■突然!舞鶴造船業廃止の衝撃
舞鶴基地を探訪しますと基地の北吸岸壁対岸に造船所が広がっている情景が日常となっています。舞鶴最大の製造業という。
舞鶴市のユニバーサル造船が今治造船に統合された際には、なるほどそれであの方が舞鶴へ戻られていたのか、と考えてしまったのですが、さらに驚いたのはユニバーサル造船舞鶴工場は今後新造を行わず、艦船整備に特化するという。これは舞鶴市には悲報のほかありません、日立造船の時代から護衛艦に掃海母艦、輸送艦も砕氷艦も建造した名門です。
今治造船の厳しい決断ですが、しかし、船舶需要の低下、特に安価な船舶造船需要が中国と韓国へシフトしているという。韓国のような政府支援があるわけでもなく、中国のような安価な人材もない、日本の造船業は苦境にあります、が、造船業が壊滅的な欧州や北米に比べればまだ産業として残り、8万の労働力が造船業界を支えています。貴重なものだ。
いずも型護衛艦建造費1100億円。日本の造船能力が高い水準で維持されていると象徴できるのは、満載排水量27000tの全通飛行甲板型艦艇を比較的安価に、ジェラルドフォード級原子力空母の十分の一という建造費です。また3900t型護衛艦、満載排水量で5000tを超える大型水上戦闘艦も500億円以下で量産できる、国力と工業力は非常に恵まれている。
2001年2月22日、鹿屋航空基地より哨戒飛行中であった第1航空群のP-3C哨戒機は異様な船団、この海域では見慣れない船団を確認する。中国海軍はこの日、沖縄本島北北西沖に6隻の艦隊を航行させました、単なる航行訓練ともいえるのですが、海上自衛隊によれば6隻の内訳は玉亭型戦車揚陸艦など揚陸艦4隻、海南型哨戒艇2隻からなるものでした。
21世紀に入ってばかりの中国艦隊出現ですが、これは歴史的な転換点でした、何故ならば中国海軍揚陸艦が日本近海で確認されたのは、この2001年2月22日が初めてのことだったのです。当時中国海軍は江把型フリゲイトなど小型艦が主力という牧歌的なもので下が、そしてこの後、中国海軍は大規模な海軍拡張を本格化させ、もうまもなく、20年となる。
おおすみ型輸送艦、海上自衛隊には優れた輸送艦が3隻配備されています、しかし、その輸送能力の見積もりはこの中国海軍による南西諸島への脅威以前のものであり、冷戦時代に北海道への急速な増援を念頭とし、陸上自衛隊は一つの目安として一個連隊戦闘団2000名の同時輸送能力を求めていました。しかし、現代と冷戦時代では運用要求の根本が違う。
北海道への増援、冷戦時代に北海道には陸上自衛隊4個師団、すべて機械化され内一個師団は機甲師団、そして特科団に高射特科団に戦車群が北海道を防衛しており、ここに増援を行う、という前提でした。一方で南西諸島防衛を考えるならば、南西諸島には沖縄本島に1個旅団、奄美大島と宮古島に、増強普通科中隊というべき警備隊が置かれるのみです。
自衛隊の海上機動能力を根本から認識を改めねばならないのではないか、特に作戦機動と業務輸送、この二つに分けて。北海道のように基盤がある地域に増強部隊を送るのではなく、南西諸島の場合は無数にある離島のなかから根本的に初動部隊を展開させねばなりません。すると求められる輸送力が根本から不足する、こうした厳しい実状があるのですね。
カーフェリー。自衛隊は政府傭船として高速カーフェリーはくおう、を運用中です。なるほどこの輸送力は特筆すべきものですが、大型フェリーが入港できる埠頭と港湾設備が整備され、受け入れられる事が大前提です。すると、揚陸艦がどうしても必要となる、自衛隊式に呼称するならば輸送艦艇、となりますか。おおすみ型輸送艦だけでは十分でない。
戦車揚陸艦LSTやドック型揚陸艦LSD,輸送艦艇といいますとこうしたものを連想するのですが、実はこれらは第二次世界大戦中に、私たちが港や造船所で日常的に目にするものを軍用に改良し転用したもので建造されています、当然といえば当然、戦時であるために変な新兵器よりは既存のものを改良し対応するものは利用できるものはすべて使う基本に。
LST戦車揚陸艦はもともと浅喫水の中型小型タンカーの設計を流用したものですし、LSDドック型揚陸艦は浮きドックの設計を大胆に改造したものです、従ってLST戦車揚陸艦については全長100m程度の内航タンカーを建造する造船所や浮きドックを建造できるメーカーであれば、LSDを建造可能、十分輸送艦艇を建造する能力がある、といえるのですね。
