■南スーダンPKOと情勢悪化
南スーダンの情勢悪化、報道に接するたびに、現在の派遣体制を見直す必要は無いのか考えさせられます。
南スーダンPKOにおいて大きな衝撃が走りました、ケニアがPKO派遣部隊1000名を撤退させる方針を示しました、これはケニア軍が派遣するオンディエキUNMISS司令官が国連により更迭された事への抗議で、加えてケニア政府はUNMISS派遣と共にアフリカ連合AUでの影響力が大きく、南スーダン政府との仲介を担ってきましたが、終了するとのこと。
自衛隊の南スーダンPKO,今月から派遣される第9師団派遣部隊から、従来の施設補修やインフラ整備に国連施設整備に加えまして、任務へ駆けつけ警護が加わります。これは、自衛隊以外の国連施設や国連職員及び文民が危険に曝された際、自衛隊は部隊が当事者とならない限り、人道被害が生じようともUNMISS部隊が攻撃されても傍観するしかなかった。
駆けつけ警護は、この状況から必要であればUNMISSの指揮下において警護任務を自身が当事者とならない場合でも対応できるものとしたものです。自衛隊は軽装甲機動車を派遣していますので、銃撃程度ならば排除し救出が可能です。ただ、南スーダンではT-72戦車とMi-24戦闘ヘリコプターが撃ちあう状況、重装備が無ければ実質的に、対応できません。
ケニア軍UNMISS司令官の更迭、これは国連事務局が本年7月に生起した南スーダン首都ジュバ市内での戦闘に際し、UNMISS司令部近傍において南スーダン軍と副大統領派軍との間で戦闘が発生した際、国連関係機関が襲撃されUNMISSに対し警護を要請した際にUNMISSは対応能力がない、として要請を却下、市民等の虐殺を阻止できなかった為です。
国連事務局は、UNMISSの対応が不十分であった為に少なくとも73名が殺害されたとして、UNMISS司令官が必要な任務を実施しなかったとしてUNMISS司令官を務めるケニア軍中将を更迭しました。しかし、ケニア政府は中将の更迭は、そもそも国連がUNMISSへ必要な人員と部隊を展開させなかった責任を転嫁したものだ、として強く反発しました。
不当にも一個人にその責任を押しつけた、ケニア軍の南スーダン展開はもはや維持できない、PKOからの撤退を決定しました。ケニア軍は5個旅団を基幹とし、G-3小銃、ヴィッカースMk3主力戦車80両、ウニモグUR416やフランス製AML装甲車200両を装備、ここから歩兵部隊1000名を派遣、アウェイルとカジョク及びワウの警備任務へ当っています。
自衛隊は南スーダンへPKO部隊を派遣していますが、UNMISSについて、政府は自衛隊活動期間の延長を閣議決定しましたが、これに先んじて国連安全保障理事会決議2155号、UNMISSの任期延長を画定した際、日本政府は安全保障理事会理事国としてUNMISSの権限拡大と任務延長をロシアと中国の反対を押し切って可決させたという立場にあります。
T-72とMi-24が撃ちあう状況では、軽装甲機動車だけでは対応できません。第9師団は駆けつけ警護訓練を報道公開しましたが、軽装甲機動車と共に普通科部隊が前進し戦闘地域から要救助者を救出し、幌で覆った高機動車へ収容するというものでして、実際は高機動車の装甲付与PKO型が使用されるのでしょうが、防御力は重機関銃弾へも耐えられない。現時点では駆けつけ警護を自衛隊指揮官が判断するのか、政府判断かUNMISS命令に従うのかも不明確です。
安易に重装備を送るよりはむしろ撤退を、という視点もあるのでしょうが、上述の通り、日本はPKOの任務延長を主導した責任があります、例えば外交的譲歩を含めUNMISS任務拡大と延長に反対した中国政府へ機甲部隊派遣によるUNMISS増強を要請し、その一方で自衛隊の撤退を模索する、米軍のUNMISSへ参加を要請する、など簡単ではありません。
日本が撤退する事は簡単です、1992年から積み重ねたPKOの信頼を全て捨て、国際協調よりも自衛官の生命が重要であり、重装備を派遣して自衛官の安全を図るよりは南スーダンの人道危機を無視し、国際社会からの信頼も一旦捨て、日本は国連加盟国の義務である国連分担金拠出に徹し、PKOからは身を引くという選択肢は、とれなくもないでしょう。
しかし、日本政府が1956年の国連加盟以来掲げてきた国連重視の姿勢を取り下げる事は、簡単ではあっても後の取り返しは付きません。制度上離脱は容易でも、多種多様な連環を踏まえれば、それによって生じる影響を正確に予測する事は難しく、後先を考えますと、中国政府への譲歩やアメリカ政府とアフリカ連合との関係など、複雑になってしまいます。
現在のPKOは安保理決議に基づく国連憲章七章措置、強制力を伴うものです。状況を見ますとAUからの増援を政府が国連と共に道筋を示すまで、UNMISS支援としてUNMISS指揮下に入らない形でも、近隣諸国へ必要な装備品を訓練派遣することは必要でしょう。自衛隊の海外派遣という視点からは、既に対艦ミサイルと艦砲を搭載した護衛艦を、強力な哨戒機と共に海賊対処任務として派遣しているわけですから、南スーダンへの派遣も考慮してしかるべきだとは思うのですが、どのような施策が妥当なのか、未知数です。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
