさぎとは仲よしで 一緒にお茶を楽しんでいる。マッドハッターは白うさぎを追いかけるアリスをお茶会に誘う。

The Mad Hatter hosts an unusual event known as the 'Mad Tea Party,' where he enjoys tea with his close friend, the March Hare. He invites Alice to join them while she is in pursuit of the White Rabbit.


チェシャ猫はいたずら好きのふしぎなネコ。体はピンクとすみれ色のしま模様で、いつもニヤニヤ笑いを浮かべている。ふいに現れたり、ニヤニヤ笑いだけ残して消えたりして、アリスを混乱させる。

The mischievous Cheshire Cat is a peculiar cat with a pink and violet striped body, always wearing a grin. It appears and disappears suddenly, leaving Alice bewildered with its mischievous behavior.


女王はいじわるな性格で怒りっぽく、いつもいばっていて、すぐに「首をはねろ!」と叫びちらす。クロッケーの試合にアリスを誘うけれど、周りが気を使って女王に勝たせようとする。

The Queen of Hearts is an ill-tempered and bossy character who is quick to shout “Off with their heads!” She invites Alice to play croquet, but her subjects try to ensure that the Queen wins.


アリスは大きな木の下でお姉さんに本を読むように命じられるが、退屈してしまう。飼い猫のダイナを連れてお姉さんから離れていくと、白うさぎが大きな懐中時計を持って走っていくのを目にして、追いかける。

Under a big tree, Alice's sister is reading a book and encourages Alice to do the same. However, Alice quickly grows bored and leaves her sister to wander off with her pet cat, Dinah. While wandering, Alice spots a white rabbit running with a large pocket watch and finds herself unknowingly pursuing the rabbit.


トゥイードル・ディーとトゥイードル・ダムは陽気な双子の兄弟。白うさぎを追いかけてふしぎの国に迷い込んできてびっくりしているアリスの周りを飛び跳ねて、歌をうたって聞かせる。ふたりはアリスに「セイウチと大工」の話も聞かせる。

Tweedle Dee and Tweedle Dum are cheerful twin brothers who bounce around with Alice in Wonderland as she chases the White Rabbit. They entertain her by singing and sharing a story “The Walrus and the Carpenter.”


アリスは「私をお食べ」と書かれたクッキーを食べて突然体が大きくなる。そしてこの世界から出られないと泣き出して、涙の海を作り出す。

After eating a cookie with the words “Eat Me” written on it, Alice suddenly grows in size and fears she won't be able to leave this world. Overwhelmed with despair, she weeps, creating a sea of tears.


今回もあらゆるコスト減をはかり、その結果、洋書よりも安い定価3300円(本体3000円)でご提供できることになった!
 『ディズニーヴィランズ タロット』同様、さまざま工夫を凝らした『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』、ぜひ多くの方に手に取っていただきたい。
★   ★   ★

 そして河出書房新社のご提供により、鏡リュウジさんと上杉隼人のサイン入りPOP付『ディズニーヴィランズ タロット』を桐生タイムス」の読者2名にプレゼントいたします。10月4日本紙の14面をご覧ください。

『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』
ミネルヴァ・シーゲル 著
鏡リュウジ 監訳
上杉隼人 訳

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)、ウィニフレッド・バード『日本の自然をいただきます──山菜・海藻をさがす旅』(亜紀書房)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。「スター・ウォーズ」、マーベル、ディズニー関連の書籍を多数翻訳。現在、2023年後半最大の話題書の1冊を鋭意翻訳中。


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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【29】(2023/8/26)

2023-08-27 21:47:22 | 桐生タイムス
ディズニーテーマパークの思い出を振り返り、また訪れてみたいと思う1冊

……芸術の想像力によって生み出されたディズニーテーマパークのポスターは、どれも各アトラクションの特色を生き生きと伝えている。中には長い歴史を持つアトラクションの驚異を再燃し、60年以上色あせない魅力を今に伝えるポスターもある。このようにしてディズニーテーマパークのアトラクションポスターは、ディズニーパークでともに楽しく過ごした思い出につながる共通のイメージを、わたしたちの意識の中に呼び起こしてくれるのだ。

★   ★   ★
ディズニーテーマパークには、アトラクションポスターが数多く貼られている。どれも各アトラクションの魅力を生き生きと伝えている。だが、アトラクションポスターをじっくり見たことがある人は意外と少ないかもしれない。ディズニーテーマパークの魔法のゲートをくぐれば、パーク内のアトラクションを存分に楽しみたいし、ディズニーのキャラクターが登場するパレードなど、見逃せないものがたくさんあるからだ。
本書『続 ディズニーテーマパーク ポスターコレクション』は、パーク内で見落としてしまったかもしれない魅力的なポスターを多数収録した1冊だ。ちょうど10年前の2013年に出版され、何度も版を重ねる『ディズニーテーマパーク ポスターコレクション』の続編となる。

In the years since the new millennium began, creative teams at Disney have introduced new ways of extending a visit to a Disney theme park well beyond the time spent within the magical gates. Advances in media and digital connectivity make it possible to heighten the anticipation for an upcoming visit, and afterward, continue the experience with memories that guests can reflect back on over a lifetime.
 21世紀に入り、ディズニーのクリエイティブチームは、ゲスト(来園者)に魔法のゲート内で実際に過ごしてもらうだけでなく、これまでにないさまざまな形でテーマパークを訪れてもらう方法を続々と提案している。メディアとインターネットの発達により、ゲストは次の訪問を楽しみにするだけでなく、楽しかったパークでの思い出を生涯振り返ることができる。

