■週報:世界の防衛,最新11論点
今回は砲兵装備に重点を置いて、ここに装輪装甲車の話題などと共に最新の防衛情報を見てゆきましょう。
アメリカ陸軍では2023年までにERCA拡張型射程火砲を実用化し旧式化が深刻となっている陸軍火力戦闘装備体系の近代化を検討中とされるが10月に入りこの進捗状況事業評価書が開示された。ERCA拡張型射程火砲はM-109A7自走榴弾砲の39口径砲を最新型の58口径長砲身155mm砲に置換え、改良弾薬により70kmの長射程を実現する事が狙い。
ERCA拡張型射程火砲は現在カリフォルニア州国立訓練センターにより評価試験中だ。アメリカ陸軍ではXM-2001クルセイダー自走榴弾砲開発の中止に伴い未だに1960年代のM-109自走榴弾砲が野砲体系の頂点となっており、改修は進められているものの主砲の砲身は39口径でしかなく、独仏日韓瑞典の52口径長砲身砲と比較し文字通り後塵を拝する。
■高性能!アーチャー自走榴弾砲
米軍も試験、自衛隊の特科運用を考えれば速射性と陣地変換の速さから19式装輪自走榴弾砲よりもこちらの方が向いている、大型だが方面特科連隊に集約するならば尚更に。
イギリスのBAEシステムズ社はスウェーデン製アーチャー装輪自走榴弾砲に関する新しい広報動画を10月に公開しました。アーチャーはスウェーデンンボフォース社が同社製FH-77榴弾砲を原型に52口径へ長砲身化した上で同社製バンドカノン自走榴弾砲に採用された自動装填装置を更に改良した自動装填機構を有し、装輪自走砲としては最強といえる。
アーチャー自走榴弾砲の広報動画ではFDC火力調整所より射撃命令を受け行進中の状態から陣地進入を経て初弾射撃まで30秒という短時間を展示し、500mの陣地変換から6発の効力射を経て再度の陣地変換まで120秒、またエクスカリバー精密誘導砲弾の投射は装甲キャビンから砲手が数回のクリックだけで照準できる点など、迅速性を強調していました。
■アメリカのPrSMミサイル
今あるミサイル、499kmの射程を1500kmに伸ばすだけ、といわれるとなにか”偏差値30から始める東大入試”という本を思い出す。
プレジションストライクミサイルPrecision-Strike-Missile/PrSM。アメリカ陸軍は中露の中距離ミサイルシステムとの火力ギャップを克服する為に2023年までに射程500kmから1500kmの中距離ミサイルシステムを模索中でこの程中間報告書が出された。現在最有力のものはロッキードマーティンが開発するPrSMだが射程は499kmに抑えられている。
中距離ミサイルシステムはアメリカのINF中距離核戦力全廃条約離脱を受け既に開発されているロシアや中国の中距離ミサイルシステムへ対抗する目的があり、一方でPrSMはロッキードマーティン社製、MLRS用に四十年近く前に開発されたものだ。射程延伸には課題が残るがMLRSやHIMRSロケットシステムより投射可能、開発リスクは最も少ない。
■マルダー機関砲FCSの改良事業
プーマ重装甲戦闘車の数が揃わないドイツではマルダーの改修が行われる、が、自衛隊の73式装甲車と違い機関砲を搭載した設計はやはり寿命を延ばしています。
ドイツ国防省は10月7日、旧式化と老朽化が進むマルダー装甲戦闘車の更なる改修に2700万ユーロの予算を組む事としました。現在ドイツ連邦軍に配備されているマルダー装甲戦闘車は244両、2700万ユーロの予算は20mm機関砲用の新型熱線暗視装置換装に用いられます。この新型照準装置は2000型遠隔操作銃搭に採用されたものと同型のもの。
マルダー装甲戦闘車は1971年から配備が開始され2100両が生産、間もなく運用開始50年となります、熱線暗視装置は既に搭載されていますが何れも旧式化が進み予備部品が枯渇した状況です。ドイツ連邦軍では後継にプーマ重装甲戦闘車の配備を急いでいますが一両1250万ドルと高価で2023年までに40両しか揃わずマルダー運用はまだまだ続きます。
