政府「高度人材」外国人受入れポイント制度は職業差別及び憲法違反に当たらないだろうか

2011-12-29 09:51:01 | Weblog

 政府は外国人就労者を学歴、職歴、年収等で点数化し、高得点者を優遇する「ポイント制」を来春から導入することを決めたという。

 このことを伝える二つの記事が目についた。先ずは、《外国人の年収などを点数化 「高度人材」には優遇措置》asahi.com/2011年12月28日16時14分)

 目的は、〈研究者や医師、経営者ら専門知識や技術を持つ外国人にもっと日本に来ても〉らうためだと書いている。

 記事には、〈平岡秀夫法相が28日、概要を公表した。〉と書いてあるが、28日が仕事納めだからなのか、あるいは次の閲覧が翌朝では早過ぎるということなのか、法務省のHPにはまだ記載されていない。

 「ポイント制」の仕組みは、〈外国人の学歴や職務の経験年数、年収などの項目ごとに点数を積み上げていき、70点以上で「高度人材」と認定する。〉というもので、年間約2千人を対象予定で、来春の開始を目指しているという。

 「高度人材」認定の特典――

 ●日本永住許可條件が従来の10年以上居住から5年居住に短縮。
 ●配偶者の就労時間制限週28時間以内の緩和。
 ●3歳未満の子がいる場合は本人や配偶者の親を呼び寄せ可能とする。
 ●外資系企業幹部のみ認可の家事使用人同伴を70ポイント以上「高度人材」にまで拡大、許可。

 次に、《日本で就労希望の外国人、「ポイント制」導入へ》YOMIURI ONLINE/2011年12月28日)

 記事はポイント制導入は政府の新成長戦略の一環だと書いている。

 〈高度な能力や技能を持つ外国人労働者の受け入れを促進して、日本の技術革新や経済成長につなげるのが狙い〉だと。

 あとは「asahi.com」とほぼ同じ内容。

 ●制度対象者は、「学術研究」「高度専門・技術」「経営・管理」の三つの分野。
 ●ポイント計測対象項目は学歴・職歴・年収等。
 ●政府支援企業への就職、日本の大学卒業者にはボーナス点を付与。
 ●70点以上を合格とし、法務省が認定。

 「高度人材」認定の特典――

 〈1〉連続10年の在留が条件の永住権を5年で獲得
 〈2〉週28時間に制限されている配偶者の国内での労働制限撤廃
 〈3〉親や家事使用人の同行の条件付きでの許可

 記事は、〈法務省はパブリックコメント(意見募集)を行った上で、必要な省令や告示の改正を行う。〉と書いている。

 この「高度人材」外国人受入れポイント制度は職業差別に当たらないだろうか。

 人間の価値を職業の違いと職業に付属する学歴や年収の違いで決めることになるからだ。

 日本人は元々で家柄に上下をつけ、学歴や職業に上下をつけ、年収の違いに上下をつけて、家柄、学歴、職業、年収の上下を人間の価値の上下としてきた。

 いわば人間の価値イコール家柄でもなければ、イコール学歴でもなく、またイコール職業、年収でないにも関わらず、人間の価値を家柄、学歴、職業、年収等の上下に結びつけて、優劣の基準としてきた。

 上の価値に権威を置き、下の価値の権威を認めない権威主義を人間価値の判断尺度としてきた。

 その典型的な象徴が江戸時代の士農工商であったはずだ。それは制度として存在した。

 人間の価値を家柄、学歴、職業、年収等の上下で決めつけるこの権威主義を今以て引きずっている。

 法務省の「高度人材」外国人受入れポイント制度は現代に於いても人間の価値を家柄、学歴、職業、年収等で計る権威主義を制度化することではないだろうか。

 また、この「高度人材」外国人受入れポイント制度は憲法に違反していないだろうか。日本国憲法は次のように明記している。

 第3章 国民の権利及び義務

 第22条 居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由

 (1)何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
 
 「居住、移転及び職業選択の自由を有する」とは、単に「居住の自由と移転の自由」と「職業選択の自由」をそれぞれに分けて謳っているのではなく、居住、移転を職業で選択してはならない、職業に関係なく、居住、移転は自由であるということも保障しているはずである。

 だから、移動と職業選択を同じ項目の中に置いた。

 だが、法務省の「高度人材」外国人受入れポイント制度は日本への居住、移転に関して、職業で選択しようとしている。

 これは職業で人間の価値を決めることにもなる。

 会社経営者や会社幹部も必要だが、そういった高度人材だけでは会社は動かない。一般労働者が存在して、初めて会社は動く。モノの生産も成り立っていく。

 社会も同じであろう。高学歴の研究者や医師、経営者等の高度人材のみでは社会は成り立たない。より多くの一般人材を得て初めて社会は成り立つ。

 上の部類に入ると判断した学歴や職業、年収を基準に外国人を受け入れることは治安上はメリットがあるかもしれないが、社会の活力は一般人材の這い上がりからより多く生まれる。

 もし黒人が虐げられていた時代にジャズの誕生が黒人からもたらされなかったら、アメリカの現在の活力も違ったものになったはずだ。そして多くの黒人や白人がジャズが持つ力強い活力を自らの精神としてアメリカ社会を這い上がっていった。

 かつてヨーロッパの貧しさを逃れ、アメリカ大陸に新天地を求めてアメリカに移住した多くのヨーロッパ人の這い上がっていく活力ある過程があったからこそ、アメリカ社会は発展し、アメリカは不況期にあっても今以てその精神を引き継ぎ、社会に活力を与えている。

 日本人は高度成長期、豊かな生活への這い上がりが高度成長の活力を生んだ。だが、1億総中流化して、満足し、這い上がりの精神を忘れ、活力を失った。

 中国、韓国が這い上がりの活力で中国は日本を追い越し、韓国も追い越そうとしている。

 外国人受入れを考えるなら、高度人材に期待するのではなく、治安上のマイナスはあっても、日本で這い上がり、その這い上がりが一代で実現しなければ、苦しい生活の中から子どもの教育にカネをかけて這い上がりを二代で実現させる活力を発揮するであろう一般人材にこそ期待すべきであるように思える。

 その活力発揮が日本人に伝染しないはずはない。伝染しなければ、日本人はお終いである。

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