 ディズニーテーマパークの魅力はまさにこういうことだ。行ってすごく楽しかったけど、そこで撮った写真、買って帰ったグッズを見ると、また行きたくなる。21世紀初頭のインターネットの時代には世界中の人たちが楽しい思い出をSNSにUPしている。あなたもこの『続 ディズニーテーマパーク ポスターコレクション』を開けば、楽しかったパークの思い出を振り返り、また訪れてみたいときっと思うだろう。
 本書『続 ディズニーテーマパーク ポスターコレクション』には、カリフォルニア州のディズニーランドとディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー、フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド、ディズニーランド・パリ、そして日本の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーのポスターが何枚も収録されている(東京ディズニーシーのポスターだけでも『タワー・オブ・テラー』『ソアリン:ファンタスティック・フライト』『レジェンド・オブ・ミシカ』『ポルト・パラディーゾ・ウォーターカーニバル』『キング・トリトンのコンサート』『ニモ&フレンズ・シーライダー』などが掲載されている)。どのパークのポスターもウォルト・ディズニー・イマジニアリングの精鋭スタッフによる一級の芸術品で、詳細な解説とともに楽しめる。大判サイズの本に印刷されているから、大変な迫力だ。
 2023年、ウォルト・ディズニー・カンパニーは創立100周年を迎え、東京ディズニーリゾートは開園40周年を迎えた。この記念すべき年にふさわしい1冊、ぜひ多くの皆さんに手に取っていただきたい。
 ……最近は専門性が高く、必然的に翻訳の難易度の高い本を担当することが多い上杉には、すごく華やかな1冊だ。そしてもうひとつご報告したいことがある。本書に加えて、本書収録のポスター画をまとめた「ポストカード集」もこのあと2冊刊行されるが、それをあわせると、なんと講談社で50冊の翻訳書を担当させていただいていることになる。上杉の刊行した翻訳書は今のところ約90冊だが、半分以上、講談社からの出版だ。これはすごいことだ。
 そして実は講談社を創業した野間清治(1878〜1938年)は桐生出身! 桐生と縁のある講談社から50冊の翻訳書を刊行! 感無量です。

★   ★   ★
 お知らせ この豪華な『続 ディズニーテーマパーク ポスターコレクション』を講談社のご提供により、上杉隼人さんのサイン入りで読者1名にプレゼントします。8月29日の『桐生タイムス』紙面をご覧ください。

『続 ディズニーテーマパーク ポスターコレクション』
編 ウォルト・ディズニー・イマジニアリング/講談社
文 ダニー・ハンケ
デザイン ヴァネッサ・ハント
イントロダクション トニー・バクスター
訳者 上杉隼人
講談社

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)、ウィニフレッド・バード『日本の自然をいただきます──山菜・海藻をさがす旅』(亜紀書房)、マイク・バーフィールド『ようこそ! おしゃべり歴史博物館』(すばる舎)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。現在、2023年後半最大の話題書の1冊を鋭意翻訳中。
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人間が生きる上での習慣――大江健三郎がもうひとつ残してくれたもの

2023-07-24 08:18:56 | 桐生タイムス
 本日のGetUpEnglishは7月22日付『桐生タイムス』に掲載された「永遠の英語学習者の仕事録」第28回の連載記事を紹介します。

「永遠の英語学習者の仕事録」第28回
人間が生きる上での習慣――大江健三郎がもうひとつ残してくれたもの

海外のメディア向けに、英語で記事を書きました。
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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【28】(2023/7/22)

2023-07-24 07:09:05 | 桐生タイムス
 人間が生きる上での習慣――大江健三郎がもうひとつ残してくれたもの

 大江健三郎(1935-2023)は、1994年にノーベル文学賞を受賞した。川端康成以来26年ぶり、日本人として2人目の受賞者となった。
 受賞の理由は、「詩的な言語で現実と神話の入り混じる世界を創り出し、現代人の苦境を、不安を覚えずにいられない形で浮き彫りにした」(who with poetic force creates an imagined world, where life and myth condense to form a disconcerting picture of the human predicament today)というものであった。
 大江健三郎が文学に残した功績は計り知れない。『万延元年のフットボール』(1967年)、『洪水はわが魂に及び』(1973年)、『同時代ゲーム』(1979年)などの一連の小説群で「詩的な言語で現実と神話の入り混じる世界を創り出し」、『ヒロシマ・ノート』(1965年)、『沖縄ノート』(1970年)ほかのノンフィクションで「現代人の苦境を、不安を覚えずにいられない形で浮き彫りにした」と言えるだろう。
 だが、大江健三郎は、長男で作曲家の大江光(1963- )ともに、日本だけでなく、全世界にもうひとつかけがえのないものを残してくれた。
 今このことを英語で書いているが、今月の『永遠の英語学習者の仕事録』では、一部紹介したい(海外紙掲載を想定して英語で書いているので、以下、必要に応じてわたしの英訳も示す)。
 大江健三郎は、大江光の1枚目のCD『大江光の音楽』(1992年)のリーフレットに、フランスの哲学者ジャック・マリタン(1882~1973年)の「習慣」という言葉の定義を引用しつつ、次のように書いている。

