クラッシク倶楽部で2日連続で無言館で収録した演奏をやっていた。70周年記念だという。初日は「ブラック エンジェル」作曲家の名前は、読んだけど忘れてしまった。二日目はメシアン「世の終わり」四重奏。初めて聞いたように思うが、心に響く演奏だった。無言館での演奏だからか、なおのこと響いたのかも。
無言館からの上田の景色も紹介されていたが、のどかで、あんまり変わっていないような気がした。無言館は、戦没画学生たちの作品を集め、展示し、平和への祈りを訴える、美術館である。館長は水上勉(みずかみつとむ)のご子息。水上勉の経歴を読むと、びっくりするような貧しさに出会う。そして幼児を置いて出て行ってしまった妻、その幼児が無言館の館長の窪田さん。里子に出したが、東京大空襲で生き別れになり、それぞれが自立して、劇的な出会いをしている。
なんども書いているが無言館で、不思議な経験をした。照明を抑えた薄暗い展示室、ほとんど人のいない空間をゆっくりと絵を見ながら歩いていると、後ろに人の気配を感じた。先に行ってもらおうと後ろを振り返ったが、そこには薄暗い空間があるだけ。思い違いかな、と思いながらなおも作品を見ていると、またしても人の気配。振り返っても同じく静かな空間があるだけ。もっと生きたかった、もっと作品を描きたかった・・・、きっと伝えたかったんだろう。私にできることは、平和への努力以外にない、思いは受け止めたよ、と言って館を出た。
メシアンの「世の終わり」、ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ピアノという変わった編成。そこでこの曲の由来を読んでみた。「世の終わりのための四重奏」は「時の終わりのための四重奏」というのが原題のようだ。ヨハネの黙示録を主題にしている、とあった。ヨハネの黙示録、きちんと読んでいないんだ。読まなきゃな、と思いながらメシアンのこの曲が生まれるまでを読んだ。彼は第二次世界大戦時、フランス政府に徴兵され、その後ドイツの捕虜になって、収容所に入れられていた。食料は乏しく、重労働で多くの人たちが死んでいったが、娯楽や芸術には寛大で、収容所内でいろいろな催し物が行われていた。メシアンはそこでチェロリストと知り合う。メシアンたちが音楽家だと知ると、作曲の時間の個室も与えられ、演奏の練習もきっかり4時間認められ、この曲の初演は収容所内のバラックで行われたそうだ。その後二人は解放されたが、二人はユダヤ系だという理由で、留め置かれた。その後4人で演奏する機会はなかった。そんな裏話を読みながら、昨夜、放映していたジャズのサックス奏者の坂田明さんの旧東ドイツの仲間たちを訪ねる旅を思い出していた。