もちろん、ステルス性能とかデータリンク性能について考えれば専門的な技術は必要となりますが、敵前上陸をおこなう作戦輸送ではなく、事態緊迫化に先だって部隊を事前展開させる業務輸送であれば、それほど専門技術は必要ではありません。すると、日本国内の建造技術を最大限活用するならば、安価に輸送艦艇を増強する事は、充分に可能でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
舞鶴基地を探訪しますと基地の北吸岸壁対岸に造船所が広がっている情景が日常となっています。舞鶴最大の製造業という。
舞鶴市のユニバーサル造船が今治造船に統合された際には、なるほどそれであの方が舞鶴へ戻られていたのか、と考えてしまったのですが、さらに驚いたのはユニバーサル造船舞鶴工場は今後新造を行わず、艦船整備に特化するという。これは舞鶴市には悲報のほかありません、日立造船の時代から護衛艦に掃海母艦、輸送艦も砕氷艦も建造した名門です。
今治造船の厳しい決断ですが、しかし、船舶需要の低下、特に安価な船舶造船需要が中国と韓国へシフトしているという。韓国のような政府支援があるわけでもなく、中国のような安価な人材もない、日本の造船業は苦境にあります、が、造船業が壊滅的な欧州や北米に比べればまだ産業として残り、8万の労働力が造船業界を支えています。貴重なものだ。
いずも型護衛艦建造費1100億円。日本の造船能力が高い水準で維持されていると象徴できるのは、満載排水量27000tの全通飛行甲板型艦艇を比較的安価に、ジェラルドフォード級原子力空母の十分の一という建造費です。また3900t型護衛艦、満載排水量で5000tを超える大型水上戦闘艦も500億円以下で量産できる、国力と工業力は非常に恵まれている。
2001年2月22日、鹿屋航空基地より哨戒飛行中であった第1航空群のP-3C哨戒機は異様な船団、この海域では見慣れない船団を確認する。中国海軍はこの日、沖縄本島北北西沖に6隻の艦隊を航行させました、単なる航行訓練ともいえるのですが、海上自衛隊によれば6隻の内訳は玉亭型戦車揚陸艦など揚陸艦4隻、海南型哨戒艇2隻からなるものでした。
21世紀に入ってばかりの中国艦隊出現ですが、これは歴史的な転換点でした、何故ならば中国海軍揚陸艦が日本近海で確認されたのは、この2001年2月22日が初めてのことだったのです。当時中国海軍は江把型フリゲイトなど小型艦が主力という牧歌的なもので下が、そしてこの後、中国海軍は大規模な海軍拡張を本格化させ、もうまもなく、20年となる。
おおすみ型輸送艦、海上自衛隊には優れた輸送艦が3隻配備されています、しかし、その輸送能力の見積もりはこの中国海軍による南西諸島への脅威以前のものであり、冷戦時代に北海道への急速な増援を念頭とし、陸上自衛隊は一つの目安として一個連隊戦闘団2000名の同時輸送能力を求めていました。しかし、現代と冷戦時代では運用要求の根本が違う。
北海道への増援、冷戦時代に北海道には陸上自衛隊4個師団、すべて機械化され内一個師団は機甲師団、そして特科団に高射特科団に戦車群が北海道を防衛しており、ここに増援を行う、という前提でした。一方で南西諸島防衛を考えるならば、南西諸島には沖縄本島に1個旅団、奄美大島と宮古島に、増強普通科中隊というべき警備隊が置かれるのみです。
自衛隊の海上機動能力を根本から認識を改めねばならないのではないか、特に作戦機動と業務輸送、この二つに分けて。北海道のように基盤がある地域に増強部隊を送るのではなく、南西諸島の場合は無数にある離島のなかから根本的に初動部隊を展開させねばなりません。すると求められる輸送力が根本から不足する、こうした厳しい実状があるのですね。
カーフェリー。自衛隊は政府傭船として高速カーフェリーはくおう、を運用中です。なるほどこの輸送力は特筆すべきものですが、大型フェリーが入港できる埠頭と港湾設備が整備され、受け入れられる事が大前提です。すると、揚陸艦がどうしても必要となる、自衛隊式に呼称するならば輸送艦艇、となりますか。おおすみ型輸送艦だけでは十分でない。