 人間が永い時をかけて、経験をとおして、その職業の根本にあるものをつくる。そこには当の人間の意識的なものも無意識的なものも、すべて参加している。科学者にはその研究をつうじての人格ときりはなしがたいそれがあり、職人にもその仕事をつうじてのそれがある。マリタンは、それを人間が生きる上での習慣だと言っているのです。
A man lays the foundation of his job through his experiences over a long period. This foundation encompasses everything, including both his consciousness and unconsciousness. Just as a scientist's character is inseparable from their work, an artisan's work is also strongly influenced by their character on the job. Maritain refers to this aspect of human life as “habit.”  

 大江健三郎は海外文学の影響を強く受けていて、作中に特に欧米の重要作家の作品の解釈やキーワードを貪欲に取り込んでいる。大江文学が時に難解と言われる理由のひとつはここにあるかもしれない。だが、この度大江のエッセイを何本か英語にしてみて、英文であればこうした海外の古典作品からの引用が自然に溶け込んでいくように感じた。

 僕は光にとって作曲することこそ、その生きる上での習慣をなしていると思います。知能に障害のある――知的にはいつまでも子供のままの――息子について、誇張した言い方と聞えるかも知れませんが、僕にはかれの作曲の仕事ぶりとその作品に、光の人格があらわれていると感じるのです。

 知的な障がいをもつ大江光との共生は、大江文学のもうひとつの大きなテーマだ。光を投影していると思われるキャラクター(『洪水はわが魂に及び』のジン、『静かな生活』[1990年]そのほかに登場するイーヨー)は、大江健三郎の作品で重要な役割を果たす。

 光がもし作曲をしなかったならば、僕や家族はかれの内面にある、いちばん奥の箱にしまわれている繊細なものを、ずっと知らないままでいたことでしょう。それを表現する手段--和音やメロディーの作り方――をあたえ、表現するように励まし、そのようにして表現されたものをピアノなりフルートなりで実際に耳に聞えるかたちにして人につなぐ。

 障がい者とともに生き、彼らが個性を発揮でできる社会。大江は光とともにその社会を夢見ていたかもしれない。

 その過程をつうじて、光の心のうちに――魂のうちに、とさえいいたい思いですが――あるものを、僕らの共通の世界に呼び出してくださった人たちに対して、日々感謝を深めています。つまり僕として、それらの人たちの生き方の習慣に恩恵を受けているのです。
Throughout this process, my admiration for those who compassionately extract something from Hikari's heart ― or should I say, "from his soul" ― and bring it into our world, has been growing in my everyday life. In reality, I benefit from the "habit" they have in their lives.

 光を見守り、個性を引き出してくれる方たちへの感謝の気持ちを忘れることなく、自身も障がい者と定型発達者が安心できる社会の実現を目指したい。
 それが大江の生きる上での「習慣」であったと、『静かな生活』、あるいは『人生の親戚』(1989年)などを読むと強く感じる。
☆   ☆   ☆
 大江健三郎がノーベル賞を受賞した翌年の1995年10月17日、ある英語学習誌の50周年記念号で東京のご自宅でインタビューさせていただくという、大変な幸運に恵まれた。その日はわたしの30歳の誕生日だった。
「自閉症の方の支援をボランティアでしています」
 インタビューを終えてご自宅を後にする際、世界的重要作家を前にして、気づけばそんなことを口にしていた。
 大江健三郎はただ穏やかな笑みを浮かべていた。そのあと振り返った大江の視線の先には光の美しい顔があった。
 以来、翻訳者、編集者として仕事をしながら、自閉症と障がい者の方の支援活動も続けてきた。自閉症関係の本は和書も洋書を問わず、常時チェックした。
 わたしは幸運だった。ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)を、大江健三郎が2023年3月3日に亡くなる少し前に刊行することができたのだ。あれから27年2か月の歳月が流れていた。

 僕は願っています。将来、あらゆるものを取り込める社会の建設が進められて、より多くの愛とケアが注ぎ込まれる。そうすれば、今言及されたような恐ろしい事件は少なくなるはずです。
 そんな社会において、僕らは誰もが役割を担います。
 障がい者はどのように扱われるべきか?
 社会は障がい者をどのように扱うべきか?
 こうした問題を考えながら、僕ら全員が何らかの役割を見出せるはずです。
 一緒によりよい社会を作り出せるはずです。
 人間の歴史の一部である愛とケアにあふれ、これまで僕らの周りで起こってしまい、今も世界のどこかで起こっている悪いことはほとんど見られない社会。
 そんなすばらしい社会を僕らは一緒に作り出せるのです。

「個人的な体験」かもしれないが、ジョリー・フレミングのこの言葉を聞いた時(『「普通」ってなんなのかな』243ページ)、1995年10月17日に見た大江健三郎と大江光の美しい表情を思い浮かべずにいられなかった。

 海外のメディア向けに英語で記事を書きました。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて80冊以上)。

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ChatGPTの日英翻訳に挑戦――人間はAIに勝てるか?

