ダッカ邦人等テロ事件:安倍晋三は「テロの根絶に向けて」などと、責任逃れとなる聞こえのいい約束をするな

2016-07-08 08:45:32 | 政治

 安倍晋三が7月5日、「バングラデシュにおけるテロ事案に関する関係閣僚会合」を首相官邸で開いた。
  
 会議の冒頭、出席者全員が犠牲者に黙祷を捧げたという。

 安倍晋三「先程、亡くなられた7名の方々の御遺体が、御家族に伴われ、帰国されました。『バングラデシュの人々のために』という、崇高な志を持って日本を発った時、このような形で帰国することは、想像すらできなかったと思います。

 犠牲となられた方々の無念さ、御家族の皆様の御心痛はいかばかりか、察するに余りあります。改めて、政府として心から哀悼の意を表し、お悔やみを申し上げます。あわせて、負傷された方の一日も早い快復をお祈りします。

 事件発生以来、政府として、対応に全力を尽くしてきましたが、このような結果となったことは、痛恨の極みであります。この非道かつ卑劣極まりない、許し難いテロに対し、改めて、心の底からの強い憤りを覚えるとともに、断固として非難します。

 御家族のお気持ちに寄り添い、引き続き『為し得ることは全てやっていく』という姿勢で、あらゆる支援を行ってまいります。

 我が国がテロに屈することは決してありません。先日、我が国は、安保理の議長国として、テロを強く非難するステートメントを取りまとめ、国際社会としてテロの脅威と闘っていくとの明確なメッセージを発出しました。

 今後、テロの根絶に向けて、国際社会との連携を一層深めるとともに、内外の日本人の安全を確保するため、情報の収集・分析、安全情報の提供の徹底、水際対策を始めとする国内のテロ対策を強力に推し進めてまいります。

 各大臣は、一層の緊張感を持って、被害者・御家族の支援、事件の捜査、テロ対策の強化など、必要な対策に全力を挙げていただきたいと思います」(以上)

 「テロの根絶に向けて、国際社会との連携を一層深める」・・・・・

 政治的な過激主義を抱えた者による国家権力に対する国民を巻き添えにしたテロ(=テロリズム)のみならず、国家権力による民主主義に則らずに国家権力を維持するための国民に対する様々な暴力的措置たるテロは世界のいずれかに歴史と共に存在し、今後共存在し続けるだろう。

 そして政治と経済と文化の、あるいは宗教のグローバル化によって、グローバル化を受けた側の地域内のそれらの利害が複雑に絡み合い、ときには激しく衝突するようになるに応じて国家権力に対するテロは大規模化し、国家権力によるテロは巧妙化していっている。

 あるいは国家権力がそれを構成する者の利益のみを考え、一般国民の利益を考えずに貧富の格差を生じせしめる国家と国民の関係がこの世界に常に存在し、そこで国家と国民の間に利害の対立を恒常的に潜在化させていた場合、そのことが国民の一部による国家権力に対するテロの土壌として存在し続け、ときには臨界点に達したマグマのように実際にテロの形で噴出し、噴出自体が恒常化することもある。

 病気で言えば人間を死に至らしめる様々なガンが治療はできてもその発生自体は抑えることができないような、こういったテロの性格ゆえに一定程度抑えることは可能であっても、根絶は不可能であろう。

 だから、「テロの根絶」とは言わずに 「テロの根絶に向けて」と言う。

 「根絶」ではないから、再び日本人の犠牲者を出すことになるテロが起きても、間違ったことを言った責任は生じない。再び「テロの根絶に向けて、国際社会との連携を一層深める」と言っていれば、その場は片付く。

 聞こえはいいが、聞こえがいいと言うだけの国民に対する責任を伴わせずに済む公約に過ぎない。

 安倍晋三はこの他にもテロに関して聞こえがいいだけの責任を伴わない、それ故に責任逃れができる言葉を何度となく発している。文飾は当方。 

 2015年2月1日午前5時過ぎ(日本時間)、 「イスラム国」は拘束し、身代金を日本政府に要求していた後藤健二さんを殺害したとする動画を声明文と共にインターネット上に投稿した。

 後藤さん殺害の動画を受けて同日午前7時過ぎから首相官邸で開催の関係閣僚会議で、安倍晋三が挨拶している。

 安倍晋三「湯川さんに続いて、後藤さんを殺害したとみられる映像が公開された。ご家族のご心痛を思えば言葉もない。政府として全力をあげて対応してきたが、誠に無念、痛恨の極みだ。このような結果になり、本当に残念でならない。非道、卑劣極まりないテロ行為に強い怒りを覚える。許しがたい行為を断固非難する。

 テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせるため、国際社会と連携していく。日本がテロに屈することは決してない」(NHK NEWS WEB/015年

 日本人が10人犠牲となった2013年1月16日のアルジェリア邦人等殺害テロ事件を受けた安倍晋三の訪問先ベトナムでの対記者団発言。

 安倍晋三こうした行為は断じて許すことはできない」(NHK NEWS WEB
 「テロリストたちを絶対に許さない」にしても、「こうした行為は断じて許すことはできない」にしても、殺人がなくならない人間の犯罪でありながら、「殺人は断じて許すことはできない」と言うのと同じく、テロの根絶ができないままに「許さない」と言っているに過ぎないのだから、責任が伴うことはない聞こえがいいことを言っているに過ぎない。

