北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:パトリアAMVは2両で一個小隊を運べお得!?自衛隊96式装輪装甲車後継候補

2021-05-20 20:01:16 | 先端軍事テクノロジー
■フィンランド装備の意外な実力
 96式装輪装甲車後継車両として三菱の機動装甲車と並び有力な候補にフィンランド製のAMVがあります。

 パトリアAMV,実は安価な装甲車とできるのではないか。これはパトリアAMVが乗員2名に加えて12名の人員を輸送できる、という点からです。小銃分隊の自衛隊の定員は7名乃至8名、つまりパトリアAMVは2両で3個分隊を輸送可能なのですね。1個分隊の輸送に軽装甲機動車を2両充て、1個小隊で7両の軽装甲機動車を必要としていると考えれば。

 自衛隊では現在、96式装輪装甲車に続く次期装輪装甲車を選定中です。これは三菱重工が16式機動戦闘車をもとに開発した機動装甲車、整備を共通化できる。そしてピラーニャ装輪装甲車として知られるシリーズの最新型であるLAV.6.0、またフィンランドのパトリアAMVが検討されており、AMVは試験車両2両が納入、厳しい評価試験が開始されている。

 96式装輪装甲車で3両必要な輸送力をパトリアAMVならば2両で対応できる。もちろん、それでもパトリアAMVの方がもともとの費用は高いという批判が成り立ちます、それほどに96式装輪装甲車は取得費用を圧縮することに成功していますから。しかし、装甲車としての性能は、特に防御力において圧倒的にAMVの方が有利でして、この点も魅力的です。

 ロソマクM-1,これはパトリアAMVをライセンス生産したポーランド仕様の装甲強化型ですが、2007年にアフガニスタンにて待ち伏せ攻撃を受け、車輪全損車体大破という大損害を被った事例がありました、先頭車は車内で負傷者もでています。しかし、驚くべき点はこの先頭車が受けた損害の大きさと戦死者が出なかった点にあるといえるかもしれない。

 ポーランド軍の車列は152mm砲弾を転用したIED簡易爆発物数発により、ここで車輪を破壊、動けなくなったところにRPG対戦車擲弾が同時射撃され、少なくとも先頭車に3発が命中、更に機関銃弾が200発以上、それも7.62mm徹甲弾を含め弾痕が確認されたのですが、防御力の高さからこの状況で戦死者が出なかったという。装輪装甲車でこれは凄い。

 正面装甲は標準型増加装甲で30mm機関砲弾耐弾を想定していまして、これはもともとフィンランド軍が隣接するロシア軍のBMP-2装甲戦闘車が搭載する30mm機関砲の攻撃を想定しているためで、大胆な傾斜装甲と乗員区画の後方配置により防御力を確保した。我が国周辺では30mm機関砲を運用する戦闘車両も多く、正面装甲30mm耐弾は重要です。

 AAV-7両用強襲車ほどではありませんが浮航能力があり。10km/hで航行可能に。日本で運用する場合は沿岸部や河川の場合に船舶免許が必要ですが、道路交通法では警察庁の見解として水没していても適用されるといい、要するに道路上であれば水陸両用機能は重宝します。変な話ですがこの法規制を想定し訓練することは強引であるが違法ではありません。

 パトリアAMVを自衛隊が採用し即応機動連隊へ大量配備するならば、水陸機動団と協同し、特に水陸機動団は重火力をAAV-7と重迫撃砲に依存していますので、海岸堡確保を水陸機動団に任せつつ、上陸第二波を即応機動連隊のパトリアAMVが担う、という運用も可能でしょう。実際正面装甲の防御力ではAAV-7よりもパトリアAMVの方が厚いのですから。

 パトリアAMV,先ず、国内で運用するには法的制約が大きい、車幅は道路運送車両法で特殊大型車両となるため、16式機動戦闘車のように一般道通行時は道路管理者への届け出が必要です、つまり演習場近くの駐屯地は別として、千僧や信太山、守山や金沢に久居といった駐屯地に配備しますと、演習場への移動は面倒にはなります、この平時運用制約はある。

 エンジンはスカニア製ですので、自衛隊が導入するならば三菱製に切り替え整備性を確保する必要性はあるかもしれません。もっとも、パトリアAMVはライセンス生産の事例がポーランドのロソマクと南アフリカのバジャーということで豊富に実例がありますので、小松でも三菱でも日立でもライセンス生産か現地合弁会社で国内生産は実際可能でしょう。

 16式機動戦闘車派生の機動装甲車の方が整備互換性があるのではないか、こう反論されそうですが、即応機動連隊に関する際にはこう一概にも言えません、それは普通科連隊の重迫撃砲中隊とは異なり、火力支援中隊という特科部隊の支援を受けられない状況での火力戦闘部隊を有しているためです。すると、パトリアNEMOという自走迫撃砲システムが。

 NEMOは自動装填方式の120mm迫撃砲システムですが驚くべき事に行進間射撃が可能となっています、間接照準射撃を行う火砲は標定され反撃されないよう素早い陣地変換が常々求められ、その時間短縮に心血を注いでいましたが、行進間射撃が出来れば、もう敵砲兵は怖くないこれは若干言い過ぎですが、生存性はかつて無いほど高いといえましょう。

 火力支援中隊にNEMOを配備するならば、いや実はNEMOは砲塔システムで、16式機動戦闘車にも搭載できなくはないのですが、メーカーが同じパトリア社ということでAMVにより試験が実施され、行進間射撃の試験もこのAMVにて行われています。すると、普通科中隊と火力支援中隊で車両の統合化が可能となり、機動装甲車に拘る必要はなくなります。

 いい装備なのだけれど値段がね、こういう反論に対しての決定打が、でも2両で一個小隊運べますよ、となるようにも。パトリアAMVは後部兵員室が13平方米もあり広く、ポーランド軍では迫撃砲小隊も対戦車小隊も活用しています。一個中隊全体で考えますと、車両単体費用は高くとも防衛力整備計画全般では、それほど顕著に影響しないといえます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都幕間旅情】知恩院(華頂... | トップ | 令和三年度五月期 陸海空自... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
面白い話と思います。 (ドナルド)
2021-05-21 23:10:51
しかし、パトリアAMVは三菱MAVより小さいので、
・AMVの12人のりバージョンは内部が狭い
・MAVでも同じように12人乗りは可能?
のどちらか(あるいは両方)なのだと思います。

ここで思うのは、いずれにせよ「乗員3 + 8 人乗りで大きめのRWSをもつバージョン」と、「乗員1 + 12人乗りのバージョン」の2種類を調達してはどうか、ということです。

前者は「内部に多くの弾薬や個人装備を搭載し、16式機動戦闘車や戦車に帯同して最前線でRWSで援護射撃をしつつ下車歩兵を下ろす機械化歩兵部隊用」、後者が「弾薬や個人装備はトレーラーを引いたり、屋上に乗せたりして、とにかく敵榴弾砲の制圧射撃に耐えて移動し、やや後方で歩兵を下車させる装甲歩兵輸送車部隊用」のイメージです。

歩兵小隊は3個分隊に加え、小隊本部がありますし、狙撃班や砲兵の前進観測班などが帯同すると思います。故に8x3= 24人を登場させるだけでは、歩兵小隊を輸送できません。

そこで「+8人乗り」の車両4両で機械化歩兵小隊を編成しつつ、「+12人乗り」の車両3両で装甲化歩兵小隊を編成してはどうでしょう?
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

先端軍事テクノロジー」カテゴリの最新記事