2023-06-25 21:37:50 | 桐生タイムス
『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」第27回(2023年6月24日掲載)

ChatGPTの日英翻訳に挑戦――人間はAIに勝てるか?

「機械的な日英翻訳であれば、今はChatGPTなどAI翻訳で対応できるかもしれない。だが、人間の心からの喜びや悲しみを別言語に移すのは、まだしばらく人間の仕事だ」
「日本語の例文を、ChatGPTなどで訳した英文と、人間的な感情を人間的に翻訳した英文との違いを例示していただけないでしょうか?」というご提案を、本欄担当の蓑崎昭子記者からいただいた。確かに多くの人々が今もっとも関心を持っているテーマだと思うので、今月はこのことを考えてみたい。

★   ★   ★
「今日は会社を休み、皮膚科に行ってきました」「明日は仕事の後、スーパーマーケットに寄って野菜と果物を買ってきます」くらいの日本語であれば、ChatGPTは、“Today, I took the day off from work and went to the dermatologist.”, “Tomorrow, after work, I will stop by the supermarket and buy vegetables and fruits.”とほぼ完璧な英語にしてくれる。
 ただし、冠詞やcollocation(語の結び付き)や文化的知識はまだ弱いようで、それぞれ、
 I took a day off from work today and went to see a dermatologist.
 I am going to stop by a grocery store and buy some vegetables and fruits after work tomorrow.
と修正する必要はある。ただ、AIでこれだけできれば十分だ。少なくとも日常会話には困らない。
 だが、複雑な日本語となれば、まだまだ人間の翻訳者が必要というか、「人間が英語にしたものをChatGPTにチェックしてもらう」という工程を踏むべきだろう。
 以下の「天皇、皇后両陛下の令和初の親善訪問」(『朝日新聞』2023年6月18日[日])の記事の一節を見てみよう。

 それから約20年。陛下の支えもあり、活動の幅が広がりつつある皇后さまは、皇后として初めて、外国での国際親善に踏み出す。子どもや高齢者、障害者など、社会的に弱い立場にある人々に心を寄せているほか、働く女性への支援などに関心が深い。

「子どもや高齢者、障害者など、社会的に弱い立場にある人々に心を寄せているほか、働く女性への支援などに関心が深い」をChatGPTに英訳を命じると、

She is not only empathetic towards vulnerable individuals in society such as children, the elderly, and people with disabilities but also deeply interested in supporting working women.

と訳してくれるし、これは文法的に正しい。ただ、「国際親善」「社会的支援」という文脈から、「子どもや高齢者、障害者など、社会的に弱い立場にある人々に影響を及ぼす問題に対処することにいちばん関心をお持ちで……」といった「感情的」ニュアンスも読み取れる英語にするのがいいと個人的に思う。よって、この部分も含めて、

About twenty years have passed, and with the support of the Emperor Naruhito, the Empress Masako is now actively involved in various initiatives. She is currently preparing for her inaugural mission as an international goodwill ambassador abroad. Her primary focus revolves around addressing issues that affect children, the elderly, and individuals with disabilities. Additionally, she holds a deep passion for supporting working women.

と訳してみた。これをChatGPTにチェックしてもらったところ、

Your English is excellent! The revised sentence flows well and effectively conveys the intended meaning. It provides a clear and concise description of the Empress Masako's involvement in various initiatives, her upcoming mission as an international goodwill ambassador, and her focus on addressing issues affecting vulnerable groups and supporting working women. Well done!

との評価を受けた。要するによくできたということだ。
 だが、これで満足してはいけない。最後はやっぱり信頼できる人間のネイティブスピーカーに見てもらわなければならない
 この英文を英語のネイティブ添削サービス「英語便」(www.eigobin.com/)に確認してもらったところ、以下のように修正された。

About twenty years have passed, and with the Emperor Naruhito's support of the, the Empress Masako is now actively involved in various initiatives. She is currently preparing for her inaugural mission abroad as an international goodwill ambassador. Her primary focuses revolve around addressing issues that affect children, the elderly, and individuals with disabilities. Additionally, she holds a deep passion for supporting working women. 