南スーダンの情勢悪化、報道に接するたびに、現在の派遣体制を見直す必要は無いのか考えさせられます。
南スーダンPKOにおいて大きな衝撃が走りました、ケニアがPKO派遣部隊1000名を撤退させる方針を示しました、これはケニア軍が派遣するオンディエキUNMISS司令官が国連により更迭された事への抗議で、加えてケニア政府はUNMISS派遣と共にアフリカ連合AUでの影響力が大きく、南スーダン政府との仲介を担ってきましたが、終了するとのこと。
自衛隊の南スーダンPKO,今月から派遣される第9師団派遣部隊から、従来の施設補修やインフラ整備に国連施設整備に加えまして、任務へ駆けつけ警護が加わります。これは、自衛隊以外の国連施設や国連職員及び文民が危険に曝された際、自衛隊は部隊が当事者とならない限り、人道被害が生じようともUNMISS部隊が攻撃されても傍観するしかなかった。
駆けつけ警護は、この状況から必要であればUNMISSの指揮下において警護任務を自身が当事者とならない場合でも対応できるものとしたものです。自衛隊は軽装甲機動車を派遣していますので、銃撃程度ならば排除し救出が可能です。ただ、南スーダンではT-72戦車とMi-24戦闘ヘリコプターが撃ちあう状況、重装備が無ければ実質的に、対応できません。
ケニア軍UNMISS司令官の更迭、これは国連事務局が本年7月に生起した南スーダン首都ジュバ市内での戦闘に際し、UNMISS司令部近傍において南スーダン軍と副大統領派軍との間で戦闘が発生した際、国連関係機関が襲撃されUNMISSに対し警護を要請した際にUNMISSは対応能力がない、として要請を却下、市民等の虐殺を阻止できなかった為です。
国連事務局は、UNMISSの対応が不十分であった為に少なくとも73名が殺害されたとして、UNMISS司令官が必要な任務を実施しなかったとしてUNMISS司令官を務めるケニア軍中将を更迭しました。しかし、ケニア政府は中将の更迭は、そもそも国連がUNMISSへ必要な人員と部隊を展開させなかった責任を転嫁したものだ、として強く反発しました。
不当にも一個人にその責任を押しつけた、ケニア軍の南スーダン展開はもはや維持できない、PKOからの撤退を決定しました。ケニア軍は5個旅団を基幹とし、G-3小銃、ヴィッカースMk3主力戦車80両、ウニモグUR416やフランス製AML装甲車200両を装備、ここから歩兵部隊1000名を派遣、アウェイルとカジョク及びワウの警備任務へ当っています。
自衛隊は南スーダンへPKO部隊を派遣していますが、UNMISSについて、政府は自衛隊活動期間の延長を閣議決定しましたが、これに先んじて国連安全保障理事会決議2155号、UNMISSの任期延長を画定した際、日本政府は安全保障理事会理事国としてUNMISSの権限拡大と任務延長をロシアと中国の反対を押し切って可決させたという立場にあります。
T-72とMi-24が撃ちあう状況では、軽装甲機動車だけでは対応できません。第9師団は駆けつけ警護訓練を報道公開しましたが、軽装甲機動車と共に普通科部隊が前進し戦闘地域から要救助者を救出し、幌で覆った高機動車へ収容するというものでして、実際は高機動車の装甲付与PKO型が使用されるのでしょうが、防御力は重機関銃弾へも耐えられない。現時点では駆けつけ警護を自衛隊指揮官が判断するのか、政府判断かUNMISS命令に従うのかも不明確です。
安易に重装備を送るよりはむしろ撤退を、という視点もあるのでしょうが、上述の通り、日本はPKOの任務延長を主導した責任があります、例えば外交的譲歩を含めUNMISS任務拡大と延長に反対した中国政府へ機甲部隊派遣によるUNMISS増強を要請し、その一方で自衛隊の撤退を模索する、米軍のUNMISSへ参加を要請する、など簡単ではありません。
日本が撤退する事は簡単です、1992年から積み重ねたPKOの信頼を全て捨て、国際協調よりも自衛官の生命が重要であり、重装備を派遣して自衛官の安全を図るよりは南スーダンの人道危機を無視し、国際社会からの信頼も一旦捨て、日本は国連加盟国の義務である国連分担金拠出に徹し、PKOからは身を引くという選択肢は、とれなくもないでしょう。
しかし、日本政府が1956年の国連加盟以来掲げてきた国連重視の姿勢を取り下げる事は、簡単ではあっても後の取り返しは付きません。制度上離脱は容易でも、多種多様な連環を踏まえれば、それによって生じる影響を正確に予測する事は難しく、後先を考えますと、中国政府への譲歩やアメリカ政府とアフリカ連合との関係など、複雑になってしまいます。
現在のPKOは安保理決議に基づく国連憲章七章措置、強制力を伴うものです。状況を見ますとAUからの増援を政府が国連と共に道筋を示すまで、UNMISS支援としてUNMISS指揮下に入らない形でも、近隣諸国へ必要な装備品を訓練派遣することは必要でしょう。自衛隊の海外派遣という視点からは、既に対艦ミサイルと艦砲を搭載した護衛艦を、強力な哨戒機と共に海賊対処任務として派遣しているわけですから、南スーダンへの派遣も考慮してしかるべきだとは思うのですが、どのような施策が妥当なのか、未知数です。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)