戦車揚陸艦LSTやドック型揚陸艦LSD,輸送艦艇といいますとこうしたものを連想するのですが、実はこれらは第二次世界大戦中に、私たちが港や造船所で日常的に目にするものを軍用に改良し転用したもので建造されています、当然といえば当然、戦時であるために変な新兵器よりは既存のものを改良し対応するものは利用できるものはすべて使う基本に。
LST戦車揚陸艦はもともと浅喫水の中型小型タンカーの設計を流用したものですし、LSDドック型揚陸艦は浮きドックの設計を大胆に改造したものです、従ってLST戦車揚陸艦については全長100m程度の内航タンカーを建造する造船所や浮きドックを建造できるメーカーであれば、LSDを建造可能、十分輸送艦艇を建造する能力がある、といえるのですね。
もちろん、ステルス性能とかデータリンク性能について考えれば専門的な技術は必要となりますが、敵前上陸をおこなう作戦輸送ではなく、事態緊迫化に先だって部隊を事前展開させる業務輸送であれば、それほど専門技術は必要ではありません。すると、日本国内の建造技術を最大限活用するならば、安価に輸送艦艇を増強する事は、充分に可能でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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その他沖縄・対馬・佐渡・小笠原・五島列島等
数々の島があるのに揚陸艦やフェリーの整備に発足以来力を入れていなかった。
これは政府と防衛省の怠慢であると考えます。
東日本大震災で海上輸送能力の欠如を思い知らされてから10年程たちますが、なんと輸送艦・揚陸艇は1隻も増えていません。
とんでもない無策だと思います。
少ない防衛予算の中で正面装備だけ増やした結果でしょうね。
今後は民間船舶の借り上げを大幅に増やし、
強襲揚陸艦と大型中型小型輸送艦を多数配備すべきですね。
ありがとうございます。重要な議論と思います。
ですが、揚陸艦ではないと思います。
日本の島々の多くは護岸がしっかりしており、揚陸艦のビーチングは難しい。実際できたとしても、ビーチングによる揚陸には結構時間がかかります(車両もそのままではスタックスして終わりです)。しかも揚陸艦は船型上非常に遅く、航洋性も低い。海が荒れたら速力が出ません。これが致命的です。
一方で漁港まで含まれば、ほぼ全ての島に一定レベルの港が複数あります。これを使うべきです。
ありうるとすると以下の2種類ではないでしょうか?
1:小型のRoRo輸送船。というか小型フェリーに長めのランプをつけたものですね。容易に20ktが出せ、漁港に車両と人員を降ろせるもの。1000tを程度の小さな船でも1-2日間の短い航海なら余裕で1-2個中隊を物資もろとも運べます。
2:高速の戦闘揚陸艇。それこそスウェーデンのCB90のようなもの。車両ではなく人間であれば、護岸工事された海岸にも上陸できます。海がないでいる間に一気に輸送する。
「1」は100隻ほど用意し、その半数は海自の予備役を兼ねる「小規模島嶼輸送業務協会」でも作って、平時は収容人数20%くらい(ガラガラでよい)でフェリーとして色々な島々を練り歩き、孤島の交通を守る任務を果たす。交通さえしっかりしていれば、まあ島嶼の社会は守れるのではないでしょうか。
「2」は陸自に大量に装備すれば良い。そもそも兵員の輸送でなくとも、弾薬輸送に使える。陸自の兵站軽視はお話にならないレベルなので、「2」の半数くらいと合わせて全部陸自の管轄にしてはどうでしょう?
「1」の残り半数と「2」を使って、日頃から陸自配下で兵站を担わせる。例えば「1000t輸送船 2隻と、戦闘揚陸艇10隻」で「水域輸送大隊」を編成、人員100名で二佐を司令にし、これを3つ集めて定員300名の「水域輸送群」として一等陸佐をあてがう。これを4つと警備の中隊、合計1500名ほどで陸将を司令とする「水域輸送団」にすれば良い。代わりに歩兵師団を旅団にして、陸将のポストを維持しつつ、戦闘職種の編成を世界標準に。
#そもそも兵站こそ軍隊の根幹であり、一見見栄えのする戦闘職種と比べて、少なくとも身分上は待遇をよくすべきでしょうし。
などと妄想してみました。
陸での戦いに必要な船は、海での戦いと別枠にしたら自然と輸送艦や連絡船が増え無いかな?