 英語も日本語と同じでコンパクトな言い方がよい。よってwith the support of the Emperor Naruhitoは、with the Emperor Naruhito's supportとすれば、"of the"が削れる。
 ここで伝えるべきはthe mission is + abroad(任務+外国)だから、aboardを前に出してmissionにつなぐのがいい。さらに、チェックしてくれたネイティブは個人的な感覚と断ったうえで、an international goodwill ambassadorの肩書にinternationalがあるから、abroadは削除してもよいと思う、とアドバイスしてくれた。確かにそうだ。
 皇后さまは「子どもや高齢者、障害者など、社会的に弱い立場にある人々」の少なくとも4つに関心を寄せているのだから、focusは複数形にして、それにあわせた動詞の活用にすることが必要だ。
 日英翻訳においては「まず自分で訳す」→「ChatGPTに確認してもらう」→「自分で調整する」→「信頼できる人間のネイティブスピーカーに確認してもらう」→「自分で再調整する」の工程が必要だ。
 強調したいことがふたつある。まずは、どんなにAIが発達しようと、「自分で翻訳を作り、自分で最終確認する」ことだ。ChatGPTにはあくまでチェック機能を求めるだけに留めるべきだ。「まずAIに訳させて、それに修正をかける」という人も少なくないようだが、それではAIが最初に作り出した構文や表現に引きずられてしまう。
 そのうえで指摘したいが、ChatGPTとAIを使いこなすことで、今までできなかったことがものすごいスピードでできるようになったのだ。今までは「英語で何と言えばいいだろうか?」「この英語の言い方はネイティブに自然だろうか?」という疑問が出てくると、知り合いのネイティブに聞いたり、インターネットでキーワードを検索したりしなければならなかった。だが、今はChatGPTにたずねれば、全面的な解決は望めないもの、問題の多くをごく短時間で解決できる。
 ChatGPTとAI翻訳機能を使うようになって、わたしの日英翻訳も英文ライティングも革命的に向上していると思う。Asahi Weekly 2023年4月2日号のWeekly Picksには“Living in a ‘normal’ world with a different kind of mind”の記事を書かせてもらったが、ネイティブでもなく新聞記者でもないわたしにそんなことができる日が来るとは夢にも思わなかった。
★   ★    ★
「自分で訳す」+「ChatGPTにチェックしてもらう」+「人間のネイティブスピーカーに確認してもらう」という工程を踏んで、坂口安吾の「日本文化私観」の人間的な感情があふれた一節もなんとか英語にすることができた。

 見たところのスマートだけでは、真に美なる物とはなり得ない。すべては、実質の問題だ。美しさのための美しさは素直でなく、結局、本当の物ではないのである。要するに、空虚なのだ。そうして、空虚なものは、その真実のものによって人を打つことは決してなく、詮ずるところ、有っても無くても構わない代物である。
No matter how visually appealing something may appear, true beauty cannot be derived from its exterior. The essence lies in the substance it carries. Pursuing beauty for beauty's sake lacks authenticity; it is hollow and empty. Empty remains empty, and its undeniable truth fails to deeply resonate with people. Ultimately, the existence or absence of such beauty holds little significance.


上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて80冊以上)。

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本日6月24日付『桐生タイムス』に「永遠の英語学習者の仕事録」第27回の連載記事が掲載されました。

2023-06-24 21:15:55 | 桐生タイムス
 本日6月24日付『桐生タイムス』に「永遠の英語学習者の仕事録」第27回の連載記事が掲載されました。

「永遠の英語学習者の仕事録」第27回
ChatGPTの日英翻訳に挑戦――人間はAIに勝てるか?

「機械的な日英翻訳であれば、今はChatGPTなどAI翻訳で対応できるかもしれない。だが、人間の心からの喜びや悲しみを別言語に移すのは、まだしばらく人間の仕事だ」
先月の「永遠の英語学習者の仕事録」の最後にそう記した。
「日本語の例文を、ChatGPTなどで訳した英文と、人間的な感情を人間的に翻訳した英文との違いを例示していただけないでしょうか?」というご提案を、本欄担当の蓑崎昭子記者からいただいた。確かに多くの人々が今もっとも関心を持っているテーマだと思うので、今月はこのことを考えてみたい。



こちらで一部120円でお求めになれます。

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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【26】(2023/5/27)

2023-05-29 00:32:04 | 桐生タイムス
 本日のGetUpEnglishは2023年5月27日の『桐生タイムス』の連載「永遠の英語学習者の仕事録」【26】を許可を得て、特別に掲載する。
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 人間の心からの喜びや悲しみを別言語に移すのは、まだしばらく人間の仕事~宇山佳佑『桜のような僕の恋人』を英訳する2

 先月に続いて、宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社文庫)の一部を英語にしてみる。

「有明さんは、どうして美容師になろうと思ったんですか?」
左隣を歩く彼女を見ると、美咲は恥ずかしそうに指先で髪をくるくるといじった。
「実はわたし、天パーなんです。小学生の頃、男子に〝くるくる〟って呼ばれるくらい。それがすごいコンプレックスで、お父さんとお母さんに相談したんです。こんな髪いやだーって。でも『気にしちゃダメ』としか言ってくれなくて。絶望でしたよホント。一生このまま生きていくのかなぁって。そしたらお兄ちゃんが泣いてるわたしに気付いて近所の美容室に連れてってくれたんです。すごいドキドキしたけど、美容師さんが『大丈夫、すぐに直るよ』ってストレートパーマをかけてくれて……。そしたら、さっきまで悩んでたのが嘘みたいに髪の毛がまっすぐになったんです! 魔法みたいに! そのとき鏡に映る姿を見て、生まれて初めて自分の髪型が可愛いって思えたんです」 

 美容師の有明美咲は、客である朝倉晴人に大変な怪我を負わせてしまったこともあって、「僕とデートしてください」という晴人の願いを受け入れて、ふたりで花見に出かける。
 美咲のこの話し方を、どんな英語にすればいいか?
まだ晴人のことがよくわからないし、そして晴人に大変なケガをさせてしまったからすごく気を使っているけど、一人前の美容師になりたいという熱い思いが自然と口から出てくる。この感じを出したい。加えて、「天パー」「〝くるくる〟」「絶望でしたよホント」「すごいドキドキし」「魔法みたいに!」「生まれて初めて自分の髪型が可愛いって思えたんです」といった若者らしい言い方にも、効果的な英語表現を充てたい。

