物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

忘年会

2006-12-22 12:31:16 | 学問

昨夜私の所属するドイツ語グループの忘年会があった。社交ダンスをしたりする人がいるホールの一部での忘年会である。グループの長のOさんや忘年会の世話人であるTさんはカラオケを歌ったりしていたが、私はもっぱら飲み食いとおしゃべりをしていた。

10時にそこをみんなと出て私の仕事場で2次会をする。紅茶とおつまみとしてUさんから前に頂いたチーズを出す。みかんが少し残っていたので、デザートにみかんを食べた人もあった。

そのとき面白い話があった。なぜ、ローマ帝国はゲルマン人に破れて崩壊したのかという点についてRさんがいうには少数のグループがローマ帝国の軍隊を攻撃するということを繰り返して攻められればどこかへ逃走するという手法をくりかえしたからだという。そして道とか橋とかのインフラストラクチャもすべて破壊してしまった。それでさすがのローマ帝国も機能麻痺して崩壊をしてしまった。そして、その生産性(GDPにあたるもの)はある歴史家の試算によるとローマ帝国の崩壊から1750年くらいまでローマ帝国時代の生産性を回復できなかったという。

それと戦闘ではもし大規模な正規軍同士の戦闘をすれば、どの民族の兵隊もローマ帝国の軍隊にはかなわなかったのだが、ゲリラ戦みたいなものだったので、ローマ帝国はなす術がなかったという。Rさんはいまのイラクの状況がそれに似ているという。もちろん現在のイラクでは個人テロであってゲリラ戦ではないので、その違いは彼も承知している。

それで思ったのだが、中国の歴史における毛沢東の日本とか国民党政府に対する戦略がそれを実際に行ったようなものであった。Yさんは毛沢東は歴史をよく勉強して自分の戦略を考え出したのではないかと感想を述べていた。

そのとき私は言わなかったのだが、歴史家の羽仁五郎は現代戦の特徴として「ゲリラ」と「レジスタンス」を挙げている。現代戦の決定的な要素は核兵器とその運搬手段であるミサイルとか爆撃機ではない。これは一般の日本の軍事評論家たちが現代戦の特徴として挙げた現代兵器はその本質ではありえないということである。そういう本質を突いた議論はしかし、なかなか浸透しない。だから、いまでも憲法九条が時代遅れだというような議論が通論として通ってしまう。

Rさんは羽仁五郎の所説をまったく知らないと思うが、二つの要素のうちの一つを歴史から学んだというわけである。いまさらながら羽仁五郎の所説はやはり現代戦の本質をついているのだと思う。

「国を守る」というが本当に自分が愛してやまない国が他国から侵略されて危急存亡にあれば、人は自発的に闘うものだ。そのときの手段はしかし兵器受注で潤う一部の経営者や政治家が考える現代兵器、戦闘機、軍艦や戦車、はたまた核兵器では決してない。それらは現代の経営者の利潤追求の手段にしか過ぎない。

ところで一体全体、本当に守るに値するいい国日本を政治家や経営者や多くの国民は実現しようとしているのだろうか。それが問題だ。


数学する人々(朝日新聞)が面白い

2006-12-21 12:31:16 | 数学

カテゴリーを学問にしたが、新聞とかジャーリズムとすべきだったかもしれない。

人脈記とかいう連載があるのだが、いま「数学する人々」という題で連載されている。これで取り上げられる人々が興味津々でつぎの日の新聞を見る楽しみがある。

新聞も読んでくれる人が居ての新聞だから当然のことだろうが、昨日は統計学者の話が出ていた。増山元三郎とか吉村功のことである。彼等はサリドマイドとアザラシ症との関係を統計学的に確立した業績である。統計でうそをつく学者や政治家もいれば、それを暴く学者もいる。

今日は数学基礎論の研究者の話であった。以前には反戦運動に係わった人とか銀林浩さんとか算数の絵本をつくった安野さんとか森毅や野崎さん、また佐藤幹夫一派の数学者を取り上げていた。

機会があれば、皆さんにも一読を進めたいと思う。


本の収集と資料の保存

2006-12-20 18:26:04 | 科学・技術

私の肩入れしている人に武谷三男と遠山啓がある。二人とももう故人だが、彼等の著書を収集している。武谷でいえば、もう多分収集した著書も170冊を越しただろう。因みに私のつくった著作目録では武谷の寄稿がある本は多分200冊を越していると思う。この著作目録は素粒子論グループの機関誌「素粒子論研究」に数度にわたって発表している。その改訂版をつくる必要があるのだが、時間が取れない。

