北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】AJAX装甲偵察車試験とCV-90追加調達,BMP-3F両用装甲車とBMP-2M近代化

2021-05-17 20:01:50 | インポート
■週報:世界の防衛,最新10論点
 今週は各国の装甲戦闘車の話題を中心に戦車以外の重装甲車両の話題を中心に10の最新情報を視てみましょう。

 イギリス陸軍は2月、運用するAJAX装甲偵察車について信頼性検証試験を実施したとのこと。試験については2019年にも納入開始予定であったAJAXが試作車による評価試験を経て中々実運用への量産開始に進まず、評価試験の進捗状況を情報公開する意味合いもあります。信頼性検証試験はイギリス国内で製造されている40mm機関砲塔が対象という。

 AJAX装甲偵察車はオーストリアとスペインが共同開発したASCOD装甲戦闘車を原型として高性能偵察マストと偵察兵4名を乗車できるよう改修した上でラインメタル社が設計した40mmCTA機関砲を搭載したもので、イギリスはスカウトSUVとして採用、のちにAJAXとして当面は589両を導入予定です。当初は120mm砲搭載型も採用予定でした。

 ASCOD装甲戦闘車は設計自由度の高い装甲戦闘車で、もともとはオーストリア軍4A4FA装甲車とスペインのM-113装甲車が新たに導入した第三世代戦車レオパルド2に対し機動力で随伴できない為に開発された高い機動力を有する装甲戦闘車ですが、採用国の兵站体系に併せてエンジンや駆動系等を自由に選択でき、軽戦車型はアメリカ軍に提案中です。
■ノルウェーCV-90追加配備
 89式装甲戦闘車がとうの昔に製造終了となったのに対して改良型が連綿と開発されるCV-90装甲戦闘車は装備の理想形だ。

 ノルウェー陸軍は新たにCV-90装甲戦闘車20両を取得するべくBAEシステムズ社との間で5000万ドル以上の契約を結んだとのこと。CV-90はスウェーデンが開発した装甲戦闘車で開発当時は装甲戦闘車用として世界最大口径であるボフォース40mm機関砲を搭載した装甲戦闘車として誕生、軽戦車さえ置換える重武装と云う事で世界から注目されました。

 CV-90をノルウェー軍はCV-9030Nとして1994年に104両を導入、ノルウェー軍仕様では機関砲を運用環境と戦術要求から30mm機関砲に改めて採用しています。ノルウェー軍はその後60両を追加調達し、現在144両を取得しています。既存車輛はCV-9030NF-1へ改修されており、今回の増強調達によりノルウェーは164両まで増強される事となります。

 5000万ドルでCV-90を20両調達する今回の契約では、ノルウェー軍は30mm機関砲塔に代えて12.7mm重機関銃RWS遠隔操作銃搭の搭載型を取得するものとみられ、このRWS搭載型は開発国スウェーデンでも販売を担当するBAEシステムズ社でもアルマジロ重装甲車として、従来の箱型車体を有する装甲人員輸送車APCよりも高い防御力を強調している。
■指揮通信型ACV-Cを初受領
 ACV水陸両用装甲車、アメリカ海兵隊が装輪装甲車でAAV-7を如何にして置換えるかは関心事です。

 アメリカ海兵隊は2月19日、最新型のACV水陸両用装甲車の指揮通信型ACV-Cを初受領したとのこと。ACVはイタリアのイヴェコスーパーAVを原型として装軌式のAAV-7両用強襲車の一部を置換える装甲車として導入を開始したもの。ACV-Cは多数のデジタル通信機器を搭載し航空部隊や両用戦艦艇と協同しACV部隊の運用統制に当る最新型の一つ。

 ACV水陸両用装甲車は現在、2020年12月から本格的量産に移行しており、現在の基本的な武装は遠隔操作銃搭に12.7mm重機関銃を備えるのみですAAV-7の12.7mm機銃40m擲弾銃より非力ですが、供給を担当するBAEシステムズ社ではACV-30として30mm機関砲塔搭載型を製造中であり、この他にACV-Rとして装甲回収車型の製造も進めています。
■両用型BMP-3F装甲戦闘車
 アメリカは水陸輸送車両を装甲化する発想でAAV-7を開発しましたがBMP-3F装甲戦闘車は元々が水陸両用戦車という。

