改めて国家公務員給与削減と共に国家公務員宿舎の値上げを図るべき

2011-11-09 12:23:00 | Weblog

 野田政権は復興財源に充てる政策の一つとして国家公務員給与を平均7・8%削減する臨時特例法案の今国会成立を目指している。

 「臨時」というのは2年間の時限措置だからで、この平均7・8%削減、2年間で約6千億円を確保可能だと「MSN産経」記事に書いてあった。

 2011年度予算案に於ける国家公務員給与費総額は3兆7642億円で、3兆7642億円から7・8%削減すると、約3千億円が確保能となり、2年間で約6千億円となる。

 「毎日jp」記事に2011年度地方公務員人件費総額21.3兆円という数字が記載してあり、地方公務員給与が国家公務員給与に準じていることから、〈地方公務員も国並みに引き下げた場合、地方の財源不足の穴埋めである地方交付税を最大6000億円程度、国が公立小中学校教職員の人件費の3分の1を補助する「義務教育国庫負担金」も同1200億円程度削減できると、財務省は見積〉っていると書いてあるが、日教組を支持母体としている民主党実力者輿石東幹事長の反対姿勢で地方公務員給与に波及させるのはハードルが高いとしている。

 輿石東幹事長の反対姿勢は10月30日(2011年)当ブログ記事――《菅前首相の国家公務員給与削減法案に関する古賀連合会長との密約と情報隠蔽 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。

 政府はこの国家公務員人件費2年間6000億円の削減に加えて、政府保有株の売却等の税外収入と歳出削減で5兆円程度の収入を見込んでいるという。

 この5兆円と総額11.2兆円(消費税換算で4~5%程度に相当)の臨時増税からの税収を償還財源として約13兆円の復興債を発行、この償還期間に関して野田首相は10月28日(2011年)第179回国会所信表明演説で次のように発言している。

 野田首相「復興財源案では、基幹税である所得税や法人税、個人住民税の時限的な引上げなどにより、国民の皆様に一定の御負担をお願いすることとしています。
 国家財政の深刻な状況が、その重要な背景です。

 グローバル経済の市場の力によって『国家の信用』が厳しく問われる歴史的な事態が進行しています。欧州の危機は広がりを見せており、決して対岸の火事とは言い切れません。今日生まれた子ども一人の背中には、既に700万円を超える借金があります。現役世代がこのまま減り続ければ、一人当たりの負担は増えていくばかりであり、際限のない先送りを続けられる状況にはありません。

 復興財源の確保策を実現させ、未来の世代の重荷を少しでも減らし、『国家の信用』を守る大義を共に果たそうではありませんか」――

 あるいは9月30日の記者会見。

 野田首相「これらの負担を次の世代に先送りをするのではなくて、今を生きる世代全体で連帯して分かち合うことを基本とするという、この私どものまとめた考え方を、是非ともご理解をいただきますようにお願いをしたいというふうに思います」――

 「これらの負担を次の世代に先送りをするのではなくて、今を生きる世代全体で連帯して分かち合う」という言葉は美しく素晴らしい。このように美しい理念・美しい理想を野田首相は掲げた。

 だが、自公の償還期間を長くすることによって一人ひとりの負担を減らすという主張に屈して、野田首相が当初予定していた10年程度の償還期間を公明党の15年に合わせ、次に自民党の強硬に主張していた25年に屈し、「次の世代に先送りをするのではなくて、今を生きる世代全体で連帯して分かち合う」と一旦掲げた美しい理念・美しい理想に対する責任感もなく、自らの理念・理想を取り崩すこととなった。

 理念・理想は追求しなければならない。だが、先進国で最悪の財政状況と世界的な不況で増税自体に無理があるから、理念・理想を取り崩すことになるのだろう。
 
 10月4日の当ブログ記事――《朝霞公務員宿舎建設再凍結に公務員宿舎部屋代値上げに優る合理的理由は存在するのか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いたが、公務員の人件費削減も民間給与との格差を縮小させるために必要だが、格差は人件費だけではなく、住居費にも現れている。民間マンションの入居費と国家公務員宿舎の入居費の歴然たる不公平な格差である。

 都心一等地での国家公務員宿舎家賃4万円は民間マンションとの比較で15万から25万円の不公平な格差があがるという。

 何故かくまでして国家公務員は優遇されなければならないのか。財務省が宿舎の必要性を〈国家公務員宿舎法に基づいて、公務員の「職務の能率的な遂行を確保する」ため〉を根拠とし、〈「転勤が多い職場だったり、緊急時に対応が必要となる職員に提供される」〉(MSN産経)としている理由を認めるにしても、家賃優遇の正当な理由、民間賃貸住居との家賃格差の正当な理由とすることはできない。

 例え家賃を民間並みに上げたとしても、財務省が理由としている条件を何ら損なうことはない。民間の高い家賃で「職務の能率的な遂行を確保」している一般サラリーマンを見習うべきである。

 改めて国家公務員宿舎の総戸数等をインターネットで調べてみた。

 国家公務員宿舎関係資料(財務省理財局/2011年10月17日)に次のような記載がある。
  
 国家公務員宿舎の未入居率(単位:戸、平成21年9月1日時点)

       設置戸数   使用可能戸数  未入居戸数  未入居率

 全国    218,678     202,370     13,797   6.65%

 都内     30,625     28,234      777    2.75%

 3区      23,039     21,295      532    2.50%

 (注)「使用可能戸数は、宿舎の廃止・処分を促進することで宿舎戸数を削減するため、入居者を退去させ新規入居を認めないこと等により使用できない戸数を設置戸数から除いたもの」――

 (注)は宿舎削減に努力している姿勢を示しているが、家賃の格差是正に対する努力ではない。

 平均で5万円の家賃値上げを要求した場合、上記ブログでは、〈現在、公務員宿舎は全国に約21万8000戸存在するそうだが、5万円ずつ値上しても、約22万戸として、22万戸×5万円=110億/1カ月。年にして1320億円の国の歳入となる。

 民間との公平化を可能な限り図るとすると、15万~20万円は値上が必要となる。15万円と見ても、22万戸×15万円=330億円/1カ月。年にして3960億円。〉と書いたが、平成21年9月1日時点で、最低限の1ヶ月5万の値上げに限定したとしても――

 使用可能戸数202,370×平均5万円≒100億円/1ヶ月×12ヶ月=1千200億円×復興10年=1兆1200億円

 復興が20年かかるとすると、2兆2400億円の財源確保となり、さらに復興終了後も政府歳入として継続することになる。

 立地の利便性や宿舎の機能性に応じて各近隣の民間賃貸住居との格差を可能な限り縮小していったなら、税収はさらに増加する。

 2年間の時限措置でしかない国家公務員人件費平均7.8%削減とは比べものにならない財源捻出となる。

 地方公務員宿舎も国家公務員宿舎の家賃値上げに準じて値上げしたなら、地方自治体に少なからず財政に余裕を与えるはずである。

 官民格差是正は人件費のみならず、家賃格差も予定表に入れるべきである。

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