野田首相就任3ヶ月目にして早くも飛び出した首相擁護の前原“コロコロ交代忌避発言”

2011-12-06 10:35:14 | Weblog

 民主党の前原誠司政調会長が12月4日(2011年)、大津市で講演、次のように発言したという。《首相交代は国益損ねる=民主・前原氏》時事ドットコム/(2011/12/04-17:16)

 記事は、〈自民、公明両党が野田政権への対決姿勢を強めていることを念頭に政権維持の必要性を強調〉した発言だとしている。

 前原政調会長「(首相が)ころころ代わるのは、どの政権でも海外では腰を据えて話をできない国と思われ、国益を損なうことになる。

 野田佳彦首相をしっかり支え、厳しい意見も頂きながら、日本の政治を前に進めるため努力する」

 民主党に政権交代してから、果たして「日本の政治」が前に進んでいるのだろうか。

 野田首相就任は2011年9月2日。3ヶ月目にして早くも“コロコロ交代忌避発言”が飛び出した。

 前原政調会長の“コロコロ交代忌避発言”は今回が初めてではない。鳩山元首相辞任時も飛び出しているし、特に菅前首相に対して退陣論が噴き出した昨年の民主党代表選前に閣僚、その他が盛んに“コロコロ交代忌避発言”を用いて菅擁護を熱心に唱えた。

 鳩山元首相の場合は普天間の迷走と母親からの多額の資金提供問題、政策秘書による個人献金虚偽記載問題で支持率を下げ、鳩山首相では参院選が戦うことができないと悲観論が飛び出していた頃である。当時前原氏は国交相であった。

 前原国交相「日本のトップがころころと変わるべきではないと思っているし、今の状況は鳩山総理大臣1人の責任ではまったくなく、われわれが共同責任をとるべき問題と考えている」(NHK NEWS WEB
 
 「われわれが共同責任をとるべき問題と考えている」と言いながら、鳩山内閣を受け継いで菅内閣が成立すると、共同責任を取らないままに国交相及び沖縄及び北方対策担当相を留任している。

 そして次の“コロコロ交代忌避発言”は菅首相が2010年7月11日の参院選で民主党が大敗してから、民主党代表を再度問う、小沢氏が対立候補となった代表選の2010年9月14日の間に参院選敗北の責任論とその他発言のブレや実行力・指導力等の資質を問う菅退陣要求論に抗して噴出することとなった。
 
 2010年7月30日国交相記者会見。9月の民主党代表選で管支持を打ち出したことを記者から問われて。

 前原国交相「参議院選挙があって、確かに消費税の発言等もあって敗れはいたしましたけれども、私が民主党の風土を変えていかなければいけないと言うのは、短兵急に結論を求めてお互いの足を引っ張り合っているというそのカルチャーを早く脱しないと、仮に菅さんが辞めても、また何かの問題があったら足の引っ張り合いで、そして結果的にはコップの中で権力闘争をやっているということになって、日本の国を変えるという大きな絵姿を描ける政党に脱皮できないと思いますよ」

 直接的な言葉で「ころころ代わる」ことへの忌避を示してはいないが、「短兵急に結論を求め」ることへの警告はイコール「ころころ代わる」ことへの忌避の提示であろう。

 その他の“コロコロ交代忌避発言”――

 7月29日午前、TBSの番組収録。

 岡田外相「(首相が短期間で代われば)日本の存在感が小さくなりかねない。長い間やってもらいたいと国民も感じている。(菅政権が)スタートしたばかりなのにまた代えるといえば、自民党と一緒だ」

 菅首相が就任したのは2010年6月8日。2010年7月11日の参院選敗北が野田首相の3ヶ月の記録を破るたったの1カ月余で“コロコロ交代忌避発言”を飛び出させるに至ったことになる。

 ということは、記録的には野田首相の3ヶ月は菅首相の1ヶ月余よりもずっとましということになる。

 2010年7月30日――

 北澤防衛相「わが国の政治のためにも、ひと月やふた月で総理大臣が辞めるというようなことはあってはならない」

 野田財務相「トップがころころ変わるのは不安定につながるので、しっかり菅さんを支えたい」(以上NHK NEWS WEB

 野田氏自身が“コロコロ交代忌避発言”を口にしているが、回りまわって今度は自身が前原政調会長によって“コロコロ交代忌避”の対象とされるに至っている。

 2010年8月26日記者会見――
 
 蓮舫行政刷新担当相「菅内閣の一員として、当然菅総理とこの国を支え、この国をつくり、政権交代をした結果というのをしっかりと国民の皆様にお示しをしようと思っております。その意味では、菅さんを支持し続ける、この思いに変わりはありません」

 みん気づいていないと思うが、前任者がコロコロと代わったからこそ、首相になれたというアイロニーを踏んだ登場だということである。菅前首相もそうだし、野田現首相もそうだし、鳩山首相すら、自民党の安倍・福田・麻生がコロコロ代わっていったからこそ可能となったアイロニー的登場だと言える。

 いわば全員が“コロコロ交代”の恩恵を受けている。

 “コロコロ交代”の恩恵を受けている以上、自分だけが長期政権に与(あずか)ろうなんていうのは欲張りに過ぎる。次に対しても “コロコロ交代”の恩恵を与えて、初めてバランスが取れる。

 確かに岡田外相が言っているように短期間の頻繁な首相交代は「日本の存在感が小さくなりかねない」ことになる。

 グレグソン米国防総省東アジア担当次官補の発言がそのことに言及している。2010年7月27日、下院軍事委員会開催日本の安全保障に関する公聴会。

 質問議員「日本で短期間に次々と総理大臣が代わったが、影響はあるか」

 グレグソン次官補「総理大臣や大臣がたびたび交代するので人間関係を築くのがとてもたいへんだ。政府といっても大事なのは個人なので、大臣になった人の仕事の進め方を理解できるようになるまで苦労している」

 呆れ果てて、うんざりすることも度々あるに違いない。結果、前原政調会長が言うように「国益を損なうことになる」

 だとしても、グレグソン次官補が「大事なのは個人」と言っていることは中身を問わない個人を対象にしているわけではなく、有能性を備えた個人を対象にしているはずだ。

 無能性を備えた個人を対象としていたなら、国益はますます失われることになる。

 2010年9月7日付のアメリカのニューヨーク・タイムズ社説。「日本の首相は回転ドアのようにころころ変わる」

 だが、首相の自身の手による内閣運営にしても幹事長や政調会長、その他の党役員を通した与党運営にしても、首相自身の指導性と創造的発想力にかかっている。

 そのことの成果が“コロコロ交代”なのか、長期なのかの結果として現れることになる。

 いわば首相自身の結果責任として自らが招いた“コロコロ交代”だということである。

 前原政調会長にしても、前任者が“コロコロ交代”することによって、自らにも次のチャンスの目が出てくる。

 尤も前原首相ということになったら、最も短い“コロコロ交代”首相になって欲しい一人になるに違いない。

 “コロコロ交代”が日本の国益を損なっていたとしたら、やはり各首相自らが招いた国益の損失であろう。

 “コロコロ交代忌避発言”で首相を擁護するのではなく、首相自身の指導性と創造的発想力を以てして、自らを擁護すべきである。大体が首相擁護の手段がコロコロ交代忌避”のみというのも情けない話ではないか。

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