"Ariake-san, what made you want to become a hairdresser?" Haruto asked as they strolled along together. Glancing to the left, he noticed her bashfully twirling her hair with her tiny fingers.
 "To be honest, my hair is naturally curly, you know?" she giggled. "When I was in elementary school, the boys would always tease me and call me 'curly top.' Oh, how I despised my hair! I poured my heart out to Mom and Dad, expressing just how much I disliked it. But you know what they said? They simply told me to get over it!"
 "I felt so down, thinking I would be stuck with that hair for the rest of my life. But then, out of the blue, my big brother caught sight of me shedding tears and whisked me away to a nearby beauty shop. Oh, the nervousness that washed over me as I sat in that hairdresser's chair! But guess what? The hairdresser assured me, 'Worry not, we’ll fix you right up.' They gave me a perm that straightened my hair out. And you won't believe it! After that enchanting treatment, my hair became sleek and utterly adorable! All the heartache melted away. It was pure magic! As I gazed into the mirror, I couldn't help but think that my hair looked absolutely gorgeous for the first time in my entire life!"

 美咲のセリフがやや長いので、少し段落を分けて訳すことにした。
★    ★    ★
 このあと美咲は、晴人がカメラマンだと言っていたのは実は嘘で、それどころかカメラマンになる夢をあきらめつつあることを知る。

「(…)どうしてとことん頑張らないのよ!? もしかしたら本当にプロのカメラマンになれたかもしれないのに!」
「え?」
「それなのにやめるなんてもったいないって! うじうじしてないで、夢なら辛(つら)くてもなにがあってもカメラ続けなさいよ! 簡単に投げ出したりせずにさぁ!」
「そ、それは、僕にカメラの才能があると仰(おつしや)ってくれているんですか?」
「は?」
「だから頑張れと?」
「違いますけど?」
「嬉しいです!」思わず彼女の手を握ると、美咲は猫のように跳ね上がった。
「す、すみません!」自分の思いがけない行動に慌てて手を離す。
「僕、頑張ります! その言葉を信じて、もう一度カメラ頑張ります!」
「いや、ちょっと待って。そういう意味で言ったんじゃ――」
「美咲さん!」
突然名前で呼ばれて美咲は固まった。
「僕はあなたに相応(ふさわ)しい男になってみせます!」

この愉快なやりとりは、誰もが一目でわかる簡単な言い方を使って、コンパクトに表現したい。

"...Why didn't you just go for it? Maybe you could've really made it as a professional photographer."
  "Wait, what?" Haruto surprised.
 "You quit... that's the real shame," Misaki said. "You shouldn't just throw in the towel. Nothing is easy, but if this is your dream, something you really want to do, you should keep going. You can't just give up."
 "You think I have talent?"
 "What?" Misaki was taken aback now.
 "You think I should just go for it?"
 "Uh, I'm afraid that isn't what I want to say..."
 "I'm so happy," Haruto said, reaching for Misaki's hand.
 She flinched, like a startled cat.
 "I'm so sorry," he quickly apologized, letting go of her hand.
 "I'm going to try again, you know. I believe you're right. I just need to try harder, and I'll make it as a professional photographer."
 "Wait a minute. That's not what I meant," she exclaimed.
 "Misaki-san..."
Misaki blinked, surprised that he called her by her first name.
 "I want to become the man you deserve," he affirmed.

 この日本語の言葉の「乗りのよさ」を再現するのは、機械的にできるものではない。
★    ★    ★

 そんなふたりが最後に悲しい結末を迎える。

 彼女は桜のような人だった。笑うと薄紅色の花が咲くみたいに辺りの景色が明るくなって、見ている僕まで思わず笑顔になってしまう。いつもひたむきで、一生懸命で、この満開の桜のように僕の人生を鮮やかに彩ってくれた。そんな素敵な人だった。 
 もっともっと咲いていてほしかった。散ってほしくなんてなかった。一緒にまたこの桜を見たかった。でもそれはもうできない。この春の中を探しても、彼女はどこにもいないのだから……。
 
 晴人のこの悲しい気持ちを、次のように訳してみた。

 She was like a cherry blossom. When she smiled, everything around her lit up like a pale pink flower blooming, and I couldn’t help but smile as I watched her. She was always so dedicated and hard-working, and she brightened up my life as vividly as the cherry blossoms in full bloom. She was such a wonderful person.
 I wanted her to continue blooming. I hate that she’s gone. I wanted to see the cherry blossoms with her again, but we can’t do that anymore. Spring is here again, but she isn’t here to see it....

 機械的な日英翻訳であれば、今はChatGPTなどAI翻訳で対応できるかもしれない。だが、人間の心からの喜びや悲しみを別言語に移すのは、まだしばらく人間の仕事だ。

(追記) この連載原稿は信頼できる英語便に必ずチェックしてもらうが、今回はほとんど直しが入らず、

Hello and thank you for this excellent writing. The translation is mostly first class and presents as if a native speaker had written it. Well done.

