◆増大し続ける国籍不明機接近飛行への対応
那覇空港第二滑走路の工事が始まります。那覇空港は沖縄の玄関として有名で、京阪神はもちろん軍用機以外で本土から沖縄へ行くには那覇空港を経由せねばなりません。
しかし、滑走路が一本しかなく、加えて民間空港とともに航空自衛隊那覇基地、海上自衛隊那覇航空基地、陸上自衛隊那覇駐屯地、海上保安庁那覇航空基地、多くの施設が集中しており、滑走路は常に過密状態でした。航空管制は民間が行っているのですが、優先順位は緊急発進を優先せねばならず、緊急発進の回数が増大した際、管制ミスなども発生しており、問題視されています。
那覇基地は近傍の基地が宮崎県の新田原基地であるため、多方面からの増援を受けることが難しく、沖縄本島以南の島嶼部は中国本土からの短距離弾道弾射程圏内にあるため、那覇基地の機能は重要であり、発着件数の増大への対処は必要、このため第二滑走路の必要性が指摘されていたわけです。
第二滑走路が必要なのですが、那覇空港が抱える大きな問題は、隣が海であり、そして山があるため安易に拡張できないという地理的問題を抱えていました。海側に拡張できないならば陸側へ、と思われるかもしれませんが陸側は丘陵地で、既に施設や市街地もあり、こちらも拡張は現実的ではありません。
こうした事情の反面、那覇基地での緊急発進は我が国南西諸島への周辺国航空機防空識別圏進入とともに増大し、那覇基地第83航空隊だけでは対応できず、他航空方面隊の戦闘機部隊を訓練展開させ、早期警戒機を飛行、警戒態勢を強化しなければならない状況となっています。このままでは、遠からず那覇空港へ向かう航空便の上空待機など支障をきたすことは自明の状態でした。
こうした現状への対応から那覇空港は来年度からの第二滑走路建設へ決断を行った、というもので、既に国土交通省によれば年間9500回に及ぶ戦闘機の発着回数を14800回程度まで増大したとしても第二滑走路により空港機能を維持できる、としており、併せてこの工事は南西諸島全般の防空能力強化にも寄与することでしょう。
那覇基地は現在F-15一個飛行隊を基幹として防空任務に当たっていますが、現在の防衛計画大綱に従い、F-15戦闘機を二個飛行隊化する方針が定められていると共にE-2C早期警戒機などの運用拠点が構築され、冷戦時代の千歳基地に匹敵する防衛拠点として強化されます。
このため、飛行訓練も増大しますが、加えて地上整備施設なども拡張しなければならず、弾道弾攻撃や巡航ミサイル攻撃を考慮すれば航空掩体等の建設も必要となります。このため飛行場施設の拡張が求められていたわけで、第二滑走路建設はその一環として行われるのでしょう。
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