■ドナルドトランプ大統領誕生!
アメリカ大統領選挙、トランプ大統領が当選しました。アメリカを再び偉大な国とする、この掛け声の下、選挙戦により分断された世論を統一し、全てのアメリカ国民のための大統領となる、高らかに宣言しました。不安要素は多いのですが、敢えて好意的に太平洋を越えた隣国の新しい指導者を迎えましょう。

防衛政策の部分から、日本は独自防衛力を強化すると共にアジア太平洋地域でのアメリカが引くポテンシャルを補う事をこれまで視てきましたが、トランプ政権が重視するのは経済立て直しであり目指す経済政策当面の目玉は公共事業です。ハイウェイや橋梁の再整備等を当選後の勝利宣言にて示し、雇用拡大を強調しましたが国境3140kmに渡り建設するメキシコとのトランプの壁、この施策は現在三重のフェンスにより隔てられている長大な国境へ壁を建設する公約で、仮に実行すれば、巨大な公共事業となり得るかもしれません。

トランプ大統領の保護主義政策への転換は、ある意味世界にとり福音となるかもしれません。アメリカはグローバリゼーションと自由貿易の実現へ建国以来主導してきましたが、トランプ政権は、NAFTA北米自由貿易協定見直し、TPP環太平洋包括協定の脱退、等保護主義的な政策を公約としています。行過ぎたグローバリゼーションは経済摩擦や地域衛材破綻、労働力国際移動に低賃金競争の要因で、減速は世界の方向性を変える事でしょう。イスラム教徒入国禁止という言葉が響きすぎましたが、反グローバリズムを示しています。

国内政策は減税を掲げ、相続税撤廃や法人税15%への引き下げ、年収25000ドル以下単身世帯と夫婦50000ドル以下世帯所得税免除、を掲げました。一方、オバマケア医療保険制度の廃止による公的社会保障制度の廃止を掲げつつ、市場原理での医療保険制度という自助制度への回帰を公約としていまして、自己実現と自己責任の制度へ戻る公約でした。この通り、減税、という意味では伝統的共和党路線を継承しているといえるかもしれません。

トランプ外交の未知数な部分は、防衛政策と外交政策が全く白紙だ、ということです。アジア太平洋地域とアメリカの関与はどのように変容するのか、トランプ外交は具体策を提示していない故の未知数な要素が多いのですが、アメリカはアジア太平洋地域を市場として重視するのか、アジア太平洋市場への関与の度合いを退くのか、通商政策の側面と、アジア太平洋地域の防衛政策へ関与するのか、同盟国を通じ関与するのか、放棄するのか。

欧州地域への防衛上の関与をどのように展開させるのか、欧州正面ではロシアがカリーニングラードへ兵力蓄積を進めており、ウクライナ東部の出来事が放置すればバルト海沿岸へ波及する事は必至であり、NATO盟主としてのアメリカがどのように対応するのか、これは対ロシア政策の展開と重なり、間接的に日ロ関係へも大きく影響することでしょう。他方、日米防衛協力に加え、日豪防衛協力、日英防衛協力の進展はより重要性を持ちます。

中東アフリカ地域へはどのように防衛外交政策を展開させるのか、この地域での関与度合いをイラクアフガニスタンからの撤退により低めたオバマ政権を批判しており、この地域へ戦力投射能力を整備するのか、常駐部隊を再展開させるのか、一方、サウジアラビアへの防衛協力へ否定的な視点を示していますので、矛盾しない政策は中々、見えてきません。

日本へ在日米軍の駐留費全額負担が無ければ撤退、を掲げていまして、在日米軍の展開兵力は、空軍が三沢と嘉手納へ戦闘機部隊を置き横田へ輸送機部隊、海軍が横須賀へ第七艦隊と厚木へ空母航空団と嘉手納等へ哨戒機部隊、海兵隊が岩国と普天間へ航空部隊と沖縄へ海兵師団、後は横浜や相模原に広等の弾薬庫、米軍後方拠点の抑止力は非常に大きい。ただ、安保ただ乗り論はアメリカではレーガン政権時代より続く対日批判であり、防衛負担増大の要請は、今に始まったものではなく、日米で継続的に討議してゆく命題でしょう。

自主防衛力、新しい88艦隊案や、巡航ミサイル潜水艦案、広域師団案、大型航空団と臨時分屯基地案、様々な試案を提示してきましたが、自主防衛力と日米同盟は矛盾しません。トランプ公約、在日米軍撤退を示唆しその上で米軍駐留経費の増大を要求する姿勢ですが、元々在外米軍基地は世界的にラムズフェルド長官時代の米軍再編を経て戦略拠点以外は縮小、海外戦略拠点はドイツとイギリスに日本に集約され、この残る数少ない戦略拠点から撤退を示唆するという事は、アジア軽視か単なる政治的揺さ振りである事が分かるところ。

日本、韓国、ドイツ、サウジアラビア、への防衛負担増大を要求すると共に、一方かなりの米軍部隊が駐留する、イギリス、イタリア、防衛協力が大きいイスラエル、近年再展開するフィリピン、の防衛負担増大が示されず、在沖米軍が重視する台湾の軽視を示唆する発言も無く、単に自衛隊の強化を筆頭に同盟国負担増大を求める視点なのかもしれません。世界の様々な課題は山積していますが、アメリカが繁栄を求める限り関与は不可分であるため、未知数の部分は大きいものの、太平洋を越えた隣国として関係が重要であることも、又変わりありません。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
アメリカ大統領選挙、トランプ大統領が当選しました。アメリカを再び偉大な国とする、この掛け声の下、選挙戦により分断された世論を統一し、全てのアメリカ国民のための大統領となる、高らかに宣言しました。不安要素は多いのですが、敢えて好意的に太平洋を越えた隣国の新しい指導者を迎えましょう。

