安倍晋三のホロコースト記念館訪問、「悲劇も善意の勇気も風化させず記憶にとどめ」の見事な歴史修正の演出

2015-04-29 06:45:02 | Weblog




      「生活の党と山本太郎となかまた ち」

       《4月28日 新日米防衛指針等について(談話) 小沢一郎代表》

      《ネパールにおける巨大震災を受けて(談話)  小沢一郎代表》    

 安倍晋三が訪米した。日本時間4月28日朝早く、オバマ大統領に案内されてエイブラハム・リンカーン記念館を訪れたという。

 オバマ大統領はなぜリンカーン記念館に安倍晋三を案内したのだろう。その意味は?

 リンカーンは奴隷解放の父と呼ばれている。いわば人種平等主義者に当たる。

 安倍晋三は天皇なるものを熱烈に信仰する熱烈な天皇主義者である。天皇は日本民族優越性を証明する象徴的存在となっている。「万世一系」、あるいは「男系」、「2600年の歴史」という名によってその優越性を担保している。

 当然、安倍晋三は他民族、特にアジア人種やアフリカの黒人種等を差別とは言わずとも、人種的に日本民族の下に見ている。他民族を下に見ることによって、自民族の優越性を成り立たせることが可能となる。

 安倍晋三の日本の戦前国家――大日本帝国肯定も日本民族優越主義に基づいている。

 オバマ大統領は安倍晋三が日本民族優越主義を血としていることを知っていて、人種平等の大切さを訴えるためにリンカーン記念館に案内したのだろうか。

 その後、安倍晋三は訪米の度にそうするようにワシントン郊外のアーリントン国立墓地を訪れて、例の如く献花を行った。アーリントン国立墓地は南北戦争の戦死者に始まって、その後のアメリカの戦争の戦死者を祀っている。

 安倍晋三はこの戦死者を祀っている点に於いて靖国神社と同列の施設とすることで、そこを訪れることに何の問題もないことを以って靖国神社参拝が何の問題もない単に戦死者を追悼しているに過ぎないとする正当性の付与に利用している。

 しかし靖国神社参拝は「お国のために戦い、尊い命を捧げた」と戦死者を称揚することで、戦い、命を捧げる対象としたお国――戦前日本国家をも称揚しているのである。

 「よくぞお国のために戦った」と言うとき、その「お国」を称揚していないということがあるだろうか。

 アメリカ人がアーリントン国立墓地を訪れて「お国のために戦い、尊い命を捧げた」と戦死者を称揚し、その称揚を通して歴史上のいずれのアメリカ国家をも称揚しようとも、何の問題もないはずである。

 奴隷制度はアメリカの歴史の暗部を成すが、南北戦争は奴隷解放の戦争であり、アメリカは独裁国家の歴史を持たない。

 だが、日本の戦前の国家は天皇独裁の形式を取り、その形式を利用した政府もしくは軍部独裁の国家であった。そのような国家を安倍晋三たちは称揚する。

 当然、アーリントン墓地と靖国神社を同列の施設とすることはできないし、それぞれの参拝を同列に置くことはできない。

 その後安倍晋三はナチス・ドイツがユダヤ人を大量虐殺した資料を展示している「ホロコースト記念館」を訪れて、そこで第2次世界大戦中、リトアニアの日本領事館に勤務していた外交官の杉原千畝が発給したビザによって命を救われたユダヤ人と面会したとマスコミは伝えている。

 「ホロコースト記念館」視察後、待ち構えていたのだろう、記者団に発言している。

 安倍晋三「悲劇も善意の勇気も風化させず記憶にとどめ、日本としても、世界の平和と安定のために、より積極的に貢献しなければならないとの決意を新たにした」(NHK NEWS WEB

