物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

球面三角法

2019-10-15 11:45:25 | 数学

「球面三角法」についてまとめてみたいと、小著『四元数の発見』(海鳴社)の第11章「四元数の広がり」である種の宣言をしたのだが、まったく取りかかれていない(注)。

しかし、関心は消えたようになったり、少し強くなったりしながら、それでもなお続いている。近くのE大学の付属図書館の球面三角法と名のついた本をOPAC目録で調べたりしているが、なかなかとりかかることにならない。

国会図書館の目録を調べたら、平面三角法と並列した題名でない、いわば、球面三角法だけを述べた本が古い本だが、数冊あることがわかった。これは歴史的興味だけかもしれないが、平面三角法よりも球面三角法のほうが先に発達したという歴史的事実からの興味である。

数学史の本にはそう書いてはあるが、普通の球面三角法の本は平面三角法の本の後ろのほうに、もうしわけ程度に書かれているのが普通である。それが私の気に入らない。

歴史的に球面三角法のほうが先に人類に認識されたのなら、そういうふうに本として記述したものもあってよい。ところが現在の本の大部分はそうではない。もちろん、現在では平面三角法のほうがよく知られていることは事実である。

航海術とか天文学とか測地学とかの分野では球面三角法はいまでも必須の分野らしい。もっともそういう分野に関係する人は世の大勢の人の中では割合は少ないのであろう。

(注)『四元数の発見』での私の宣言はつぎのようなものであった。

ちょっと考えただけでも、球面三角法の定理を

1.発見法的にみちびく

2.現代的にみちびく

3.平面三角法からみちびく

4.四元数を用いてみちびく

の4つのやり方が考えられる。

これをレビューすることは、これからの私の課題としたい。


プラニメーター

2019-02-07 11:27:56 | 数学

プラニメーターなんて言葉を知っている人は一般人でどのくらいいるのだろう。

高校生のころ、数学で微分積分学をはじめて学んだころ、元技術者だった父の持っていた器具の中にこのプラニメーターがあった。

これは曲線の内部の面積を、その周りの曲線をなぞることによって、求める器具である。そういう説明をそのころ父から聞いたことがあった。

普通には、まわりの囲む曲線の長さを知ったとしてもその面積を知ることはできないのはだれでも知っている。だが、囲む面積の周りの曲線をなぞることで、何らかの方法で曲線が囲む平面上の面積がわかるというのは不思議であった。

ところが、それからもう60年以上になるが、そういうことがどうしてできるのか疑問に思ったことはなかった。ところが昨夜クライッイグの『技術者のための高等数学』(培風館)の第2巻『線形代数とベクトル解析』のベクトルの積分法のところを読んでいたら、グリーンの定理の応用として、この周りの曲線からその曲線に囲まれた面積を知る公式が導かれていた(注)。

そして、これはプラニメーターの原理だとあった。それでようやく昔の父から聞いた話を思い出したというわけだ。いまどれくらいプラニメーターという語が知られているのかわからない。技術者にとってはプラニメーターは珍しくもない器具かもしれないが、一般の人にとってはそんなものは不用であろう。

プラニメーターは英語ではplanimeterと綴る。訳として岩波の英和辞典ではプラニメーターと面積計とがあった。単に面積計といわれてもどういう風にして面積を出すのかはわからないであろう。

(注)グリーンの定理はちょっと3次元でのストークスの定理の2次元の特別な場合みたいな定理である。ストークスの定理をだれが発見したのか知らないが、Kelvin卿からこの定理を教えられたストークスがケンブリッジ大学の試験に出したとかで、一般にはストークスの定理として知られるようになったとは最近どこかで読んで知った。

要は面積分をその周囲の線積分に変換したり、逆に線積分を面積分に変換したりするときに使うのがストークスの定理である。

 


オイラーのツェータ関数

2018-02-17 11:41:10 | 数学

「数学教室」という教育系の雑誌だが、先月は複素関数のことが書かれていて、複素関数に最近関心があるから、そのシリーズを関心をもって読んでいる。

ところで、今月はオイラーのツェータ関数のことが書かれている。\zeta (s)で s >1 ならば、問題がないが、s=1とか s<0 のときに使うと問題が出てくる。それはこれらの場合には\zeta (s)が発散して収束しないから、これらの場合には使えないはずだ。もっともオイラーはこの場合にも使ったという話が出てくる。

ひどい場合には s=-1 とか s=-2 とかの値を求めている。これはオイラーがした過ちであるが、それをそのまま書いている。もちろん、著者の N さんはそのことを先刻ご承知のはずである。だが、ちょっとだけ言い訳めいたことが書かれているが、それ以上には詳しくは触れていない。

これは連載物のページ数が限られているからしかたがないのかもしれない。だが、やはりちょっときちんとした注釈をつけておくべきだという気がする。これと同じような記事を雑誌「数学セミナー」でも見たような気がする。

雑誌「数学セミナー」は数学好きの人が読むのだからまあいいとして、「数学教室」なんて教育系の雑誌では書く内容によほど注意して書いてほしいというのは余計な注文だろうか。

次号にそのあたりの事情を書いてくださるのかどうか。

\zeta (-1)=1+2+3+・・・=-1/12  (正の数をたして行ったはずだのに和が負の数となっている)

\zeta (-3)=1+2^{3}+3^{3}+・・・=1/120 (1だけでも1/120を超えているのに和がそれよりも小さい)

だとかのオイラーの推論はおもしろいけれど、それがあまり数学のことを知らない人に本当に成り立つなどと誤解されたら困るのではなどと考えてしまった。

もっとも「夢を育てる遊び心の数学」というシリーズを読む人はかなり数学がわかる人しか読まないだろうから、ちょっとくらい、おかしな推論をしたとしても誰もそれをまともに信じたりはしないから、いいのだろうか。(どこが論理的にいけないのかというと、上の2つの例だと無限級数が和をもたない例だから、それを和をもつとするところがいけない。)

これらの推論をしたオイラーの議論では

1-x+x^{2}-x^{3}+・・・=1/(1-x) は |-x|<1 のときにのみ成り立つという前提だったのに、その条件がみたさないときに使っている。

もちろん |-x|<1 を超えた領域に 1-x+x^{2}-x^{3}+・・・ を 1/(1-x) として解析接続できるのであろうが、それはその解析接続された領域で 1-x+x^{2}-x^{3}+・・・ が和をもつことを意味するわけではない。

この記事の終りの方に\zeta 関数の積分表示が導出されていて、その積分表示ではs<0でも収束するのかなと思ってちょっと手を動かして見たが、その積分表示でも積分は発散するということがわかった。当然かもしれないけれど。

(2018.2.19 付記)雑誌「数学教室」の記事の批判めいたことを書いたが、昨日、庭にある書庫から岩波講座の「現代数学の基礎」の分冊である『数論1』をとりだしてきて、見るともなく見ていたら、\zetaという章があり、解析接続によるものであろうか、上で私が批判した点の結果が出ていたようである。今日その本を仕事場に持ってくるのを忘れたので、逐一調べることができないが、多分、解析接続で上の結果を正しく求めることができるのであろう。ただ。そういう正当化は後でされるとしても、オイラーの導出法は許されるものではないというのが私の現在の見解である。


発見的教授法による数学シリーズ

2014-04-23 13:28:38 | 数学

秋山仁さんの表題のシリーズ本が森北出版から復刊された。もっとも以前には6冊シリーズだったが、そのうちの5冊の復刊である。

この書は受験生に評判がよかったのか、古書市でも1冊が1万円以上の高値がついていて、とても入手ができなかったが、今回5冊で1万1千円とちょっとの値段だったので思い切って購入してみた。

大学入試問題をどうやって発見的方法で解くのかということを述べた書であり、大学入試に関係など全くない私には本当は無用かもしれない。

秋山仁さんの著作に『数学講義の実況中継』上、下(語学春秋社)もあり、子どもたちが大学受験のころに読んでいた。その本も手元に残っているが、あまり読む機会がない。

だが、これらの書はちょっと類書の見られないものであり、貴重である。

大学入試から離れたところに私の関心がある。もっとも数学オリンピックとかもあるが、そこで出される難問など私には解けないのだから。

しかし、「発見的方法での研究とか教育」には関心があるので、発見法と銘打ってあると、ついつい食指が動いてしまう。

(2014.6.10付記) このシリーズの別巻が2冊発行が予定されている。アマゾンに予約中とあった。これも買わなければならない。

(2019.6.11付記)  この別冊もその後、購入してもっているはずだ。いま確かめてはないが。

(2024.4.24付記) 数学の発見法的な教育とか理解という概念も小著『四元数の発見』(海鳴社)でもそういうことを強調したりしたこともあって、一部の人にも発見的理解についても馴染んできたように思われる。

私は、発見法的方法とか理解ということを中学校の数学の時間に数学の担当の先生だった野間先生から、ポーヤの『いかにして問題をとくか』(丸善出版)を紹介されて知ったと思う。もっともその頃にこの本を購入することはなかったのだが。

(2024.11.3付記)
ポーヤの『いかにして問題をとくか』を購入したのは大学1年生になってからであろう。だから本の紹介を聞いてからほぼ4年後のことである。