■ジェネシス全電気駆動装甲車
自衛隊の装甲車も将来的に電気駆動を考えねばレーザー兵器などとの拡張性に問題が出るのでしょうか、ドイツは此処で野心的実証車を出した。
ドイツのFFHフレンスブルガー自動車工業社は10月、革新的な全電気駆動装甲車両ジェネシスを発表しました。これは強烈な印象を与えるブルーの八輪式装輪装甲車というコンセプト車輛であり、コングスベルク社製30mm機関砲塔を搭載しています。全電気駆動の通りハイブリッド駆動式を採用しリチウム電池により40km/hにて150kmを機動します。
ジェネシスは現在ドイツ連邦軍に大量配備が開始されたボクサー重装輪装甲車の後継をも視野にモジュラー車体構造を採用しており、兵員輸送型では乗員3名と兵員10名を輸送可能である。外見は少々玩具のような印象だが基本重量25t、増加装甲により40tまでの重装甲化が可能といい、また200kwディーゼル発電機にいぇ各種電源として機能する設計です。
ボクサー重装輪装甲車の後継ともなり得る車両は、全長尾8.25m、全幅3.20m、砲塔を含む全高は3.50mで車体全高は2.40mです画期的なインホイールドモーター構造により駆動系を簡略化出来、車高を抑え防御力を高める、従来の装輪車の車高増大という弱点を払拭している点が新しい。ただ、現時点でジェネシスは技術実証車、量産計画はありません。
■豪州陸軍ボクサー訓練開始
これこそ偵察戦闘大隊に必要、自衛隊もボクサーとCV-90を500両づつ揃えられるような師団と旅団の改編を行わねば第一線火力の強化と機動力の近代化に後れを取ると切実に感じる。
オーストラリア陸軍はドイツ製ボクサー重装輪装甲車の部隊訓練を開始しました。オーストラリア陸軍は3万5000名規模ですが、大胆な装甲化計画を推進しておりLAND-400フェーズ2計画としてドイツよりボクサー重装輪装甲車211両の取得を決定しており、既に2018年に21億ユーロにてラインメタル社との間で取得契約が成立、引き渡しが進む。
ボクサー重装輪装甲車の内、今回訓練が開始されたのは砲塔を有さない汎用型であるが、オーストラリア軍ではボクサーを25mm機関砲を備えたASLAV軽装甲車の後継と位置づけており、211両のうち133両は30mm機関砲を搭載した偵察用のものとなる。これとは別にオーストラリア陸軍ではM-113装甲車後継となる装甲戦闘車選定作業が進んでいる。
■装甲車高騰に悩むブルガリア
自衛隊も似たようなものなのですが1990年代の安くて手軽な装輪装甲車は今やどこにもなく価格高騰に各国は悩んでいます。
ブルガリア軍は次期装甲車としてパトリアAMV装輪装甲車かモワクピラーニャ5装輪装甲車150両を導入計画であるが、価格面の折り合いがつかず難航が伝えられています。当初ブルガリア政府はBTR-80装甲車の後継として6億ドル程度を想定していましたが、競合車種はともに8億7000万ドル程度を要する見通しであり、折り合いがつきそうにない。
計画では合弁企業を設置し10年間の整備協力等を想定していましたが、ブルガリア政府のアナトリイベリチコフ国防副大臣、陸軍司令官ミハイルポポフ少将は現在、アメリカとの防衛協力強化を進めており、上記の欧州製装輪装甲車が取得費用で折り合いがつかない場合には、ストライカー等のアメリカ製装甲車直輸入に切り替える可能性も示唆しています。
■中国が15式軽戦車派生自走砲
自衛隊の16式機動戦闘車は構造上75式自走榴弾砲の砲塔が重量でも全幅でも搭載可能と思いまして火力戦闘車は本来こうしたものであるべきとおもうのですが、こういう行動は中国や北朝鮮は早い。
