◆実現には機動力と遠距離火力充実が不可欠
現在の政府には日本の防衛をいかに達成しようとするのか見えてきません、穿った見方をすれば変な言葉遊びで脅威を前に自衛隊を縮減して、防衛予算による国民の安全を子供手当に回そうとするのではないか、とも。
新防衛大綱に「動的防衛力」:12月5日 4時15分 ・・・政府は、今月中の決定を目指す新しい「防衛計画の大綱」で、防衛力整備について、自衛隊を全国に均等に配置する従来の基本的な考え方を改め、海上・航空自衛隊の警戒・監視能力を強化し、機動的に部隊を派遣する「動的防衛力」という新たな考え方を盛り込むことになりました。
政府は、防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」について、6年ぶりに見直しを進めており、今月中に新たな大綱の閣議決定を目指しています。今回の見直しでは、防衛力整備について、従来の基本的な考え方である、陸海空の自衛隊を全国に均等に配置する「基盤的防衛力構想」を改め、「動的防衛力」という新たな考え方を盛り込むことになりました。
この「動的防衛力」は、防衛力整備を、九州・沖縄に重点を置いて、海上・航空自衛隊の警戒・監視能力を強化し、本州の部隊も、こうした地域に機動的に派遣できるように編成するものです。今回の対応は、中国が東シナ海で活動を活発化していることや、北朝鮮の軍事的な動向などを踏まえたものと見られます。
ただ、新たな大綱では、北海道など、ほかの地域の部隊の大幅な縮小を避けるため、これまで想定していた脅威にも備えることが必要だとする文章も盛り込むことにしています。http://www.nhk.or.jp/news/html/20101205/t10015649321000.html◆◆
基盤的防衛力から機動運用へ、というのですけれどもそもそも機動運用という形での他方面隊管区への増援は冷戦時代から北方機動演習という形で実施されてきています。現在では従来の本州から北海道へという北方機動演習以外にも北部方面隊の部隊を本州へ展開させるという協同転地演習に発展して訓練体系は継続されています。
例えば富士総合火力演習では近年、北部方面隊からの戦車部隊などの参加が増加しており、本年は東千歳駐屯地の第11普通科連隊が96式自走迫撃砲を参加させ実弾射撃を初公開した事は記憶に新しい事ではないでしょうか。既に機動運用は日常的に行われているのです、これ以上何を、という気もします。
第一に、本州からの部隊を今まで以上に機動運用させる、というのならば具体的に航空自衛隊の輸送機や海上自衛隊の輸送艦を抜本的に増強する構想はあるのか、という事が重要です。協同転地演習においては民間のフェリーを活用して海上自衛隊の海上輸送能力の不足を補っているのですけれども、有事の際にはどうするのでしょうか。
予防展開として機動する場合を除けば個艦防空能力を有し、艦隊とのデータリンクが可能な海上自衛隊の輸送艦でなければ脅威海域の輸送は不可能です。例えば、おおすみ型を常時稼働数として十隻単位で増強し、新しく強襲揚陸艦を導入するとか、航空自衛隊に数十機単位で次期輸送機XC-2を導入し、新たに不足分を補うC-17輸送機を修得する、というのならば別なのですがそうした話は聞こえてきません。
欧州での通常戦力の抜本的な縮減は近代化ではなく冷戦構造崩壊という根本的な緊張緩和に起因するものですので中国、朝鮮半島、極東ロシアと四方のうち三方を脅威に曝され遠からず中国の空母により最後の一方も海からの脅威に曝されるわが国では模倣できません、あまりにもナンセンスだ。
アメリカでの冷戦後の陸軍縮小は情報優位と装備近代化に加え展開能力の強化を以て実現した事ですので、従来型の装備から無人機が普遍的に運用されるほどに増強された訳でもなく、空中機動能力が増えた訳でもないわが国が真似できる訳も無く、本州の師団は米軍の空挺師団や軽歩兵師団以下の火力しか有していない実情から、一体なにを削るというのか、せめて軽歩兵師団や海兵師団並に火力と機動力を増強するような施策が無ければ、これ以上は無理でしょう、現時点で最低限を下回っています。
正直な話、装備密度さえ充分ならば縮小には反対ではないのです、イラク戦争型の米軍機械化歩兵師団編成程度の師団があれば、火力では三個か四個師団程度で日本本土を防衛出来ると思いますし、緊急展開部隊として空中機動師団、南西諸島を睨み海兵師団がそれぞれ一個あれば充分でしょう。遠距離火力投射が可能であれば、質で量を補う事が可能なのですし、機動力が増せば移動が迅速に可能となるというかたち。
そうしたならば現在の9個師団6個旅団を最終的に6個師団にまで縮小することも可能だと考えますし、方面隊も高射を除き地誌研究と募集、教育、駐屯地業務と演習場管理を残し大幅に縮減可能でしょう。機動力が重要ならば現行の旅団を米軍のストライカー旅団のような編成に置き換えてもこうした目標は達成できるでしょうし、とにかく能力を補うものさえあれば人員は縮小可能なのだと考えます。
しかし、現状を見ていると政府にはどういう能力が必要なのか見えてこない、装備定数を明記して防衛政策を政治が定める部分を決定するというのはナンセンスで、どういう能力が必要なのかという事を政治が明記した場合、必要な装備体系を運用の一線にある自衛隊が画定し、これをもとに予算を確保することが政治の責務でしょう。即ち、“師団2010”というようなかたちで部隊モデルを画定することが先決と思うのです。
機動力を要求するのならばその為の機材を、そういうことです。青森の住民が交通は新幹線に限る、といえば九州新幹線沿線の方々は大きく頷くでしょうが、今の政府は北海道の住民にも頷かせようとしているのです、限らせるのならば早くこちらにも新幹線を、と。動的防衛力の達成には、これまで考えられないほどの機動力が必要となります、その為の予算が確保できるのならば別の話ですが、現状でも対応できている点に鑑みれば、無理してかえる必要はどこにあるのか、説明を求めたいです。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)