 発言も含めて、なかなか小憎らしい見事な歴史の演出である。

 今年は戦後70年の節目の年である。第2次世界大戦の戦勝国はそれぞれ記念行事を行う。日本は敗戦国であって、記念行事はない。その70年の節目の年に自由の国アメリカを訪れて、一国の首相として「ホロコースト記念館」に足を伸ばしたということはマスメディアを通してナチス・ドイツという戦前のドイツの“悪の歴史”を改めて世界に提示したことになる。

 一方、安倍晋三はナチス・ドイツが虐殺の対象としたユダヤ人のうち、日本人杉原千畝がその虐殺から救ったユダヤ人の一人と面会することで、戦前日本の“善の歴史”を提示した。

 それ以外に戦前日本の歴史は一切提示していない。

 当然、記者団に語った「悲劇も善意の勇気も」の「悲劇」はナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺=戦前ドイツの“悪の歴史”を指し、「善意の勇気」は杉原千畝の善行=戦前日本の“善の歴史”を指す。

 そのl両者を「風化させず記憶にとどめよう」と言ったのである。

 日本の戦前の侵略戦争や植民地主義、天皇独裁の名を借りた軍部独裁等々を「風化させず記憶にとどめよう」と言ったわけではない。これらを抜きにしていたのだから、アメリカを訪れて「ホロコースト記念館」に足を運び、杉原千畝が助けたユダヤ人と面会することで歴史修正主義者の名に恥じない歴史修正を見事に演出したのである。

 しかも戦前日本の“悪の歴史”を遙か歴史の彼方に遠ざけ、透明化しようとして、「世界の平和と安定のために、より積極的に貢献する」という口実で目を前に向けさせる演出まで施している。

 安倍晋三はこれら歴史修正を巧妙に施した前日、4月27日午前(日本時間4月27日夜)、米ボストン郊外のハーバード大ケネディスクールで講演したあとで慰安婦問題に関して学生から質問を受けている。

 安倍晋三「人身売買の筆舌に尽くしがたい思いをされた方のことを思うと今でも胸が痛む。この思いは歴代の首相と変わりはない。

 この問題を巡り謝罪と反省を示した河野官房長官談話を継承するということは今まで何回か申し上げてきた。日本は、これまで慰安婦の方々の現実的救済の観点からさまざまな努力を積み上げてきた」(NHK NEWS WEB

 各国の様々な元慰安婦が証言しているのは、従軍慰安婦とされたその多くが日本軍による暴力的拉致と変わらない強制連行を手段とした軍慰安所への強制監禁とそこでの強制売春であるにも関わらず、安倍晋三は「人身売買の犠牲」だと、売春業者に罪をなすりつけて日本軍を無罪とする狡猾な狡賢い歴史修正をここでも施している。

 当然、「河野官房長官談話を継承する」も歴史修正に彩られていいなければ、発言の整合性を失うことになる。
 
 2012年9月12日、自民党総裁選挙立候補表明演説。

 安倍晋三「河野洋平官房長官談話によって、強制的に軍が家に入り込み女性を人浚いのように連れていって慰安婦にしたという不名誉を日本は背負っている。孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかない」

 これが安倍晋三の「河野談話」に関わるホンネ――歴史認識上のホンネであって、「継承」は歴史修正主義者ではないことを装う偽りの歴史修正に過ぎない。

 「河野談話」の「継承」だけではない。「村山談話」の「継承」にしても、偽りの歴史修正であることを証明することになる発言を行っている。

 2012年12月26日産経新聞インタビュー。 

 安倍晋三「自民党は歴代政府の政府答弁や法解釈などをずっと引きずってきたが、政権復帰したらそんなしがらみを捨てて再スタートできる。もう村山談話や河野談話に縛られることもない。これは大きいですよ」

 かくこのように安倍晋三は歴史修正を精神に根付かせ、精神そのものとしている。

 アメリカのマスメディアが安倍晋三の訪米に当って、その歴史認識に懸念を示し、批判している。戦後70年の節目の年ということだけではなく、アメリカマスメディアの安倍晋三に対する人物観も念頭に置いた訪米に於ける歴史修正の演出でもあるに違いない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする