■ガザ危機!緊張の現状と背景
日本でも北朝鮮のミサイル実験のたびJアラートの空襲警報が鳴らされる、あれはもしもを考えるといやなものです。
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中東において、聖地エルサレムを巡るイスラエルによる臨時検問所の設置を巡り対立が激化、武装勢力ハマスによりイスラエルに向けパレスチナ自治区から10日以降600発以上のロケット弾が撃ち込まれました。これに対しイスラエルは砲撃と空爆で報復、イスラエルのネタニヤフ首相は地上軍のガザ侵攻を示唆し2014年以来の緊張状態となりました。
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アイアンドームとは、イスラエルが開発した防空システムです。ロケット弾を次々に撃ち落とす報道映像が流れていまして、不謹慎な表現ですがいにしえのインベーダーゲームの様子に似ています。我が国でもミサイルを迎撃する装備はイージス艦にペトリオットに03式中SAMとESSMに11式短SAM等数多ありますが、これらとは運用や性能は若干違う。
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SEA-RAM個艦防空ミサイル、アイアンドームと非常によく似ているのはこの護衛艦に搭載されているSEA-RAMかもしれません。アイアンドームの射程は15km程度、イージス艦のSM-3が有する1300kmと比較し短いものですが、アイアンドームは放物線を描いて落下する小さな迫撃砲弾やロケット弾、155mm砲弾などを空中で破壊することが可能です。
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イスラエルがアイアンドームを開発した背景には、パレスチナ自治区であるガザ地区からイスラム武装勢力により多数のロケット弾が撃ち込まれるためです。そしてこれらが狙うのは基地や艦艇ではなくイスラエルの住宅街、基地ならば退避した後に反撃ですが、住宅地ですと家屋が破壊されるだけでも住民には建直し費用で耐え難い損害にほかなりません。
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アイアンドームは射程は日本の短距離地対空ミサイルと比べても短いですが、20連発の発射装置3基とレーダー射撃統制装置を1セットとしまして、ロケット弾などを短時間で多数撃ち込まれた場合でも同時に発射装置3基から60発までを発射し迎撃する事が可能です。迎撃は住宅密集地や避難所など公共施設に向かう弾道のものを厳選し、空中破壊か別の場所に落下するように破壊する方式を執る。
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カッサムロケット、日本でも過激派が米軍基地等にロケット弾を撃つことはありますが手製であり発射跡が見つかることはあっても着弾形跡はほとんど無い、するとロケット弾を撃ち込まれたといってイスラエル軍が空爆で反撃する状況に不信感を覚えるかもしれませんが、武装勢力が用いるロケット弾は70mmから122mm程度のカッサムロケットやBM-21ロケットです。
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70mmロケット弾は陸上自衛隊のAH-1SやAH-64Dに搭載されているハイドラ70ロケット弾と同じ大きさでこれは装甲車などを破壊します。130mmロケット弾を陸上自衛隊は2002年まで75式自走多連装ロケットとして運用していましたが、加害半径は概ね35m四方、住宅などに命中すれば全壊は必至で倒壊もあり得、当然ですがこんなものを数百発も撃ちこまれると、非常に危険なのですね。
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アイアンドームにより迎撃できているならば地上軍侵攻は不要ではないか、こう反論されるかもしれません。しかし厳しい現実があるのです、アイアンドームが防護するのは都心部や重要施設だけ、相応にシステムは高価です。日本のミサイル防衛はイージスアショア2基により日本全土を防衛する構想ですが、イスラエルの経済力は有限、配備にも限りが。
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イスラエル国内ではアイアンドームが自分の街に配備されていないのは国の怠慢であるとして、アイアンドーム増強と配備を求める訴訟さえ起こっています。カッサムロケット攻撃が続けば、アイアンドームのミサイル払底も当然考えられるため、イスラエル政府としては地上軍侵攻によりロケット発射陣地を物理破壊する必要がある種必然となる構図に。
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ハマス。今回ロケット弾攻撃を行っているのはPLOパレスチナ解放機構を前身としパレスチナ自治政府と袂を分けた武装勢力です。そして武装勢力ですが、合法部門と武装闘争を行う非合法部門が在り、合法部門は人道支援やインフラ整備を地道に行い、ガザ地区では民衆支持を集める他、事実上ガザ政府として統治機構の役割を担う程、支持されています。
