◆騎兵の父、その曾孫は第72戦車連隊中隊長!
心温まるニュースです。日本騎兵の父秋山好古大将の曾孫さんが、機甲師団である第7師団第72戦車連隊で中隊長に着任されたと報じられていました。
秋山好古のひ孫は陸自指揮官:研究重ね「信頼されたい」・・・ NHKのドラマにもなった司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」の主人公の一人、秋山好古のひ孫で、陸上自衛隊3佐の秋山純一さん(36)が北海道恵庭市で初めて指揮官としての任務に当たっている。小説を読んで好古の弟、真之に憧れたが、今は「好古のような信頼される指揮官になりたい」と、戦史や戦術の研究にも励んでいる。
純一さんは第7師団所属戦車部隊の中隊長として赴任し、部下約50人を束ねている。好古は日露戦争で騎兵を率い、世界最強といわれたロシアのコサック騎兵を破ったことで知られる。戦車部隊はその流れをくんでおり、隊旗には白馬があしらってある。 「人生は一事を成すためにある」。秋山家に伝わる好古の言葉だ。(共同通信)【 2010年12月28日 17時20分http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20101228000126◆
秋山好古といえば、日本騎兵の父、騎兵部隊による機関銃の機動運用を行い、騎兵戦術の革新を起こした指揮官で陸軍大将なのですが、そちらのほうはNHKの“坂の上の雲”をご覧になっている方のほうが詳しいでしょう。如何に機関銃の運用を行うかはこの先のお楽しみという事で、一つ言えば機関銃を日露戦争で日本が持っていなかったという逸話があったのですけれども、NHKの通りホチキス式機銃を使っていまして、海軍はベルトリンク給弾方式の機関銃を運用している写真がありました。
白馬を描く部隊といえば、第72戦車連隊でしょう。戦車は騎兵の装甲車と歩兵の火力支援車から生まれたものですが、騎兵の運用は偵察隊と重なるものがあり、偵察隊は機甲科職種ですので、このブログをご覧の方に旧軍歩兵出身の方がいらしたら恐縮ですが、騎兵とは今日の機甲部隊を示すものといって差し支えないでしょう、米軍では第1騎兵師団が機甲師団編成を採っている事例もありますし、騎兵は少なくとも装甲戦闘車を駆使する機械化歩兵として機甲戦力の一翼を担う部隊が基本となっています。
第7師団は、第71戦車連隊、第72戦車連隊、第73戦車連隊を中心に、第11普通科連隊、第7特科連隊、第7高射特科連隊など機械化された部隊により編成されています。他の師団が基盤的防衛力として有事の際は防衛線構築による防御を軸とした攻勢を基本にしているのに対して戦車連隊を中枢に置く第7師団は迅速に展開し敵勢力を戦車の圧力で押し潰す鉄槌です。騎兵の父、その曾孫が戦車部隊、それも機動運用を行う第7師団の戦車中隊長というのは本当に縁を感じるものです。
東郷平八郎提督の曾孫さんも防大18期として海上自衛隊に任官し、現在は退職されていますが、第1護衛隊司令、第4護衛隊群司令官、練習艦隊司令官、開発隊群司令官を歴任されていまして、なるほどといいますかやっぱりといいますか、研究者の世界と同じように軍人の世界も広いように見えて実は狭い、歴史は昨日から今日へ今日から明日へ続いているということを感じますね。
戦車数の冷戦時代の1200両から、実に400両にまで縮減されるのではありますが、教育体系を元として、加えて戦術研究さえ確保していればなんとかなるものだ、と過去に当方は記載したのですけれども、それも歴史と伝統に裏打ちされている日本の自衛隊という組織ならではのものなのかな、と思ったりもしました。秋山好古は陸軍大将まで務められていますが、騎兵の血筋を信頼される多くの幹部の一人として次世代に受け継いでほしいですね。
HARUNA
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