中国人民解放軍は15式軽戦車車体を応用した新型自走榴弾砲を開始しているとされるが、このほど中国国内SNS上に試験車両と思われる写真が投稿され話題となっている。15式軽戦車はチベット地域等山間部の錯綜地形運用に適合させるべく最近開発されたきわめて強力な軽戦車であり、戦闘重量は36tと陸上自衛隊の74式戦車の戦闘重量38tに迫るもの。
15式軽戦車は既に車体部分がVN-17重装甲戦闘車として戦闘重量30tと30mm機関砲を搭載する強力な派生型が開発されているが、今回開発されている自走榴弾砲は39口径程度の155mm榴弾砲を搭載し、推測値では射程は40kmに達すると考えられる。新型自走榴弾砲の完成時期などについては明確な情報はないが、汎用車両体系が構築されつつある。
■中国版ハンヴィーの自走砲化
中国軍は思い切った諸兵科連合部隊へ舵を切っていますが軽歩兵部隊用の簡易自走砲の話題です、自衛隊も105mm砲を再認識すべきでしょうか。
中国人民解放軍は新型のSPH装輪自走榴弾砲試験を開始した。これは猛士六輪型CTLを原型とした車体に122mm榴弾砲を搭載したもので、同じく六輪型CTL派生型の弾薬車とともに運用する。猛士とは中国東風汽車集団有限公司がアメリカのハンヴィー高機動車を原型として90年代にコピーした車両で独自の進化を辿った。CTLは軽装甲車型である。
SPH装輪自走榴弾砲は諸兵科連合部隊の砲兵中隊へ配備される見込み。人民解放軍は伝統的な聯隊を基幹とした編成を2010年代に大きく改編し諸兵科連合部隊による遠征力に富んだ部隊のパッケージ化を進めている。SPH装輪自走榴弾砲は駐鋤を設置し砲員が車外に展開させ運用する簡易自走砲ではあるが、機動力が高く、装輪装甲車部隊の能力を高めよう。
■ポーランド軍の対戦車装甲車
自走対戦車ミサイルといいますと難し設計の印象がありますが可搬式ミサイルが発達した昨今は専用車両よりも汎用装甲車に可搬式ミサイルを搭載するものが多くみられる。
ポーランド陸軍は自走対戦車ミサイル車両として新たに国産ロソマク装輪装甲車を60両、自走対戦車ミサイル車両とする。各種派生型が開発されるロソマク装甲車だがロソマクSが基本車輛として採用、搭載ミサイルはイスラエル製スパイク対戦車ミサイルであり、車体にはマルチバンド無線機を搭載、データリンクにより対戦車戦闘を効率化させるという。
スパイク対戦車ミサイルは車体に発射装置を搭載するのではなく携帯式発射装置2基を搭載し、射撃時には下車戦闘により歩兵が発射装置を展開する。スパイクミサイルの型式は発表されていない。この取得契約についてミサイル本体を含まない車両調達だけで1億500万ズロチ、日本円に換算して30億円が投じられるとの事、配備は2022年に開始される。
■トルコ軍新型両用装甲車
エーゲ海を挟んでギリシャと対立するトルコは新型の水陸両用車を開発中です、アメリカ製AAV-7後継を探す各国はどう見るのでしょうか。
トルコ軍は九月より最新型のZAHA-MAV水陸両用装甲車の静海面上試験を開始した。これはトルコ防衛産業FNSSが2017年より開発を進めている装甲車で船型車体前部を有する装軌式車体にウォータージェットを搭載し水上を7ノットで航行する装甲車両、乗員3名で兵員21名を輸送する他、トルコ製遠隔操作式銃搭には重機関銃と擲弾銃を搭載する。
ZAHA-MAV水陸両用装甲車の試験ではドック内に海水を入れ、浮力試験と海上での転覆時に乗員の安全性などを試験している。トルコは現在、第一次世界大戦戦時賠償としてギリシャに割譲されたエーゲ海島嶼部やキプロス島問題でギリシャやフランス、イタリアと対立が先鋭化し、水陸両用装甲車を求めており、トルコ軍は最低でも27両を導入するという。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は砲兵装備に重点を置いて、ここに装輪装甲車の話題などと共に最新の防衛情報を見てゆきましょう。
