物は考えようで、野田首相の一川防衛相任命・玄葉外相任命は最良の適材人事

2011-12-04 08:38:33 | Weblog

 昨日の当ブログ記事――《一川防衛省の沖縄認識と野田首相の対一川人事認識 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で、野田首相が「政治経験や知見を含め、適材として私が防衛相に選んだ」とした一川防衛相人事を批判した。

 だが、その批判の舌の根も乾かないうちに防衛相に一川氏を宛てがったのは最良の人事に思えてきた。

 尤も野田首相が最良の人事を行ったという意味ではない。今頃最悪の非適材人事ではなかったかと、後悔と疑心暗鬼に苛まれているかもしれない。

 確かに、「安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロールだ」とした就任後の発言といい、沖縄少女暴行事件について「詳細に知らない」と認識不足をさらけ出し、その認識不足を正当化するために「国会の公式な場で詳細に説明する事案ではないという思いで、ああいう発言になってしまった」と弁解したことといい、政治家としての矜持どこにありの疑念を抱かせる。

 政治家としての矜持、大臣としての矜持は、野田首相の「政治経験や知見を含め、適材として私が防衛相に選んだ」という言葉を借りて説明すると、確かな「政治経験や知見」によって担保される。

 底の浅い「政治経験や知見」によってではなく、あくまでも確かな「政治経験や知見」でなければならない。

 もし一川防衛相が確かな「政治経験や知見」を備え、誠実さと沖縄に対する深い理解も兼ね備えた政治家であったなら、頭を下げて普天間の辺野古移設を沖縄県民にお願いに来た場合、その人柄、誠実さに免じて許してしまいそうになる、ときには許さないのは悪いような罪悪感に襲われる気持の揺れに見舞われかねない。

 だが、沖縄に無理解で、ただ単に役目として基地移設に関わっている、発言も態度も不適切な底の浅い「政治経験や知見」の政治家が相手であるなら、反対の気持が揺れることもなく、徹頭徹尾激しい怒りも持ってその政治家と対峙できることになる。

 いわば沖縄及び沖縄県民にとって野田首相の一川防衛相人事は最良の適材人事だということである。

 当然、例え問責決議案が可決されても、辞任せずに生き延びた方が沖縄にとって徹底的に戦いやすい相手となるし、こんな政治家が関わっているということで、普天間の辺野古移設の価値を下げることもできる。

 もう一人、沖縄基地問題で野田首相の最良の適材人事だと評価できる者がいる。玄葉外相である。

 2011年10月27日当ブログ記事――《玄葉外相の、普天間移設「国外、最低でも県外」の鳩山発言は「誤りだった」とする狡猾な責任回避 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で取り上げたが、玄葉外相は10月26日(2011年)の国会答弁で鳩山元首相が2009年衆院選挙中から政権交代後も展開した、普天間の「国外、最低でも県外」の訴えを誤りだとし、本人も誤りだと認めたから、辞任し、責任を取ったと、「国外、最低でも県外」の主張を鳩山元首相一人の責任とした。 

 だが、この責任転嫁論は2008年策定の《民主党・沖縄ビジョン2008》に掲げた、〈日米の役割分担の見地から米軍再編の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す。〉とした主張と矛盾し、ブログ記事では次のように結論付けた。

 〈安全保障は軍事力だけに負うものではなく、経済力や政治力(=外交能力)によっても左右される総合力として構築しなければならない政策であるゆえに軍事力のみから見た「中国脅威論」には私自身は与しないが、中国の海洋進出が例え新たに現れた最近の安全保障環境の変化であり、危険な徴候であったとしても、以前から経済政策や外交問題と共に長期的展望に立って備えていなければならなかった安全保障政策であり、在沖海兵隊基地の県外・国外移転の《民主党・沖縄ビジョン2008》でなければならなかった。

 だが、玄葉外相は民主党全体の問題であるにも関わらず、普天間基地移設先の「国外、最低でも県外」の鳩山発言を「誤りだった」と鳩山元首相のみの責任に帰している。

 あまりにも狡猾に過ぎる責任回避ではないだろうか。〉・・・・・

 玄葉外相は質問者から矛盾を突かれて、「ちょっと2008年の話(「民主党・沖縄ビジョン2008」)をですね、出来れば、改めて文書をチェックさせていただいて、お答えさせていただければというふうに思っております」と追及を逃れているが、民主党の沖縄政策を盛り込んだ、当然長期的展望に立っているはずの「文書をチェック」しなければ満足な答弁ができないということ自体が一川防衛相同様の不勉強の証明であって、野田首相の最良の適材人事の一つに加えることができる。

 この結末を「MSN産経」記事――《【名言か迷言か】玄葉外相の苦しい弁明 沖縄ビジョンとマニフェストの関係って?》(2011.12.3 18:00)が伝えている。 
  
 12月2日(2011年)の衆院外務委員会。質問者は10月26日と同じ河井克行自民党衆院議員。

 河井自民党議員「沖縄ビジョンが問題で、これで鳩山政権が終わると思ったのか。それなら(10月26日の答弁と)話が違う」

 玄葉外相「沖縄ビジョンでそういう(県外の)方向が出されていたのは承知している。一方であのときのマニフェスト(政権公約)には県外と書いていなかった」

 記事の解説。〈しかし、この釈明には無理がある。それでは民主党にとって沖縄ビジョンとは何だったのか。〉

 玄葉外相は2009年策定の衆院マニフェストに「県外と書いてなかった」からとすることで、党を挙げて策定したはずの「民主党・沖縄ビジョン2008」に掲げた「県外・国外移転」を否定したのである。矛盾を通り越して、詭弁そのものの言い抜けであろう。

 記事はさらに次のことも書いている。12月2日の外務委員会。

 野田首相「マニフェストには(県外と)書いていない。選挙直前に党代表(鳩山氏)が発言したわけだからそれは極めて重い」

 記事はこの発言を、〈玄葉氏を擁護した〉ものとしているが、答弁の前半は確かに玄葉擁護だが、後半は党代表の発言だから、党の政策であるという意味であって、マニフェストには書いてないにも関わらず、党代表が発言したことで党の政策となったということは、野田首相も玄葉外相と同様に鳩山元首相一人に責任を転嫁する詭弁そのものであろう。

 また野田首相も「マニフェストには(県外と)書いていない」とすることで「2009年民主党マニフェスト」の1年前に策定した「民主党・沖縄ビジョン2008」に掲げた「県外・国外移転」を否定する自らの矛盾に気づいていない。

 この野田首相あっての一川防衛相最良適材人事であり、玄葉外相最良適材人事ということなのだろう。

 沖縄にとっては軽蔑に値する、闘い甲斐のある面々であり、適材人事ではないか。

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