 ロシア海軍の水陸両用戦部隊である海軍歩兵はBMP-3F装甲戦闘車2個大隊所要の受領を開始するとのこと。太平洋艦隊隷下の海軍歩兵に最初に受領される計画です。BMP-3FはBMP-3の最新型でシーステート3の海面上でも浮揚を維持でき、シーステート2の海面上でも推進が可能、原型のBMP-3よりも水上航行能力と安定性が強化されているものだ。

 BMP-3Fは従来、輸出に重点が置かれており、これまでに採用されたのはインドネシア海兵隊へ輸出された54両のみであるが、ロシア海軍隷下の海軍歩兵には各艦隊に一個旅団、小艦隊隷下には一個連隊、太平洋艦隊隷下に2個旅団が置かれている。永らく冷戦時代のPT-76両用戦車とMT-LB装甲輸送車を装備し続けたが、近年近代化を強化に転じている。

 海軍歩兵にはT-80戦車及びBMP-2M装甲戦闘車の配備が大隊規模で進み、ここにBMP-3Fが加わる構図である。BMP-3は元々PT-76設計を発展させたもので浮航性能は高い、ロシア海軍は当初、BMP-3車体に軽量なBMP-2砲塔を搭載したBMMP水陸両用装甲車を配備する計画だったが、BMMPの評価は芳しくなく、そのままBMP-3を調達した構図である。
■BMP-2にsb4-2近代化改修
 89式装甲戦闘車と比較すると性能面はともかく量産され戦術に内部化されているBMP-2装甲戦闘車は凄い装備です。

 ロシアのウラルガード戦車工場はBMP-2装甲戦闘車近代化改修型であるBMP-2M装甲戦闘車10両をロシア軍へ納入したとのこと。BMP-2はソ連時代に開発された30mm機関砲搭載の装甲戦闘車で、73mm砲搭載のBMP-1を補完するべく大量生産されている。sb4-2近代化改修として試作されていた改修型と、更に改修したsb4-3近代化改修したものがある。

 BMP-2M- sb4-2近代化改修では30mm機関砲などはそのままに車体正面部分と側面部分に大規模な増加装甲装着が行われると共に、砲塔には二発のコンクルースM対戦車ミサイルが連装配置された。BMP-2は浮航性能を有する一方、車体部分の装甲の薄さが問題視されており、車体正面下側に厚い増加装甲、車体側面は銃眼を塞ぎサイドスカートを強化した。

 BMP-2M- sb4-3近代化改修ではアクティヴ防護装置の様なものが確認されるほか、増加装甲の装着範囲が車体側面にも正面と同程度の車体全周に渡り施されており、ロシア軍発表写真では車体と砲塔に更に鳥籠状のスラッド装甲を備えている。BMP-2M装甲戦闘車はソ連時代からの精鋭部隊として位置付けられる第6親衛自動車化狙撃師団へ配備されている。
■スペイン,チェンタウロB1延命
 チェンタウロB1戦車駆逐車は自衛隊の16式機動戦闘車はじめ各国に装輪車両で威力偵察以上の対戦車戦闘能力という概念を付与した筆頭ですね。

 スペイン軍は84両を運用するイタリア製チェンタウロB1戦車駆逐車の延命改修についてスペイン防衛企業コヘモ社との間で新たな契約を結ぶことで合意しました。これは2022年までの定期整備を行うとともに、2025年までの定期整備延長のオプションを含むものとしています。コヘモは2019年よりスペイン軍へチェンタウロ予備部品を供給していました。

 チェンタウロB1戦車駆逐車はスペイン陸軍がレオパルド1主力戦車の後継として1990年代に導入したもので、52口径105mm砲と砲塔に14発、車体に26発の砲弾を搭載し、装輪装甲車としての極めて高い戦略機動性を発揮しています。開発国イタリアでは120mm砲を搭載するチェンタウロ2が開発されましたが、スペインでは採用の動きはありません。
■インド軍バジュラT配備
 バジュラTというとマクロスFのような印象です、インド軍はバジュラTかっているのか、というね。

 インド陸軍は2月17日、韓国設計K-9自走榴弾砲第100号車のライセンス生産車輛を受領したと発表しました。インド軍は砲兵近代化の為に幾つかの国産次世代火砲を開発しましたが何れも開発に失敗、これにより安価ながら52口径長砲身砲を搭載した高性能な韓国製K-9自走榴弾砲をバジュラTとしてインド国内にてライセンス生産する事としました。