アメリカ陸軍では2023年までにERCA拡張型射程火砲を実用化し旧式化が深刻となっている陸軍火力戦闘装備体系の近代化を検討中とされるが10月に入りこの進捗状況事業評価書が開示された。ERCA拡張型射程火砲はM-109A7自走榴弾砲の39口径砲を最新型の58口径長砲身155mm砲に置換え、改良弾薬により70kmの長射程を実現する事が狙い。
ERCA拡張型射程火砲は現在カリフォルニア州国立訓練センターにより評価試験中だ。アメリカ陸軍ではXM-2001クルセイダー自走榴弾砲開発の中止に伴い未だに1960年代のM-109自走榴弾砲が野砲体系の頂点となっており、改修は進められているものの主砲の砲身は39口径でしかなく、独仏日韓瑞典の52口径長砲身砲と比較し文字通り後塵を拝する。
■高性能!アーチャー自走榴弾砲
米軍も試験、自衛隊の特科運用を考えれば速射性と陣地変換の速さから19式装輪自走榴弾砲よりもこちらの方が向いている、大型だが方面特科連隊に集約するならば尚更に。
イギリスのBAEシステムズ社はスウェーデン製アーチャー装輪自走榴弾砲に関する新しい広報動画を10月に公開しました。アーチャーはスウェーデンンボフォース社が同社製FH-77榴弾砲を原型に52口径へ長砲身化した上で同社製バンドカノン自走榴弾砲に採用された自動装填装置を更に改良した自動装填機構を有し、装輪自走砲としては最強といえる。
アーチャー自走榴弾砲の広報動画ではFDC火力調整所より射撃命令を受け行進中の状態から陣地進入を経て初弾射撃まで30秒という短時間を展示し、500mの陣地変換から6発の効力射を経て再度の陣地変換まで120秒、またエクスカリバー精密誘導砲弾の投射は装甲キャビンから砲手が数回のクリックだけで照準できる点など、迅速性を強調していました。
■アメリカのPrSMミサイル
今あるミサイル、499kmの射程を1500kmに伸ばすだけ、といわれるとなにか”偏差値30から始める東大入試”という本を思い出す。
プレジションストライクミサイルPrecision-Strike-Missile/PrSM。アメリカ陸軍は中露の中距離ミサイルシステムとの火力ギャップを克服する為に2023年までに射程500kmから1500kmの中距離ミサイルシステムを模索中でこの程中間報告書が出された。現在最有力のものはロッキードマーティンが開発するPrSMだが射程は499kmに抑えられている。
中距離ミサイルシステムはアメリカのINF中距離核戦力全廃条約離脱を受け既に開発されているロシアや中国の中距離ミサイルシステムへ対抗する目的があり、一方でPrSMはロッキードマーティン社製、MLRS用に四十年近く前に開発されたものだ。射程延伸には課題が残るがMLRSやHIMRSロケットシステムより投射可能、開発リスクは最も少ない。
■マルダー機関砲FCSの改良事業
プーマ重装甲戦闘車の数が揃わないドイツではマルダーの改修が行われる、が、自衛隊の73式装甲車と違い機関砲を搭載した設計はやはり寿命を延ばしています。
ドイツ国防省は10月7日、旧式化と老朽化が進むマルダー装甲戦闘車の更なる改修に2700万ユーロの予算を組む事としました。現在ドイツ連邦軍に配備されているマルダー装甲戦闘車は244両、2700万ユーロの予算は20mm機関砲用の新型熱線暗視装置換装に用いられます。この新型照準装置は2000型遠隔操作銃搭に採用されたものと同型のもの。
マルダー装甲戦闘車は1971年から配備が開始され2100両が生産、間もなく運用開始50年となります、熱線暗視装置は既に搭載されていますが何れも旧式化が進み予備部品が枯渇した状況です。ドイツ連邦軍では後継にプーマ重装甲戦闘車の配備を急いでいますが一両1250万ドルと高価で2023年までに40両しか揃わずマルダー運用はまだまだ続きます。
