どのマスコミ記事を見ても、参院選終盤情勢調査は安倍自民党が前回18議席獲得した比例区で20議席超獲得の勢い、改選数50議席に対して選挙区と合わせた議席は50議席台半ばになる見込みだと予想し、自民、公明、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の改憲4党併せて3分の2に迫る勢いだと伝えている。
2014年12月14日投開票の衆議院選挙と同様、今回の参議院選挙も消費税増税延期とアベノミクス前面争点の2点セット、安倍晋三流選挙絶対勝利の構図が功を奏しそうだ。
2014年12月14日投開票の衆院選は自民党が政権交代を果たした2012年12月16日投開票の衆院選で294議席を獲得、選挙前議席は1議席増えて295議席だったが、291議席を獲得、4議席減らしたものの、選挙前の予想はアベノミクスが成果を挙げない中、2012年12月総選挙で議席を取り過ぎた反動として、270議席前後になるという見立ても少なからず流布していた。
それが4議席のみの減、291議席を獲得したのだから、大勝利そのものである。
勝因は勿論、消費税増税延期とアベノミクス最前面争点の2点セットである。安倍晋三は2015年10月の消費税率5%から8%への増税の2017年4月への先送りを決定、そこにアベノミクスが成功するかしないかの成否を置き、「景気回復、この道しかない。」のキャッチフレーズでアベノミクスを選挙争点の最前面に掲げて、集団的自衛権の憲法解釈による行使容認の安保法制にかかる争点は巧妙に背後に隠して選挙を戦った。
それが功を奏した。そのときの選挙絶対勝利の構図を柳の下の2匹目のドジョウよろしく再び打ち出した。どうも2匹目も釣り上げそうな勢いとなっている。
安倍晋三はなぜ消費税増税延期とアベノミクス最前面争点の2点セットを選挙絶対勝利の構図とばかりに今回の参院選でも利用しようと飛びついたのか。
それは人間は生活の生きもので、生活を最大利害としていることを知っているからである。生活をエサに票を釣り上げることを狙った。
消費税増税延期も人間という生きものが生活に置いている最大の利害に深く関係するし、アベノミクスの成否も同じく生活に影響していくことになる。
いわば人間にとって生活という最大の利害を消費税増税延期とアベノミクスで擽(くすぐ)ったのである。擽られて悪い気がしなかった多くの国民がアベノミクスに1票を投じ、2014年衆院選で安倍自民を大勝利に導いた。
アベノミクスが既に内外の識者によって失敗だと指摘されているが、やはり人間の情として、やれ求人倍率が全都道府県で1を超えた、雇用を3年で110万人増やした、正社員は26万人増えたと成果を誇示されると、内実は非正規雇用が大勢を占めた、それゆえに格差拡大を内部構造とした成果に過ぎないのだが、人間にとって最大の利害となっている生活が良くなる期待を膨らますことになって、つい1票となるのだろう。
安倍晋三は今回の参院選挙活動でも、改憲勢力で3分の2を獲得したならと狙っている憲法改正は争点として前面に打ち出さずにアベノミクスの争点の背後に置いた巧妙な争点隠しの戦術に出ている。
あくまでも人間にとっての最大の利害である生活に訴える選挙絶対勝利の構図に忠実であろうとしている。
尤も人間が生活を最大の利害としている以上、憲法改正を少しぐらい争点化しても、消費税増税再延期を受けたアベノミクスの成否を最大争点としていさえすれば、最大利害の生活を優先させて投票規準をアベノミクスに置くはずだ。
その証拠に安倍晋三が通常国会閉幕に合わせて、2017年4月に予定していた消費税8%から10%への増税の2019年10月までの再延期を伝えた2016年6月1日の記者会見で、「社会保障については給付と負担のバランスを考えれば、10%への引上げを(延期)する以上、その間、引き上げた場合と同じことを全て行うことはできないということは御理解をいただきたいと思います」と、増税再延期によって財源を失うことになる社会保障の不完全履行を明らかにしていながら、以後のマスコミの世論調査では増税延期評価が評価しないを10ポイントから20ポイント引き放して過半数前後を占め、内閣支持率に至っては2~3ポイント増えたことは将来の不安よりも人間にとって最大の利害となっている目先の生活の安心を優先させたということでなければならない。
今回の参院選挙でも、消費税増税延期とアベノミクス最前面争点の2点セットをフル利用した選挙絶対勝利の構図が2014年12月の総選挙同様に物の見事に現実化する、その予想が各マスコミの終盤情勢調査となって既に現れているということなのだろう。
いわば柳の下から2匹目のドジョウを釣り上げることに成功間違いなしの状況となっている。
安倍晋三は腹の中で人間にとっての最大の利害となっている生活に関わる国民の思いを刺激することに成功すれば、選挙なんてチョロイもんだとほくそ笑んでいるに違いない。