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パレスチナ自治区。しかしイスラエルに対して攻撃を加えるパレスチナ自治区についても、北方領土を占領されている日本国民の一人として、賛同は出来ないにしても考えている背景は判るのですね。ガザ地区は地中海に面しエジプトとも国境を接していますが、全域がイスラエルの建設した高さ10m近い分離壁に覆われ、港湾もイスラエルに海上封鎖される。
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イスラエル政府はガザ地区をパレスチナ自治政府樹立へのオスロ合意により認めた領海12浬を尊重していませんし、分離壁の検問はエジプト管理門も含め常時通行さえ許していません、そして170万の市民が暮らすガザ地区は厳しい経済封鎖状態にある。これに反発する声がロケット弾を撃ち続け反撃されつつ継続するハマスへの支持にもつながる、という。
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経済封鎖が続くガザ地区の沖合を含む地中海では現在、イスラエルによる天然ガス田の開発が進み、これもガザ地区としては本来であればオスロ合意に基づく自国の資産であるものを盗まれているという焦眉の課題があります。ガスプラントへロケット弾攻撃を行っていますが、イスラエルはドイツから防空コルベットを導入開始、ガス開発を継続する構え。
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ガザ地区としては経済封鎖を解除する強い要望があるものの、イスラエルとしては現在でさえも秘密トンネルなどによりロケット弾の関連物資がガザ地区に持ち込まれており、事実ロケット弾となってエルサレムに撃ちこまれており、封鎖解除は論外で封鎖強化の姿勢です。本来ならば国連はPKO派遣を行うべきなのでしょうが危険が大きく不可能な状況だ。
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日本では、例えば自衛隊機からボルトが一つ脱落するだけでも猛抗議が寄せられる状況ですので、毎日数百発もロケット弾を撃ち込まれれば抗議では済まない状況となるのでしょうが、実際の状況はこうした通り、しかもパレスチナ紛争は余りに長期化しており、禍根を一度の合意とその履行で果たせない現実があります。ただ、これ以上死者が増えないよう、祈りましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本でも北朝鮮のミサイル実験のたびJアラートの空襲警報が鳴らされる、あれはもしもを考えるといやなものです。
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中東において、聖地エルサレムを巡るイスラエルによる臨時検問所の設置を巡り対立が激化、武装勢力ハマスによりイスラエルに向けパレスチナ自治区から10日以降600発以上のロケット弾が撃ち込まれました。これに対しイスラエルは砲撃と空爆で報復、イスラエルのネタニヤフ首相は地上軍のガザ侵攻を示唆し2014年以来の緊張状態となりました。
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アイアンドームとは、イスラエルが開発した防空システムです。ロケット弾を次々に撃ち落とす報道映像が流れていまして、不謹慎な表現ですがいにしえのインベーダーゲームの様子に似ています。我が国でもミサイルを迎撃する装備はイージス艦にペトリオットに03式中SAMとESSMに11式短SAM等数多ありますが、これらとは運用や性能は若干違う。
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SEA-RAM個艦防空ミサイル、アイアンドームと非常によく似ているのはこの護衛艦に搭載されているSEA-RAMかもしれません。アイアンドームの射程は15km程度、イージス艦のSM-3が有する1300kmと比較し短いものですが、アイアンドームは放物線を描いて落下する小さな迫撃砲弾やロケット弾、155mm砲弾などを空中で破壊することが可能です。
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イスラエルがアイアンドームを開発した背景には、パレスチナ自治区であるガザ地区からイスラム武装勢力により多数のロケット弾が撃ち込まれるためです。そしてこれらが狙うのは基地や艦艇ではなくイスラエルの住宅街、基地ならば退避した後に反撃ですが、住宅地ですと家屋が破壊されるだけでも住民には建直し費用で耐え難い損害にほかなりません。
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アイアンドームは射程は日本の短距離地対空ミサイルと比べても短いですが、20連発の発射装置3基とレーダー射撃統制装置を1セットとしまして、ロケット弾などを短時間で多数撃ち込まれた場合でも同時に発射装置3基から60発までを発射し迎撃する事が可能です。迎撃は住宅密集地や避難所など公共施設に向かう弾道のものを厳選し、空中破壊か別の場所に落下するように破壊する方式を執る。