■ジェネシス全電気駆動装甲車
自衛隊の装甲車も将来的に電気駆動を考えねばレーザー兵器などとの拡張性に問題が出るのでしょうか、ドイツは此処で野心的実証車を出した。
ドイツのFFHフレンスブルガー自動車工業社は10月、革新的な全電気駆動装甲車両ジェネシスを発表しました。これは強烈な印象を与えるブルーの八輪式装輪装甲車というコンセプト車輛であり、コングスベルク社製30mm機関砲塔を搭載しています。全電気駆動の通りハイブリッド駆動式を採用しリチウム電池により40km/hにて150kmを機動します。
ジェネシスは現在ドイツ連邦軍に大量配備が開始されたボクサー重装輪装甲車の後継をも視野にモジュラー車体構造を採用しており、兵員輸送型では乗員3名と兵員10名を輸送可能である。外見は少々玩具のような印象だが基本重量25t、増加装甲により40tまでの重装甲化が可能といい、また200kwディーゼル発電機にいぇ各種電源として機能する設計です。
ボクサー重装輪装甲車の後継ともなり得る車両は、全長尾8.25m、全幅3.20m、砲塔を含む全高は3.50mで車体全高は2.40mです画期的なインホイールドモーター構造により駆動系を簡略化出来、車高を抑え防御力を高める、従来の装輪車の車高増大という弱点を払拭している点が新しい。ただ、現時点でジェネシスは技術実証車、量産計画はありません。
■豪州陸軍ボクサー訓練開始
これこそ偵察戦闘大隊に必要、自衛隊もボクサーとCV-90を500両づつ揃えられるような師団と旅団の改編を行わねば第一線火力の強化と機動力の近代化に後れを取ると切実に感じる。
オーストラリア陸軍はドイツ製ボクサー重装輪装甲車の部隊訓練を開始しました。オーストラリア陸軍は3万5000名規模ですが、大胆な装甲化計画を推進しておりLAND-400フェーズ2計画としてドイツよりボクサー重装輪装甲車211両の取得を決定しており、既に2018年に21億ユーロにてラインメタル社との間で取得契約が成立、引き渡しが進む。
ボクサー重装輪装甲車の内、今回訓練が開始されたのは砲塔を有さない汎用型であるが、オーストラリア軍ではボクサーを25mm機関砲を備えたASLAV軽装甲車の後継と位置づけており、211両のうち133両は30mm機関砲を搭載した偵察用のものとなる。これとは別にオーストラリア陸軍ではM-113装甲車後継となる装甲戦闘車選定作業が進んでいる。
■装甲車高騰に悩むブルガリア
自衛隊も似たようなものなのですが1990年代の安くて手軽な装輪装甲車は今やどこにもなく価格高騰に各国は悩んでいます。
ブルガリア軍は次期装甲車としてパトリアAMV装輪装甲車かモワクピラーニャ5装輪装甲車150両を導入計画であるが、価格面の折り合いがつかず難航が伝えられています。当初ブルガリア政府はBTR-80装甲車の後継として6億ドル程度を想定していましたが、競合車種はともに8億7000万ドル程度を要する見通しであり、折り合いがつきそうにない。
計画では合弁企業を設置し10年間の整備協力等を想定していましたが、ブルガリア政府のアナトリイベリチコフ国防副大臣、陸軍司令官ミハイルポポフ少将は現在、アメリカとの防衛協力強化を進めており、上記の欧州製装輪装甲車が取得費用で折り合いがつかない場合には、ストライカー等のアメリカ製装甲車直輸入に切り替える可能性も示唆しています。
■中国が15式軽戦車派生自走砲
自衛隊の16式機動戦闘車は構造上75式自走榴弾砲の砲塔が重量でも全幅でも搭載可能と思いまして火力戦闘車は本来こうしたものであるべきとおもうのですが、こういう行動は中国や北朝鮮は早い。
