沖縄目線ではなく、国家目線の「正心誠意」に則ったウルトラCな特措法回避辺野古沖公有水面埋め立て承認

2011-12-15 10:19:00 | Weblog

 沖縄県知事に許認可権限がある、政府が普天間移設先基地としている名護市辺野古沖公有水面埋め立てに辺野古移設反対の仲井真沖縄県知事が承認しなかった場合、許認可権限を知事から国に移す特別措置法を政府が制定し、国が埋め立てを許可、基地移設を沖縄の意思に反して強引に進めるかどうかが常に問題とされてきた。

 菅前首相の場合はどう扱うか、2010年10月12日の予算委で発言している。

 下地国民新党議員「(沖縄県民が反対し、県知事が反対している)厳しい状況になってくると、何をやるかといったら、特措法をつくる以外に道がないんです。これは、2000年にもつくりましたけれども、県の権限を国がとって、米軍の工事をやるという特措法をつくる以外にないんですけれども、今は、地方分権というような状況の中で、そこまで踏み込んで国が特措法をつくるというふうなことができるかどうかとなると、それも厳しい。非常にこの辺野古の問題は厳しい環境にあるなという認識を持たざるを得ないと思います」

 菅首相「先ほど申し上げたように、私が6月に政権を担当してまだ4カ月でありますけれども、5月の28日にできた日米合意、そこからスタートするという、この考え方は先ほど下地議員にも理解をいただいたと思います。その中で、まず、何が現時点でできるのか、そのことを徹底的に模索をし、あるいは沖縄の皆さんにも説明をし、しかし、決して沖縄の皆さんの声を無視した形で、特措法という言葉も出ましたけれども、そういった形で強引なやり方をするということは念頭に全くありません」(以上衆議院会議録から)

 特措法制定は全く念頭にないと言っている。丁寧な説明で沖縄の理解を得る方法を選択すると。これが菅首相の公式見解であり、菅内閣の公式見解であった。
 
 野田首相の場合は11月17日(2011年)の衆院本会議で答弁している。

 服部良一社民党議員「普天間問題が進展しないことへの米政府や議会のいら立ちは、総理も十分に感じておられるでしょう。米国の求める具体的進展とは、公有水面埋立許可であることは明らかです。

 辺野古移設を強行するため、県知事が持つ権限を奪う特措法を制定することは、将来にわたって絶対にありませんね。総理自身の口から明確に御答弁ください」

 野田首相「普天間飛行場の移設に関し、沖縄県議会の意見書、特措法の制定及び今後の展望などについて、一連の御質問をいただきました。

 普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、同飛行場の危険性を一刻も早く除去するとともに、沖縄の負担軽減を図ることがこの内閣の基本姿勢であります。

    ・・・・・・・・・

 なお、特措法を制定することは、念頭に置いておりません」(以上衆議院会議録から)

 再び同じことを言うが、これが野田首相の公式見解であり、野田内閣の公式見解としていた。

 当然、特措法制定という事実は出てこないことになる。

 だが、少々怪しくなったのは野田首相が「特措法を制定することは、念頭に置いておりません」と、あの金正日ばりに太った腹を一度や二度ではなく、任せておけとばかりに何度でも叩きはしなかったが、ガッチリ太鼓判を押した11月17日の衆院本会議から8日しか経たない11月25日に沖縄県選出の糸数慶子参議院議員の質問主意書に野田内閣が提出した答弁書による。

 NHKニュースで知り得たことだが、「参議院質問主意書」から、その箇所のみを引用してみる。

 糸数数子質問主意書「政府は都道府県知事が許認可権を持つ公有水面の埋立てに関し、許認可権のはく奪を目的とした特別措置法の制定を考慮に入れているのか、明らかにされたい」

 閣議決定した政府答弁書「政府としては、普天間飛行場の移設について、沖縄の皆様の御理解を得るべく、全力で取り組んでいるところであり、現時点において、お尋ねのような特別措置法を制定することは念頭に置いていない

 「現時点において」である。8日前の野田首相の国会答弁は「現時点において」なる言葉を用いていなかった。

 この「現時点において」が将来的な制定の可能性を含ませていると思いきや、言葉の意味を昨日付の「琉球新報」が教えてくれた。《埋め立て 代執行可能 政府、答弁書決定 知事不承認なら》琉球新報/2011年12月14日)

 記事は照屋寛徳社民党議員が提出した質問主意書に対する政府答弁書の情報として伝えているが、残念ながら、「質問答弁経過情報」に「質問主意書提出年月日 平成23年12月 2日」、質問件名「普天間飛行場の辺野古移設に伴う公有水面埋め立てに関する質問主意書」、提出者名「照屋寛徳君」等の情報が記されているのみで、既に政府答弁書が提出されているにも関わらず、肝心の質問主意書の内容も政府答弁書の内容も現在のところ記載されていない。

 記事が伝えている政府答弁書の内容は、防衛省が来年6月頃に仲井真弘多県知事に申請するとみられる名護市辺野古沖の公有水面埋め立て承認に関して、法定受託事務の公有水面埋立法で知事が埋め立てを「不承認」とした場合、県知事の埋め立て許認可権を国に移す特措法の制定という手段を用いずに、〈一般論として地方自治法に基づいて是正指示や代執行などが可能になる場合があるとした政府答弁書を閣議決定した。〉というものである。

 あくまで「一般論」だと、一歩下がった姿勢を見せているが、「念頭に置いていない」「現時点において」へと軽々と意味変換できる「正心誠意」な神経を持ち合わせているのである。「一般論」がいつ「全般論」に豹変しないか、その保証はない。

