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【京都幕間旅情】城南宮,梅の名所は城南宮-今年も見事に咲き誇り香りを風に載せる裏鬼門と王城鎮護

2023-03-22 20:23:44 | 写真
■梅の名所は院政の基点
 観梅へ城南宮へ行って参りました。まずは梅園を探訪する前に参拝と歩み進めるのですが雨天予報は何処へという小春日和が迎えました。

 城南宮、梅の名所は城南宮、と謡ほどここの梅林は迫力があります。それは北野天満宮の梅園ほど広くないところに密集して植えられているために、いわば密集による迫力、というところでしょうか。ここはコロナの時代に防護マスクでさえも梅の香を運んでくれる。

 京都市伏見区中島鳥羽離宮町、地下鉄烏丸線の終点竹田駅から徒歩で十五分ほど、近鉄京都駅からも竹田駅が地下鉄と合流する路線となっていて、地下鉄烏丸線を運航する近鉄奈良行電車はここから近鉄線に入るのですが、この駅からバスでも参道へ行く事ができる。

 平安遷都に際し、根源神として崇敬される国常立尊を祀った社殿を造営したものといい、大国主命として親しまれる八千矛神と神功皇后としても知られる息長帯日売尊とともに祀った社殿とされます。ただ、若干の遷座を重ねていますので当時の遺構はありません。

 京都御所の裏鬼門、という位置関係にもあります社殿ですので方除けや厄除けとしても信仰されている社殿という。方角が大丈夫ならば交通安全にもご利益があるだろう、というなにか現代日本らしい精神で自動車による茅の輪くぐりが夏に行われる事でも知られる。

 本殿はじめ全体的に真新しいように見えますのは、式年遷宮は行っていないのですが1977年に火災に見舞われるということがありまして、その後の1978年に本殿を再建したために真新しく見えるという事情があるのです。そしてこの一帯は院政の聖地がありました。

 孝明天皇が攘夷祈願の行幸を行ったという幕末史の一こまがありますが、攘夷祈願はさておき鳥羽伏見の戦いではここが激戦地となり、ほぼすべて焼かれるという天皇さんの願いむなしく当地を焼いたのは同胞であった、そんな歴史の難しさも湛えているものです。

 尊王攘夷運動と激戦地、戦闘は口実があれば大義名分など吹き飛ぶと嘆息させられるのは、このあたりが院政の聖地であり、多くの上皇陵墓などが並びます、故にこんなところで激戦を繰り広げすことこそが尊王とは真逆の行動に見えるのですが、現実は厳しいもよう。

 承久の乱、尊王攘夷運動から600年以上さかのぼるところですが、城南宮はもう一つ、大きな日本の転換点の舞台ともなりました、時は鎌倉時代、まだ院政が執り行われていた時代でもあるのです。そもそも平安朝の終焉は院政による二重権力が背景にあったのですが。

 平安時代の院政は、上皇の政治介入は制度化されていない政治文化による政治への影響というものでしたが、結果的に二重権力状態を生み、干ばつや飢饉といった社会不安を醸成する有事への対応能力を欠くこととなったのは大きな問題でした、軍事力が必要となる。

 武家の台頭は、もともと開拓農民のような武家、彼らが槍ではなく長刀を長らく主力武器としたのは、元々槍は狩猟用具であり長刀は農工具の草刈り用鎌から転じた、草を刈るか人を薙ぎ払うか、という違いですが、有事へ対応を求め実力者が組織化し武家が生まれた。

 鎌倉幕府は、その一つの到達点といえるものですが、日本には院政と朝廷とともに鎌倉幕府という、京都と鎌倉に二つの王都が並ぶという、征夷大将軍という官位を授けたものの、一種の二重権力状態が発生しています。しかし、ここに終止符を打ったのが承久の乱だ。

 城南宮はその発端となった場所でもあり、いわばここで日本史は二重権力状態を脱し、幕末の動乱までは、もちろん騒擾状態は幾度も乗り越えねばならないのですが、制度的には安定期を迎えることとなる、そんな歴史を持つ社殿を梅花とともにめぐったわけです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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