中国人民解放軍は15式軽戦車車体を応用した新型自走榴弾砲を開始しているとされるが、このほど中国国内SNS上に試験車両と思われる写真が投稿され話題となっている。15式軽戦車はチベット地域等山間部の錯綜地形運用に適合させるべく最近開発されたきわめて強力な軽戦車であり、戦闘重量は36tと陸上自衛隊の74式戦車の戦闘重量38tに迫るもの。
15式軽戦車は既に車体部分がVN-17重装甲戦闘車として戦闘重量30tと30mm機関砲を搭載する強力な派生型が開発されているが、今回開発されている自走榴弾砲は39口径程度の155mm榴弾砲を搭載し、推測値では射程は40kmに達すると考えられる。新型自走榴弾砲の完成時期などについては明確な情報はないが、汎用車両体系が構築されつつある。
■中国版ハンヴィーの自走砲化
中国軍は思い切った諸兵科連合部隊へ舵を切っていますが軽歩兵部隊用の簡易自走砲の話題です、自衛隊も105mm砲を再認識すべきでしょうか。
中国人民解放軍は新型のSPH装輪自走榴弾砲試験を開始した。これは猛士六輪型CTLを原型とした車体に122mm榴弾砲を搭載したもので、同じく六輪型CTL派生型の弾薬車とともに運用する。猛士とは中国東風汽車集団有限公司がアメリカのハンヴィー高機動車を原型として90年代にコピーした車両で独自の進化を辿った。CTLは軽装甲車型である。
SPH装輪自走榴弾砲は諸兵科連合部隊の砲兵中隊へ配備される見込み。人民解放軍は伝統的な聯隊を基幹とした編成を2010年代に大きく改編し諸兵科連合部隊による遠征力に富んだ部隊のパッケージ化を進めている。SPH装輪自走榴弾砲は駐鋤を設置し砲員が車外に展開させ運用する簡易自走砲ではあるが、機動力が高く、装輪装甲車部隊の能力を高めよう。
■ポーランド軍の対戦車装甲車
自走対戦車ミサイルといいますと難し設計の印象がありますが可搬式ミサイルが発達した昨今は専用車両よりも汎用装甲車に可搬式ミサイルを搭載するものが多くみられる。
ポーランド陸軍は自走対戦車ミサイル車両として新たに国産ロソマク装輪装甲車を60両、自走対戦車ミサイル車両とする。各種派生型が開発されるロソマク装甲車だがロソマクSが基本車輛として採用、搭載ミサイルはイスラエル製スパイク対戦車ミサイルであり、車体にはマルチバンド無線機を搭載、データリンクにより対戦車戦闘を効率化させるという。
スパイク対戦車ミサイルは車体に発射装置を搭載するのではなく携帯式発射装置2基を搭載し、射撃時には下車戦闘により歩兵が発射装置を展開する。スパイクミサイルの型式は発表されていない。この取得契約についてミサイル本体を含まない車両調達だけで1億500万ズロチ、日本円に換算して30億円が投じられるとの事、配備は2022年に開始される。
■トルコ軍新型両用装甲車
エーゲ海を挟んでギリシャと対立するトルコは新型の水陸両用車を開発中です、アメリカ製AAV-7後継を探す各国はどう見るのでしょうか。
トルコ軍は九月より最新型のZAHA-MAV水陸両用装甲車の静海面上試験を開始した。これはトルコ防衛産業FNSSが2017年より開発を進めている装甲車で船型車体前部を有する装軌式車体にウォータージェットを搭載し水上を7ノットで航行する装甲車両、乗員3名で兵員21名を輸送する他、トルコ製遠隔操作式銃搭には重機関銃と擲弾銃を搭載する。
ZAHA-MAV水陸両用装甲車の試験ではドック内に海水を入れ、浮力試験と海上での転覆時に乗員の安全性などを試験している。トルコは現在、第一次世界大戦戦時賠償としてギリシャに割譲されたエーゲ海島嶼部やキプロス島問題でギリシャやフランス、イタリアと対立が先鋭化し、水陸両用装甲車を求めており、トルコ軍は最低でも27両を導入するという。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)