 地方自治法245条の7項「法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、または著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該都道府県に対して是正または必要な指示をすることができる」 

 仲井真県知事の承認拒否に対して法令の規定違反とすることは難しいから、「著しく適正を欠く」か、「明らかに公益を害している」という理由で是正を求めるか、必要な指示を行うということなのだろう。
 
 「公益」とは、安全保障上の必要性を持ち出して、それを以て「公益」とするのは目に見えている。 安全保障上の必要性は場所を沖縄に特定しなくても、九州であっても地理的優位性は確保できるはずだが、自民党時代に一旦辺野古と決めた過去の例に準ずることしかできない。

 記事、〈県が指示に従わなかった場合、各大臣が高等裁判所に当該事項を行うべきと命じる旨の裁判を請求することができるとしている。〉・・・・

 何というウルトラCなのだろうか。このウルトラCを懐深く隠して、「特措法を制定することは、念頭に置いておりません」と沖縄を安心させてきたに違いない。

 記事は沖縄県に対する過去の「地方自治法245条の7項」の適用例を挙げている。
 
 〈地方自治法をめぐっては、1995年に県が政府との駐留軍用地の賃貸借契約を拒否した地主の代理署名を拒んだが、国は同法に基づいて県に代理署名を行うよう指示。県が従わなかったため、国は署名代行拒否が公益に反するとして職務執行命令訴訟を福岡高裁那覇支部に提起し、96年に最高裁で県の敗訴が確定した経緯もある。〉・・・・・

 照屋社民党議員「特措法を作らないと国が言っても安心してはいけないことが分かった。誠心誠意理解を求める、と言いながら法令に従っていることを強調し、知事の承認事務を代執行しようという思惑があるのではないか」

 「知事の承認事務を代執行しようという思惑があるのではないか」どころか、質問主意書に政府がそう答弁した以上、実行する、ドジョウどころではない、タヌキの腹でいるに違いない。

 例え野田政権が「地方自治法245条の7項」を利用して、沖縄県民の激しい反対運動をかわして辺野古沖公有水面埋め立てに成功し、基地移設を果たしたとしても、沖縄県民の野田政権に対する不信感は辺野古に基地がある間消えることなく記憶され、その経緯は沖縄の歴史という形で記録もされるに違いない。

 その不信感は本土の日本人全体に向けられない保証はない。

 沖縄目線ではなく、国家目線の「正心誠意」に立った野田首相のウルトラCが招く沖縄の地平を超えた政治不信となって広がっていく。

 野田首相の沖縄基地問題に関する「正心誠意」な記者会見発言を振り返ってみる。

 第178回国会野田内首相所信表明演説(2011年9月13日)

 野田首相「普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄の皆様に誠実に説明し理解を求めながら、全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても、積極的に取り組みます。

 野田首相記者会見(2010年9月30日)

 高塚毎日新聞記者「毎日新聞の高塚と申します。米軍の普天間飛行場の移設問題が、地元では非常にですね、県外移設を求める声がですね、依然として多いと。そういう中で日米合意の履行、つまり辺野古への移設をどう進めていこうというふうに総理、考えていらっしゃいますでしょうか」

 野田首相「これはですね、沖縄において県外移転を望む声、求める声が多いということは私もよく承知をしております。さはさりながら、日米合意にのっとって沖縄の負担軽減をしていくということを基本線に対応していこうというのが私どもの基本的な姿勢であって、それは先般のオバマ大統領との会談の際にも、申し上げました。沖縄の負担を大きく軽減させるという意味においても、私は今の基本的なスタンスというのが第一だと思っておりますので、そのことをきちっと、普天間の危険を除去していくということについてもご理解を頂けるというふうに思いますので、そこはしっかりとご説明をしながら、丁寧にご理解していただくという努力をやっていくということにしていきたいと思っております」

 第179回国会野田首相所信表明演説(2011年10月28日)

 野田首相「普天間飛行場の移設問題については、日米合意を踏まえつつ、沖縄の負担軽減を図ることが、この内閣の基本的な姿勢です。沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、誠実に説明し理解を求めながら、普天間飛行場の移設実現に向けて全力で取り組みます」

 野田首相記者会見(2011年12月1日)

 野田首相「まず冒頭、国民の皆さま、そしてなによりも沖縄県民の皆さまに、前沖縄防衛局長の発言について、一言申し上げたいと思います。
 報道された発言の内容は極めて不適切なものであり、本人も報道されたように受け取られても仕方がないやりとりがあったと認めております。更迭は当然の処置であると考えます。沖縄県民の皆さまの気持ちを深く傷つけたことについて、改めて私からも心からお詫びを申し上げたいと思います。

 普天間飛行場については、日米合意を踏まえつつその危険性を一刻も早く除去し、沖縄の負担を軽減したい、というのがこの内閣の基本的な姿勢であります。そのため、現在の国の方針に、沖縄の皆さまのご理解をいただけるよう、政府一体となって誠心誠意務めてきたつもりでありました。その誠心誠意が徹底していなかったことは、極めて遺憾であります。改めて、政府全体で襟を正し、沖縄の皆さまのご理解をいただけるよう、全力を尽くしていきたいと考えております

 政府は「真摯に耳を傾け、誠実に説明」、「丁寧にご理解していただく」を基本方針とし、政府の公式見解としてきた。

 その基本方針、政府公式見解を打ち捨てたとき、果して沖縄県民は許すだろうか。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする