北大路機関

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【京都幕間旅情】三千院,宸殿から眺める庭園と堀河天皇皇子最雲法親王以来の高い格式と見上げる木々の色づき

2023-11-08 20:23:59 | 写真
■堂宇は広々と静寂を湛えて
 三千院はまだ静かなのだけれどもこの木々が紅色の鮮やかさを放つのに比例してこの秋もまた日本中世界中のお客様が集い混雑するのでしょうねえ。

 最澄さんの掛け軸が堂宇には幾つも拝観者を迎えてくれるのですけれども、撮影禁止という注意書きが護符のように幾つも並んでいますのはご愛敬、撮影できるのはお庭だけといい、堂宇はその庭越しか、もしくは外観だけを撮影する、ということ。それだけで十分だ。

 堂宇は実に広々と、しかしこれ今年の春頃まではほんとうの静寂をたたえて、いや紫陽花の季節にも広さは空間のゆとりという風情を醸していたのですが、いまは、静かな堂宇、と説明するには人にもよるが少々難しいところがあるほどのひと気を感じるのですが。

 庭園を直接眺めるよりは、御堂のその鴨居や壁や襖とそのほかの狭間からのぞき見るように庭園を、水の流れやその水音とともに五感で感じる、そんな拝観を志していますと、ちょうど三畳の、敷居に囲まれているが襖が取り払われた一角を見つけます事が出来た。

 御堂から眺める庭園、縁側は茶席となっていまして注文しますと直ぐに点てて薫り高い御抹茶と小さな茶菓子をたのしめるようですが、一列に並んでお茶を啜るよりは、こう誰もいない、忘れられたような背後からしかし庭園の風を感じるのも、いいとおもう。

 三千院、当地に遷座したのは明治時代、ということは前述した通りなのですが、高い格式を有する門跡寺院でもあり、元永元年こと西暦1118年には堀河天皇第三皇子最雲法親王が入ることとなり第十四世梶井門跡へ、ここから門跡寺院としての歴史が始まります。

 御殿門という総門が、なにかこう城門の様な荘厳さとともに、石階段の先に建物ではなく石垣を配置する文字通り城郭構造を採用していることは、その門跡寺院である歴史とも重なります。そして実は明治時代に当地に遷座した寺院、平安朝末期に一時当地に在った。

 梶井門跡となりました最雲法親王は保元元年こと1156年、比叡山延暦寺の頂点にして国家宗教である天台宗の頂点でもある天台座主に上ります。ちょうど平清盛の全盛期に近い時代、大原に来迎院や勝林院といった寺院を管理する政所を置く事となり、院はここへ移る。

 坂本と大原、もっとも歴史を丹念に調べますと梶井門跡はすべて移動したのではなく、政所が別院のような位置づけとなっていて梶井門跡はすべて移動したわけではない、しかし梶井の地も便利ではない場所ですから、徐々に遷る場所を模索していたようでも、ある。

 宸殿から眺めるこの庭園も、実は平安朝から続く庭園様式というものではない事が歴史からわかるのですが大原の地は、奥座敷と呼ばれる通り昔は相当に静かな場所であったといい、門跡寺院という響きとともに不思議と古刹のような風情を醸しているものです。

 雲林院、大原の静寂とともに歴史を紡いだのかと思いましたら、流石に不便であったらしく貞永元年こと西暦1232年に火災に見舞われると、さっさと洛中、いまの北大路通の船岡山近くにありました淳和天皇離宮雲林院の跡地に遷座します、大徳寺のお隣、というね。

 紫野梶井門跡、便利な立地ではあるのですが応仁の乱においては攻めるのに便利な立地であったために、やはりというか戦火に見舞われ全焼しまして、結局一時大原に戻ることとなります。ただ、天台宗門跡寺院という格式の高さは江戸時代に再興の機会を迎える。

 徳川幕府将軍徳川綱吉は後陽成天皇皇子入道慈胤親王へ、御所東の一角を寺域として寄進、ここが上京区梶井町となるのですが、旧立命館大学広小路キャンパス跡地あたりに遷ります。そして明治維新の際、一念三千発起に肖り三千院として現在地へ遷ったのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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