強権トルコ大統領エルドアンとプーチンそれぞれの国民的人気と両者と親交の厚い安倍晋三それぞれの共通点

2016-07-21 09:35:20 | 政治
 

 7月18日(2016年)昼間放送のTBS「ひるおび!」でトルコのクーデター未遂を取り上げて、クーデター発生と同時にトルコ大統領エルドアンが民間のテレビ局を通じて国民に外に出て抗議するよう呼びかけ、国民がそれに応じたことに対して司会者の恵俊彰が、「言論の自由や報道の自由に制限を加えているエルドアンの呼びかけに国民の多くが応じて外に出て抗議をした、逆なら分かるけど、ある意味不思議だ」といった趣旨のことを話していた。

 ヒトラーやプーチンを例に挙げれば、簡単に理解できることである。

 よく知られているように、独裁者としてのヒトラーの出発点は民主的方法によった。「Wikipedia」の「アドルフ・ヒトラー」の項目には、〈第一次世界大戦までは無名の一青年に過ぎなかったが、戦後にはバイエルン州において、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)指導者としてアーリア民族を中心に据えた人種主義と反ユダヤ主義を掲げた政治活動を行うようになった。1923年に中央政権の転覆を目指したミュンヘン一揆の首謀者となり、一時投獄されるも、出獄後合法的な選挙により勢力を拡大した。

 1933年には大統領による指名を受けてドイツ国首相となり、首相就任後に他政党や党内外の政敵を弾圧し、ドイツ史上かつてない権力を掌握した。1934年8月、ヒンデンブルク大統領死去に伴い、大統領の権能を個人として継承した(総統)。こうしてヒトラーという人格がドイツ国の最高権力である三権を掌握し、ドイツ国における全ての法源となる存在となり、ヒトラーという人格を介してナチズム運動が国家と同一のものになるという特異な支配体制を築いた。この時期のドイツ国は一般的に「ナチス・ドイツ」と呼ばれることが多い。〉と解説されている。

 最終的にはユダヤ人を除いて殆どのドイツ国民がヒトラーを熱狂的に歓迎した。国家権力指導者のその政治性と、それを歓迎する国民の存在という相互性がヒトラーという怪物を生み出した。

 プーチンにしても同じ共通項を成している。

 政敵や反政権活動家、プーチン批判のジャーナリストの暗殺、あるいは汚職や脱税、横領等の罪で検察に告発させ、裁判で禁錮5年やそれ以上の判決で刑務所に幽閉する方法で活動を停止させる粛清が専ら行われている。

 「Wikipedia」「ウラジーミル・プーチン」の項目には、〈ロシア情報公開擁護財団によると、ロシアでは1999年から2006年までに128人のジャーナリストが死亡・もしくは行方不明となっており、プーチン政権がこれらの事件に関わっているのではないかとの疑惑が浮上している(この点に関してゴルバチョフは、ロシアではジャーナリストが不審な死を遂げる事件がエリツィン政権時代から頻発しており、いずれも真相が明らかにされていないため、政権の関与が疑われてしまうと発言している。)。〉との解説が載っているが、8年間で128人。1年間平均16人という決して無視できない、多くの人数となっている。

 1999年はプーチンが第5代首相に就任した年である。

 その1999年から政府批判のジャーナリストの死亡もしくは行方不明が頻発している。

 政府批判のジャーナリストの死亡もしくは行方不明という形の活動の停止が誰により多くの利益を与えるのか、活動を目にしたり耳にしたりして不愉快という不利益と支持率低下への恐れが実際の形を取った場合の不利益は批判の対象となっている政府が被ることになり、死亡・行方不明はその不利益を避ける利益となっていることは誰の目にも明らかである。

 このようなある種の粛清に助けられていないことはない状況下で1999年以来、プーチンは首相、大統領、首相、大統領とロシアの権力を握ってきた。

 ロシア人の人種的な偉大性――大ロシア主義は広大な領土に依拠させた強大な国家権力を不可欠な二大要素としているが、ロシア国民がその大ロシア主義を最も満足させたのはプーチンが元々旧ソ連の領土だったウクライナからクリミアを2014年3月に取り戻したときであろう。

 ロシアへのクリミア併合を国民は熱狂して歓迎し、プーチンの支持率はその強権主義を無視して8割以上にも達した。

 現在は支持率は65%程度に落ちているが、それはクリミア併合に反対の欧米の経済制裁によって国民の生活が苦しくなっていることから、少しは目が覚めたからだろうが、プーチンが何かをキッカケとしてロシア国民の多くが血としている大ロシア主義を刺激した場合、再び国民を熱狂させ、高い支持率を獲得するケースが生じないとも限らない。

 トルコ大統領エルドアンは2007年の爆弾テロ未遂事件発生をクーデター計画と見做し、軍関係者ばかりか、ジャーナリストまで100人以上を投獄する言論弾圧と、国民がSNSに投稿する政権批判の声をツイッターやフェイスブックを遮断する言論弾圧等の手段を使って反対派を抑えこんできたが、今回未遂に終わったクーデター参加者摘発の名を借りて、放送24局の免許取り消し、公務員2万5千人の停職処分や解任処分、軍幹部等の8千人以上の拘束等、反対派粛清に乗り出している。

 現在のトルコ大統領は儀礼的存在でしかないが、自らが任命した首相を傀儡として自身が国家権力の実権を握り、その完成形として新憲法の制定によって現行の議院内閣制から自身に行政権を含めた権限を集中させる新たな大統領制への移行を狙っていると言われている。

 このような新憲法制定と共にクーデター関係者摘発の名を借りた広範囲な反対派粛清は自身への権力集中に終わらず、反対派を粛清・一掃することによって成立させることができる独裁権力掌握の意図に基づいて行われているはずだ。

 それがヒトラーがしたように国民の支持のもとに着々と進められている。

 欧米がどう批判しようと、国民の支持こそが権力の正当性を証拠づける唯一絶対の打出の小槌である。支持を得るためにも反対派粛清の権謀術数を尽くす。

 我が日本の安倍晋三は無意識の内に政治的体質に近親性を響き合わせているのか、プーチンとエルドアン、それぞれと親交を厚くしている。

 安倍晋三にしても民主的な選挙によって首相に選ばれたが、報道の自由に制限を加えたい欲求を実際の形で示すこともあるし、人間が生活を最大の利害とする生活の生きものであることを利用、選挙では国民が反対する安倍晋三の安全保障政策や憲法改正問題は争点隠しをし、国民の生活に密着する経済政策のアベノミクスを争点とする偽りの正面作戦で議席を伸ばし、その議席の力で国民が反対する政策を着々と実現させていく、目的のためには頭数だけを絶対として手段を選ばない、表面上はソフトに見える巧みな権謀術数で権力の維持を謀る、その本質性に於いてエルドアンやプーチンと何ら変わらない。

 国民の支持がその権力の正当性を決定づける唯一のバロメータとなるとは限らないことを心しなければならない。

 アメリカの共和党大統領候補トランプの支持率が何と高いことか。

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