とのコメントをもらった。ありがたい。ただ、日英翻訳者としてもネイティブスピーカーに負けないクオリティの訳文をあげたいし、まだまだ精進が必要だ。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)、ウィニフレッド・バード『日本の自然をいただきます──山菜・海藻をさがす旅』(亜紀書房)、マイク・バーフィールド『ようこそ! おしゃべり歴史博物館』(すばる舎)など多数(日英翻訳をあわせて80冊以上)。



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日本の若者たちの心情を英語にする~宇山佳佑『桜のような僕の恋人』を英訳する

2023-04-23 08:37:41 | 桐生タイムス
 今日のGetUpEnglishは、4月22日付『桐生タイムス』に掲載された「永遠の英語学習者の仕事録」第25回の記事を紹介したい。
 宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社文庫)の一部を英語にしてみた。
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『桐生タイムス』の連載「永遠の英語学習者の仕事録」も3年目に入った。
 今月からはちょっと趣向を変えて、日英翻訳、絵本の翻訳ほか、英語学習全般についてもお話ししてみたい。
 今月からしばらく日本語の小説やエッセイを英語にして紹介する。取り上げる作品は、「世界にぜひ紹介したい、最終的には英訳の刊行を望みたいもの」にしたい。また基本的に「翻訳がないもの」を上杉訳で紹介する。
 今月と来月は宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社文庫)の一部を英語にしつつ、この人気小説の魅力を伝えてみたい。
  残念ながら、「桐生タイムス」の連載も会員登録の上、定期購読手続きをしないと記事が読めなくなってしまった。なので、許可を得て、一部を紹介したい。なお、以下のサイトで「桐生タイムス」の「永遠の英語学習者の仕事録」の掲載号(120円)をお買い上げいただければ、この記事は読める。

★   ★   ★
 小気味よい一定のリズムを刻み、ハサミが朝倉(あさくら)晴人(はると)の髪の毛を丁寧に切り揃(そろ)えていく。
背後に立つ美容師が慣れた手つきで指先に髪を挟むと、晴人の心臓はドクンと脈打つ。全身が真夏の太陽のように熱くなり、手がじんわりと汗ばむのを感じる。晴人はカットケープの下で掌(てのひら)をジーンズにこすって汗を拭うと、気付かれないよう鏡越しに彼女を見つめた。

 第1章で朝倉晴人と有明美咲の出会いがこんなふうに描かれる。晴人が美咲の勤める美容室で美咲に髪をカットしてもらっているのだ。これはもう若者たちの感覚を伝える若者文学なので、英語もそれにふさわしい表現、文体にしたい。次のように訳してみた。

The scissors kept a pleasing, steady rhythm as they carefully trimmed Haruto Asakura's hair.
 The hairstylist standing behind him deftly pinched sections of his hair between her practiced fingertips, causing Haruto's heart to thump in his chest. As his entire body grew as hot as the midsummer sun, his hands started to feel damp with sweat. Under the cutting cape, Haruto wiped his palms against his jeans, all the while stealing a glance at the hairstylist through the mirror to ensure that she hadn't noticed.

 この英訳は、宇山佳佑『桜のような僕の恋人』をNetflixで映画化する計画があるが、製作者にこの作品のすばらしさを知ってもらうために、それを伝えられる重要部分の英語を用意してほしい、という依頼を受けて、1か月で仕上げたのだ。かなりの分量で、5000語近くになった。言うまでもなく大変な仕事であったし、日本人のわたしにできるのかという不安は大いにあったが、優秀なネイティブスピーカーの助けを得て、どうにかやり遂げることができた。
 昨年2022年3月24日、まさに桜の季節に、中島健人さんと松本穂香さんの若々しいふたりの主演でこのベストセラー小説がNetflixで全世界独占配信されたのを見届けて安心したのを思い出す。同時に、この瑞々しい小説を全部訳してみたいと思った。
 桜の季節は終わったが、来月も『桜のような僕の恋人』の英訳についてお話ししたい。
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『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第22回が同紙2023年1月29日号に掲載されました。

2023-02-01 18:04:06 | 桐生タイムス

『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第22回が同紙2023年1月29日号に掲載されました。

 https://twitter.com/kiryutimes/status/1620315662307700736

 https://kiryutimes.co.jp/uesugi/

   『桐生タイムス』の連載も22回目。

 https://kiryutimes.co.jp/column/uesugi/34761/

 ダイバーシティがあたりまえになった今だから読みたい一冊 上杉隼人─永遠の英語学習者の仕事録【22】

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 編集者で翻訳者としても活躍する上杉隼人さんが英文を交えながら、翻訳という仕事のおもしろさや奥深さなどを、エピソードとともに語ります。今回紹介する本は、『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(ジョリー・フレミング、リリック・ウィニック 著 上杉隼人 訳)です。(毎月第4土曜掲載)

 こちらからダウンロードできます。

 https://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/20230128_uesugi_022.pdf

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桐生タイムス【連載】永遠の英語学習者の仕事録 – 上杉隼人