 同じアルジェリアテロ事件当時の2013年1月19日の午前6時からの対策本部会合後の対記者団発言。

 安倍晋三このような卑劣な事件は断じて許されない。今後とも、私が陣頭指揮をとって、政府一丸となって全力で事件に対処していく」――

 テロ集団との直接的な交渉当事国ではないにも関わらず、「今後とも、私が陣頭指揮をとって、政府一丸となって全力で事件に対処していく」と勇ましいことを言っている。

 勇ましい言葉に過ぎないことは人質となった日本人10人が犠牲となったことが証明している。

 2015年11月13日のパリ同時多発テロ事件8日後の2015年11月21日の「ASEANビジネス投資サミット」でも同じ発言を繰返している。  

 安倍晋三「先ず冒頭、先日パリで発生したテロによって犠牲となった方々に、皆さんと共に、心からの哀悼の意を表したいと思います。そして、私たちアジアの人々は、今、困難に直面しているフランスの人々と共にある。強い連帯を表明します。

 テロは、断じて許すことはできません。これは、平和と繁栄を願う、私たちの価値観に対する挑戦であります。

テロとの戦いに、国際社会がしっかりと手を携えていく。その明確なメッセージを、G20、APECに続き、この東アジア・サミットでも、しっかりと打ち出していく。その決意であります」――

 2016年6月12日未明にアメリカ合衆国フロリダ州オーランドにあるゲイナイトクラブで発生した銃乱射事件。

 安倍晋三(6月13日大分県で)「米国民に強い連帯の意を表する。卑劣なテロは断じて許せない。強く非難する。米国や国際社会とテロ根絶の取り組みをしっかり進める」(日経電子版

 テロが起きるたびにテロの被害を受ける側が「卑劣なテロは断じて許せない」と繰返し言い、その言葉が実効性を持たないままにテロが繰返される悪循環を我々は目の辺りにしている。

 このことからも、責任が伴うことはない聞こえがいい言葉に過ぎないことを証明することになる。

 聞こえのいいというだけの言葉ではなく、責任を持たせた言葉とするためには、「テロの根絶に向けて、国際社会との連携を一層深める」ではなく、「在外日本人を二度とテロの巻き添えにはしない、テロの犠牲者にはしない」と約束すべきであり、そのように約束して初めて責任を問われる言葉とすることができる。

 もし約束していたなら、アルジェリア事件を受けた2013年1月21日の対策本部会議で述べたのと同じような言葉を、記事冒頭掲げた「バングラデシュにおけるテロ事案に関する関係閣僚会合」で繰返さずに済んだはずだ。

 安倍晋三「アルジェリアでのテロ事件について、現地の城内外務大臣政務官より、現地イナメナス所在の病院に安置されているご遺体と対面した結果、安否確認中の日揮の社員のうちの7名であるとの報告を受けました。

 世界の最前線で活躍する日本人が、何の罪もない人々が、犠牲となり痛恨の極みです。残されたご家族の方々のご気持ちを思うと、言葉がありません。

 各位にあっては、亡くなった方々が、一刻も早く、ふるさと日本へ戻り、ご家族と会えるよう政府専用機の活用、現地でのサポート等、政府としてできる限りの支援を行っていただきたい。

 今なお、3名の方の安否がわかっていません。

 各位にあっては、さらなる情報収集、安否の確認に全力を尽くしていただきたい。

 無辜の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難します。

 我が国は引き続き国際社会と連携して、テロと戦う決意であります」(以上)

 (アルジェリアテロ事件)「世界の最前線で活躍する日本人が、何の罪もない人々が、犠牲となり痛恨の極みです」

 (ダッカテロ事件)「事件発生以来、政府として、対応に全力を尽くしてきましたが、このような結果となったことは、痛恨の極みであります」

 (アルジェリアテロ事件)「無辜の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難します」 

 (ダッカテロ事件)「この非道かつ卑劣極まりない、許し難いテロに対し、改めて、心の底からの強い憤りを覚えるとともに、断固として非難します」

 (アルジェリアテロ事件)「我が国は引き続き国際社会と連携して、テロと戦う決意であります」

 (ダッカテロ事件)「我が国がテロに屈することは決してありません。先日、我が国は、安保理の議長国として、テロを強く非難するステートメントを取りまとめ、国際社会としてテロの脅威と闘っていくとの明確なメッセージを発出しました。

 今後、テロの根絶に向けて、国際社会との連携を一層深めるとともに、内外の日本人の安全を確保するため、情報の収集・分析、安全情報の提供の徹底、水際対策を始めとする国内のテロ対策を強力に推し進めてまいります」

 実効性のない聞こえのいい言葉を発信するだけでは、日本人がテロの犠牲となるたびに似たような言葉を繰返し発信することになるのだろう。

 繰返して、時間が事件を風化するのを待つ。

 今回のテロ事件を受けて安倍晋三の指示で政府の「国際テロ情報収集ユニット」を増員する方向で検討に入ったと言うことだが、事件発生以降の経過をアルジェリア事件のように長期戦になると、そのことだけを学習材料に限定した超マニュアルな危機管理対応に支配されて、菅義偉は暫くの間は動きはないだろうと踏んで人質日本人の安否よりも選挙応援を優先させて官邸を留守にした危機管理に関わる柔軟性を欠いた想像性が問題であって、そこに気づかなければ、聞こえのいい言葉の発信同様、いくら増員しても、責任を取らないままの変わり映えをしない状況が繰返されるはずだ。

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