 K-9バジュラT自走榴弾砲のライセンス生産は42カ月間で100両の量産計画を立てており、これが完了した事となります。インド陸軍は中印国境において中国人民解放軍の重戦力と対峙しており、近年は散発的な国境衝突が再燃しています。こうした中で30km以遠の目標を攻撃できるK-9自走榴弾砲はインド軍にとり重要な長距離砲兵火力といえましょう。
■パンツァーリS1とS-400
 パンツァーリS1複合防空システムとは要するに87式自走高射機関砲とP-SAMをトラックの荷台に搭載したようなもの。

 ロシア軍は無人機脅威に対応する一環としてパンツァーリS1複合防空システムをS-400広域防空システムへ統合する指針を発表した。これは2020年末にクリミア半島において実施された軍事演習におけるもので、低空からS-400ミサイルシステムへの攻撃を試みる複数の無人機を想定し、ミサイルシステム接近前に高射機関砲により制圧したとのこと。

 パンツァーリS1複合防空システムはトラック上にツングースカ自走高射機関砲と類似したガンSAMハイブリッド砲塔を搭載したもので、射撃統制装置と索敵レーダーを一体化させた独立運用能力の高い防空システムである。主として3km圏内の無人航空機に威力を発揮し、無人航空機の飛翔する高度50m前後の目標へも30mm機関砲が弾幕を張り無力化する。

 S-400ミサイルシステムは射程300km以遠を狙う広域防空システムだが、超小型無人機が建物よりも低い高度で接近する運用への防空は想定しておらず、近年はこの種の無人機がこう言いミサイルシステム攻撃を行い、防空システムを麻痺させたうえで本格的な航空攻撃に展開する懸念が指摘されている。いわば近接防空システムが必要された形となった。
■フィンランドのER-GMLRS
 冷戦終結後の欧州でMLRSは大量に廃棄されていますがロシア脅威再燃と共に大事なものを廃棄した事に気付くという。

 フィンランド軍はMLRS用ロケット弾最新型のER-GMLRS-AWロケットを導入する。これはアメリカ国務省が2月22日に有償軍事供与決定を発表したもので、MLRS関連装備に関する輸出は全体で9120万ドルに達する契約となります。フィンランド軍は現在、NATO諸国より余剰となったM-270-MLRSについて22両を取得し現在も運用中となっています。

 ER-GMLRS-AWはGPS誘導型のM-30ロケット弾を含むもので、これは自衛隊も運用するM-31と同系列となっています。ただ、自衛隊の運用するM-31はGPS誘導とともに単弾頭型を採用していますが、フィンランドが導入するER-GMLRS-AWのM-30はM85改良型子弾を404個内臓したクラスター弾薬となっています。射程は100kmに上るという。
■アイアンドームを改良
 アイアンドームミサイル防空システムは拠点防空用のシステムですが今後は輸出用に機動運用型が開発されるのでしょうか。

 イスラエル国防省は現在拠点防空用に配備されているアイアンドームミサイル防空システムの能力向上型評価試験を本格化したと発表しました。アイアンドームは射程10km以下の、しかし同時多数による飽和攻撃を撃退するべく開発されたもので20連発射装置を3基、射撃単位へ配備しており、都合数十発のミサイル飽和攻撃を迎撃可能となっています。

 アイアンドームはイスラエルが国内の人口密集地域へ行われるイスラム過激派ロケット弾攻撃を以下に防衛するかが長年の課題でした。過激派ロケットとはいえ、カッサムロケットという122mmから130mm級ロケット弾は一発でコンクリート建築物を破砕し、年間千数百発の単位で撃ちこまれ、また民間居住地域から発射される為に反撃もままなりません。

 能力向上型は海上配備型に搭載されるものですが、イスラエルでは本土防衛用アロー2及びアロー3弾道ミサイル迎撃システムの近接防空用にもアイアンドームを活用する方針です。アイアンドームにより数十発のロケット弾が数分間で打ち込まれた場合に人口密集地に落下する目標を瞬時に火器管制装置にて識別し危険な目標のみを迎撃、効果を上げています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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