北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

国際防衛協力:日韓包括軍事情報協定GSOMIA締結と日豪物品役務相互協定ACSA合意

2016-11-24 22:06:41 | 国際・政治
■日本と韓国・豪州の防衛協力
 日本と韓国や日本とオーストラリア防衛協力、日韓包括軍事情報協定GSOMIAと日豪物品役務相互提供協定ACSAが大きく前進しました。

 日韓包括軍事情報協定GSOMIAについて、北朝鮮によるミサイル開発や核関連活動の脅威増大を受け、長嶺安政駐韓大使と韓国の韓民求国防相がソウルで署名され、漸く締結されました。もともとGSOMIAは日韓が隣国でありながら軍事情報では完全に隔絶されている不自然な部分が解消されたかたちです、これまでは日米安全保障条約と米韓相互防衛条約に基づき、日韓共通の軍事同盟国がアメリカであった事から、一旦軍事情報をアメリカ経由で融通しあう、というものでした。

 GSOMIAは日韓の信頼醸成を進めると共に北朝鮮情勢は核開発の進展とともに弾道ミサイル脅威が顕在化しており、特に弾道ミサイルへ搭載可能な核兵器の小型化が進む現在、我が国へ明確な核攻撃の脅威が現実化しています。北朝鮮の核兵器は、我が国周辺での核不拡散条約秩序からかい離した国際法上許されない核保有国の出現と共に、通常戦力の近代化を放棄し実戦に投入する戦力としての核開発を進めている北朝鮮の核兵器は、文字通り開戦第一撃で運用されかねない脅威に他なりません。この脅威へ核戦力の装備化を除く対抗策には弾道ミサイル防衛体制の確立を置いてほかになく、この為の情報共有は即座の迎撃を行うための不可欠な要素の一つ。

 日豪防衛協力も前進する事となります、日豪外務防衛閣僚協議を来月開催し、安全保障関連法に基づく日豪間の弾薬を含む物品相互融通に関する二国間協定、物品役務相互提供協定ACSAが締結される見通しがつきました。ACSAとは日本とオーストラリアが防衛協力を展開する際に、一時的にお互いが不足する物資を提供しあうというもので、日豪包括協力協定締結以来、豪州と自衛隊の防衛協力体制は年々深められてきましたが、続いて物品役務相互提供協定の締結へ閣議決定したかたちです、これにより弾薬は勿論さまざまな消耗品の部品単位での相互支援が可能となります。

 日本と韓国、日本とオーストラリアの防衛協力が、一気に進んだ印象を与える今回の二つの防衛協力ですが、もちろん一朝一夕に進んだものではありません。これはオバマ政権が進めたアメリカ中心の放射状の環太平洋地域防衛協力を超えた、自由主義と民主主義国の防衛力をクラウド化し防衛協力へ繋げるという施策の成果の一つともいえるでしょう。多国間防衛協力の試みは日印間でも進展しており、アジア太平洋地域の安定と平和維持への協調はこれからも進んでゆく事だけは間違いありません。

 こうした安全保障上の取り組みを進める背景には北東アジア地域での不安定要素が、東南アジア地域と西アジア地域、個々に存在した不安定要素が繋がりつつある点と無関係ではありません。具体的には北東アジア地域には南西諸島への圧力、台湾海峡での不確定要素が存在してきました。東南アジア地域では南沙諸島問題と西沙諸島問題があります。そして西アジア地域には中印国境やベンガル湾地域とインド洋での安全保障均衡の変容という現実があり、これらを地域的に包括して取り組む必要が高まった、ということ。

 日本の安全保障政策は従来、アメリカを一辺倒としたものとなっていましたが、日米安全保障条約締結から60年以上を経て、防衛協力はアメリカ一辺倒からアメリカを基軸としたもの、即ちアメリカの価値観を共有しアメリカとの防衛協力を進める諸国との間の関係強化を図る段階に入った、という事を示します。また、先日三沢基地に置きまして航空自衛隊とイギリス空軍の初の戦闘機部隊共同訓練が実施され、防衛協力は日英間での装備開発分野での協力など、多角化を示しています。

 現実問題、朝鮮半島での核開発と共にアジア地域では様々な問題が同時進行しています。ヴェトナムが中国からの軍事行動に対し対決姿勢を確かなものとしつつあります、自国島嶼部を幾度も中国軍に攻撃され不法占拠、海軍歩兵守備隊に戦死者が出ているヴェトナムはもともと中国の更なる自国領域占拠へ警戒を続けてきましたが、今年夏にはロシア製超音速対艦ミサイルを展開、さらに続いて今回、ヴェトナムは離島の航空設備を強化する方針です。ヴェトナム空軍はSu-27戦闘機などを運用しており、高まる軍事圧力へ対抗しています。

 現在アメリカの次期政権による、南シナ海での関与度合いが不透明な状況となりつつある中、先手を打った抑止措置ともいえるでしょう。一方、フィリピンは独自防衛政策へ転換しつつあります。ドゥテルテ大統領の自主独立国防戦略が発動しました、米比軍事演習を縮小し災害派遣やテロ対策へ移行するとのこと。ただ、フィリピン軍近代化計画は停滞しています、イタリアからのフリゲイト導入計画は空中分解し戦闘機導入計画は高等練習機へ修正しようやく端緒についた段階、哨戒機導入計画は日本の援助での練習機での訓練が漸く徳島で始まる段階です。

 フィリピンは雨リアからの麻薬取締を契機とする外交圧力へ反発していますが、中国の南沙諸島フィリピン領の不法占拠へも抗議の姿勢を崩していません。具体的には中国からの軍事圧力増大へフィリピン政府の対応は明確ではありません、ただ、日本との防衛協力の模索は継続している証左であり、日比はステイクホルダーでもある訳です。日韓の防衛協力と日豪の防衛協力はこのように進みましたが、日印と日比間でも進められており、新しい国際協力の枠組が構築されつつあるといえます。

北大路機関:はるな くらま
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