「指数と対数とは同じ」という題のインターネットの記事を見たことがある。読んだのだが、その趣旨は覚えていない。
表れ方だけを見れば同じだと思う。しかし、多分ある数Nを別のある数aのべきで表そうとするという意識だと元の数aの単なるべき乗a^{x}とは意味が違ってくる。Nをa^{x}と表せば、xがいくらとなるかという対数という気持ちが伝わってくるではないか。
しかし、指数表示が普及した現在では対数の性質は指数の性質から容易に導けることは事実であろう。それは対数の発明者であったNapir等のもっていなかった現代の利点であろう。
昨日ちょっとだけ数学史の本を覗いて見たが、指数表示がまだ普及していなかったころにネピアは対数を考え出したとあった。これは指数表示が普及している今の時点から見ると大分違って見えることだろう。だからネピアの先見の明というか才が光って見える。
それも三角法との関係で正弦とか余弦とかの対数を計算することを目指したという。これはもちろん天文学の必要からである。対数の発見は天文学者の寿命を延ばしたと書いてあった。
私などはある数を10の何乗かにして計算を簡単化するのかと思っていたが、それがはじめの動機ではなかったらしい。
対数が何を意味するかは森毅さんの「対数はある数の桁数を示している」という見解が一番分かりやすい。この間の松山大学薬学部での講義「基礎物理学」での説明もそれに沿ったものであった。だからlog 2はやく10の桁でいえば、0.3010・・・とかいう話をしたのであった。
私は「指数表示」と「対数表示」という言葉を使うのがいろいろなごちゃごちゃを避ける一つの方法だと思っているが、そういう表現はどこでもまだ見たことがない。
(2013. 5.23付記) あるホームページの主宰者は私と同じような趣旨でだが、「指数表現」と「対数表現」という語を使われている。ただ、それがどこのホームページだったかはもう今ではわからない。ネットを丹念に探せば、わかるはずだが。
「対数とは何か」というエッセイを徳島科学史雑誌に発表したのももう数年前のことである。