2022-12-31 07:54:17 | 桐生タイムス

『桐生タイムス』の連載「永遠の英語学習者の仕事録」、21回を迎えました。

 どうか2023年もよろしくお願いします。

【連載】永遠の英語学習者の仕事録 – 上杉隼人

編集者で翻訳家としても活躍する上杉隼人さんが英文を交えながら、翻訳という仕事のおもしろさや奥深さなどを、エピソードとともに紹介します。(本紙では毎月第4土曜掲載)

https://kiryutimes.co.jp/uesugi/

・連載記事はダウンロードしてご覧いただけます。

【01】難解な翻訳と充実のインタビュー(2021年4月24日)
【02】アベンジャーズ、アッセンブル(2021年5月22日)
【03】伸びやかで生き生きしたアメリカ口語(2021年6月26日)
【04】よし、じゃあ、おれは地獄に行く。(2021年7月24日)
【05】拡張をづづけるスター・ウォーズ・ユニバース(2021年8月28日)
【06】ネコたちが教えるニャンとも楽しいアート史(2021年9月25日)
【07】伝説の大富豪のギャンブラー人生(2021年10月23日)
【08】宗教史全体を見つめなおす最適の入門書(2021年11月27日)
【09】『スター・ウォーズ』と『マンダロリアン』が日本映画から受けた影響(2021年12月25日)
【10】マーベルはいかにして地球最大規模の収益を上げる企業に変革できたか?(2022年1月29日)
【11】ウォルト・ディズニーのほんとうの物語(2022年2月26日)
【12】人間の体の仕組みも、地球のことも地球の外のことも、みんな楽しくわかる1冊(2022年3月26日)
【13】自閉症の人たちも何かできる、定型発達者とともに何かしたいと思っている(2022年4月23日)
【14】障がいのある人は苦しい状況に置かれる。だからいつも陽気でいたい、どこまでも楽観主義でいきたい(2022年5月28日)
【15】日本の文化と社会に通じた著者との共同翻訳作業(2022年6月25日)
【16】類まれな調査力、文才、日本文化に対する愛と敬意を備えた著者の渾身の1冊(2022年7月23日)
【17】新たな挑戦、現状打破を望む人の至高の書(2022年8月28日)
【18】「変化への不安」の心理構造を理解し、「行動できる」自分に変わる(2022年9月24日)
【19】さまざま工夫を凝らしたディズニーの悪役タロット(2022年10月22日)
【20】アメリカの黒人はキャプテン・アメリカになれるか?(2022年11月26日)
【21】この本を読めば、あなたも歴史博士!(2022年12月24日)

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『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第21回が同紙2022年12月24日号に掲載されました。

2022-12-25 20:23:48 | 桐生タイムス

『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第21回が同紙2022年12月24日号に掲載されました。

 https://twitter.com/kiryutimes/status/1606787044990406657

 https://kiryutimes.co.jp/uesugi/

   『桐生タイムス』の連載も21回目。

 https://kiryutimes.co.jp/column/uesugi/34522/

 この本を読めば、あなたも歴史博士! 上杉隼人─永遠の英語学習者の仕事録【21】

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 編集者で翻訳者としても活躍する上杉隼人さんが英文を交えながら、翻訳という仕事のおもしろさや奥深さなどを、エピソードとともに語ります。今回紹介する本は、『ようこそ!おしゃべり歴史博物館』(マイク・バーフィールド・文、ジェス・ブラッドリー・絵 上杉隼人・訳、すばる舎より、2023年1月発売)です。(毎月第4土曜掲載)

 こちらからダウンロードできます。

 https://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/20221224_uesugi_021.pdf

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『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第20回が同紙2022年11月26日号に掲載されました。

2022-11-28 09:08:36 | 桐生タイムス

『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第20回が同紙2022年11月26日号に掲載されました。

 https://twitter.com/kiryutimes/status/1597017486523699201

 https://kiryutimes.co.jp/uesugi/

   『桐生タイムス』の連載も20回目。

 https://kiryutimes.co.jp/column/uesugi/34312/

 アメリカの黒人はキャプテン・アメリカになれるか? 上杉隼人─永遠の英語学習者の仕事録【20】

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 アメリカの黒人はキャプテン・アメリカになれるか? 上杉隼人─永遠の英語学習者の仕事録【20】

編集者で翻訳者としても活躍する上杉隼人さんが英文を交えながら、翻訳という仕事のおもしろさや奥深さなどを、エピソードとともに語ります。今回紹介する本は、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー マーベルドラマシリーズ オフィシャルガイド』(ウォルト・ディズニー・ジャパン監修 上杉隼人翻訳 KADOKAWA)です。(毎月第4土曜掲載)

 こちらからダウンロードできます。

 https://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/20221126_uesugi_020_t.pdf

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『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第19回が同紙2022年10月22日号に掲載されました。

2022-10-23 07:07:42 | 桐生タイムス

『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第19回が同紙2022年10月22日号に掲載されました。

 https://twitter.com/kiryutimes/status/1583736856138895361

 https://kiryutimes.co.jp/uesugi/

   『桐生タイムス』の連載も19回目。

 https://kiryutimes.co.jp/column/uesugi/33718/

 さまざま工夫を凝らしたディズニーの悪役タロット 上杉隼人─永遠の英語学習者の仕事録【19】

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 編集者で翻訳者としても活躍する上杉隼人さんが英文を交えながら、翻訳という仕事のおもしろさや奥深さなどを、エピソードとともに語ります。今回紹介する本は、『ディズニーヴィランズ タロット』(ミネルヴァ・シーゲル著、鏡リュウジ監訳、上杉隼人訳 河出書房新社より、11月発売予定)です。(毎月第4土曜掲載)

 https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/ccfb09922f5cc35a04455b85a68a039a

 こちらからダウンロードできます。

 https://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/20221022_uesugi_019.pdf

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