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カッサムロケット、日本でも過激派が米軍基地等にロケット弾を撃つことはありますが手製であり発射跡が見つかることはあっても着弾形跡はほとんど無い、するとロケット弾を撃ち込まれたといってイスラエル軍が空爆で反撃する状況に不信感を覚えるかもしれませんが、武装勢力が用いるロケット弾は70mmから122mm程度のカッサムロケットやBM-21ロケットです。
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70mmロケット弾は陸上自衛隊のAH-1SやAH-64Dに搭載されているハイドラ70ロケット弾と同じ大きさでこれは装甲車などを破壊します。130mmロケット弾を陸上自衛隊は2002年まで75式自走多連装ロケットとして運用していましたが、加害半径は概ね35m四方、住宅などに命中すれば全壊は必至で倒壊もあり得、当然ですがこんなものを数百発も撃ちこまれると、非常に危険なのですね。
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アイアンドームにより迎撃できているならば地上軍侵攻は不要ではないか、こう反論されるかもしれません。しかし厳しい現実があるのです、アイアンドームが防護するのは都心部や重要施設だけ、相応にシステムは高価です。日本のミサイル防衛はイージスアショア2基により日本全土を防衛する構想ですが、イスラエルの経済力は有限、配備にも限りが。
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イスラエル国内ではアイアンドームが自分の街に配備されていないのは国の怠慢であるとして、アイアンドーム増強と配備を求める訴訟さえ起こっています。カッサムロケット攻撃が続けば、アイアンドームのミサイル払底も当然考えられるため、イスラエル政府としては地上軍侵攻によりロケット発射陣地を物理破壊する必要がある種必然となる構図に。
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ハマス。今回ロケット弾攻撃を行っているのはPLOパレスチナ解放機構を前身としパレスチナ自治政府と袂を分けた武装勢力です。そして武装勢力ですが、合法部門と武装闘争を行う非合法部門が在り、合法部門は人道支援やインフラ整備を地道に行い、ガザ地区では民衆支持を集める他、事実上ガザ政府として統治機構の役割を担う程、支持されています。
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パレスチナ自治区。しかしイスラエルに対して攻撃を加えるパレスチナ自治区についても、北方領土を占領されている日本国民の一人として、賛同は出来ないにしても考えている背景は判るのですね。ガザ地区は地中海に面しエジプトとも国境を接していますが、全域がイスラエルの建設した高さ10m近い分離壁に覆われ、港湾もイスラエルに海上封鎖される。
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イスラエル政府はガザ地区をパレスチナ自治政府樹立へのオスロ合意により認めた領海12浬を尊重していませんし、分離壁の検問はエジプト管理門も含め常時通行さえ許していません、そして170万の市民が暮らすガザ地区は厳しい経済封鎖状態にある。これに反発する声がロケット弾を撃ち続け反撃されつつ継続するハマスへの支持にもつながる、という。
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経済封鎖が続くガザ地区の沖合を含む地中海では現在、イスラエルによる天然ガス田の開発が進み、これもガザ地区としては本来であればオスロ合意に基づく自国の資産であるものを盗まれているという焦眉の課題があります。ガスプラントへロケット弾攻撃を行っていますが、イスラエルはドイツから防空コルベットを導入開始、ガス開発を継続する構え。
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ガザ地区としては経済封鎖を解除する強い要望があるものの、イスラエルとしては現在でさえも秘密トンネルなどによりロケット弾の関連物資がガザ地区に持ち込まれており、事実ロケット弾となってエルサレムに撃ちこまれており、封鎖解除は論外で封鎖強化の姿勢です。本来ならば国連はPKO派遣を行うべきなのでしょうが危険が大きく不可能な状況だ。
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日本では、例えば自衛隊機からボルトが一つ脱落するだけでも猛抗議が寄せられる状況ですので、毎日数百発もロケット弾を撃ち込まれれば抗議では済まない状況となるのでしょうが、実際の状況はこうした通り、しかもパレスチナ紛争は余りに長期化しており、禍根を一度の合意とその履行で果たせない現実があります。ただ、これ以上死者が増えないよう、祈りましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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