防衛政策の部分から、日本は独自防衛力を強化すると共にアジア太平洋地域でのアメリカが引くポテンシャルを補う事をこれまで視てきましたが、トランプ政権が重視するのは経済立て直しであり目指す経済政策当面の目玉は公共事業です。ハイウェイや橋梁の再整備等を当選後の勝利宣言にて示し、雇用拡大を強調しましたが国境3140kmに渡り建設するメキシコとのトランプの壁、この施策は現在三重のフェンスにより隔てられている長大な国境へ壁を建設する公約で、仮に実行すれば、巨大な公共事業となり得るかもしれません。

トランプ大統領の保護主義政策への転換は、ある意味世界にとり福音となるかもしれません。アメリカはグローバリゼーションと自由貿易の実現へ建国以来主導してきましたが、トランプ政権は、NAFTA北米自由貿易協定見直し、TPP環太平洋包括協定の脱退、等保護主義的な政策を公約としています。行過ぎたグローバリゼーションは経済摩擦や地域衛材破綻、労働力国際移動に低賃金競争の要因で、減速は世界の方向性を変える事でしょう。イスラム教徒入国禁止という言葉が響きすぎましたが、反グローバリズムを示しています。

国内政策は減税を掲げ、相続税撤廃や法人税15%への引き下げ、年収25000ドル以下単身世帯と夫婦50000ドル以下世帯所得税免除、を掲げました。一方、オバマケア医療保険制度の廃止による公的社会保障制度の廃止を掲げつつ、市場原理での医療保険制度という自助制度への回帰を公約としていまして、自己実現と自己責任の制度へ戻る公約でした。この通り、減税、という意味では伝統的共和党路線を継承しているといえるかもしれません。

トランプ外交の未知数な部分は、防衛政策と外交政策が全く白紙だ、ということです。アジア太平洋地域とアメリカの関与はどのように変容するのか、トランプ外交は具体策を提示していない故の未知数な要素が多いのですが、アメリカはアジア太平洋地域を市場として重視するのか、アジア太平洋市場への関与の度合いを退くのか、通商政策の側面と、アジア太平洋地域の防衛政策へ関与するのか、同盟国を通じ関与するのか、放棄するのか。

欧州地域への防衛上の関与をどのように展開させるのか、欧州正面ではロシアがカリーニングラードへ兵力蓄積を進めており、ウクライナ東部の出来事が放置すればバルト海沿岸へ波及する事は必至であり、NATO盟主としてのアメリカがどのように対応するのか、これは対ロシア政策の展開と重なり、間接的に日ロ関係へも大きく影響することでしょう。他方、日米防衛協力に加え、日豪防衛協力、日英防衛協力の進展はより重要性を持ちます。

中東アフリカ地域へはどのように防衛外交政策を展開させるのか、この地域での関与度合いをイラクアフガニスタンからの撤退により低めたオバマ政権を批判しており、この地域へ戦力投射能力を整備するのか、常駐部隊を再展開させるのか、一方、サウジアラビアへの防衛協力へ否定的な視点を示していますので、矛盾しない政策は中々、見えてきません。

日本へ在日米軍の駐留費全額負担が無ければ撤退、を掲げていまして、在日米軍の展開兵力は、空軍が三沢と嘉手納へ戦闘機部隊を置き横田へ輸送機部隊、海軍が横須賀へ第七艦隊と厚木へ空母航空団と嘉手納等へ哨戒機部隊、海兵隊が岩国と普天間へ航空部隊と沖縄へ海兵師団、後は横浜や相模原に広等の弾薬庫、米軍後方拠点の抑止力は非常に大きい。ただ、安保ただ乗り論はアメリカではレーガン政権時代より続く対日批判であり、防衛負担増大の要請は、今に始まったものではなく、日米で継続的に討議してゆく命題でしょう。

自主防衛力、新しい88艦隊案や、巡航ミサイル潜水艦案、広域師団案、大型航空団と臨時分屯基地案、様々な試案を提示してきましたが、自主防衛力と日米同盟は矛盾しません。トランプ公約、在日米軍撤退を示唆しその上で米軍駐留経費の増大を要求する姿勢ですが、元々在外米軍基地は世界的にラムズフェルド長官時代の米軍再編を経て戦略拠点以外は縮小、海外戦略拠点はドイツとイギリスに日本に集約され、この残る数少ない戦略拠点から撤退を示唆するという事は、アジア軽視か単なる政治的揺さ振りである事が分かるところ。

日本、韓国、ドイツ、サウジアラビア、への防衛負担増大を要求すると共に、一方かなりの米軍部隊が駐留する、イギリス、イタリア、防衛協力が大きいイスラエル、近年再展開するフィリピン、の防衛負担増大が示されず、在沖米軍が重視する台湾の軽視を示唆する発言も無く、単に自衛隊の強化を筆頭に同盟国負担増大を求める視点なのかもしれません。世界の様々な課題は山積していますが、アメリカが繁栄を求める限り関与は不可分であるため、未知数の部分は大きいものの、太平洋を越えた隣国として関係が重要であることも、又変わりありません。
北大路機関:はるな くらま
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