ネットの古本市場で購入すべき武谷関係の書籍もほとんどなくなった。これはお金に明かせて買うのならまだあるのだが、個人としてはそれほどつぎ込むお金がないので、比較的安価なものしか買わないからである。女房や子どもたちに言わせれば、ごみがたまるだけというわけだが、そうとばかりもいえないだろう。誰かが執念を持ってやらなければならないことがある。

女房には私の死後には県立の図書館に寄贈をしてくれと言ってある。これは後でこれらの人々の業績に関心を持った人々が研究しやすいようにとの配慮からである。もちろん、寄贈先は大学の図書館の方がいいのだが、少なくとも私の勤めていた愛媛大学には受け入れてくれる余地がなさそうである。

私の子どもたちによれば、紙の媒体ではなくて電子的な媒体で資料を保存をしたほうがスペースも少なく済むとのことであるが、これは私の後輩のある大学の教授先生が言うには電子媒体でも少なくとも10年ごとぐらいで常に更新しないと永久保存はできないらしい。

彼のいわくでは意外と紙の媒体は保存がいいのだそうである。もっとも以前のような酸性紙だとぼろぼろになってしまうとか。それだと紙の寿命はもろいものであろう。

湯川、朝永生誕百年で各地で展覧会が開かれているが、その展示資料は複製だそうである。これは紫外線による劣化がひどくて元の原資料がすぐに駄目になってしまうからである。湯川、朝永関係でもいろいろな資料があるのだが、それを電子資料としてインターネット上で取得できるようにしてくれませんかと小沼通二先生に会ったときにお願いをしたのだが、そういう風になるのかどうかはわからない。しかし、ぜひやって欲しいことである。

岡潔先生の関係では資料が公開されているので、やろうと思えばできるだと思う。要は先立つものとしての予算であろうか。


グラフの平行移動

2006-12-08 16:59:24 | 数学

つまらないことだが、わからなかったことがある。それはグラフの移動でいま任意の方向にグラフを平行移動させたとき、y軸の方に沿っての移動は直観とあっているのだが、x軸の方の移動が直観と反対になることだ。

すなわち、関数y=f(x)のグラフがあって、それを移動してy=f(x+a)となるときにxがx+aになるのだから、x軸方向の正の方向へaだけ移動するのかと思えば、そうではなくて負の方向へaだけ移動するのが正しい。

これがどうしてかしっくりしなかった。ところが最近ゲルファント先生の数学『関数とグラフ』(岩波書店)を読んでいてやっとわかった。といっても大したことではないし、70歳が近づいてきたのになんだといわれるだろう。

ともかくも気のついたことはつぎのことである。

関数形が変わっていないのだから、f(x)とf(x+a)とは同じ形のグラフである。そのときにこのあるx=x_{0}でのf(x)の値と等しい値をとるのはf(x+a)ではx=x_{0}-aのときであるということである。それだからグラフはx軸の負の方向へすなわち左に移動させなければならない。

こんな簡単なことだが、つきつめて考えなかったためにおよそ50年も分からなかった自分が恥ずかしい。

(2012.3.12付記) もっともこのグラフの平行移動がわかり難いのではないかと考えた先生方は高校の先生にもおられた。私が知っていた故矢野 寛(ゆたか)先生もその一人で、このグラフの平行移動を説明した論文があり、これは私が先生より後に書いたエッセイとは違った観点から書かれていた。

これは愛媛県数学教育協議会の機関誌「研究と実践」の昔の号に出ていたが、そのことに最近になってようやく気がついた。私も「グラフの平行移動」について、その後「研究と実践」に書いた。

そこではいろいろと書いたが、結局の要点は上の最後に書いたことにつきる。そして、このことは中学校3年の数学の授業で私たちの数学の担当だった、野間先生がさらりと言われたことであったろう。

しかし、この野間先生の注意を私には結局60年以上もかかって「そうだったのか」とわかったという、お粗末な次第であった。


Joh さんの「微分形式」入門

2006-12-04 11:33:09 | 数学

「物理のかぎしっぽ」のJohさんの微分形式の解説がわかりいい。微分形式がどういう点で大いに利点があるかにも触れている。また数学としての奥深さとか美しさについてもその一端に触れている。Johさんの心の喜びが感じられる。そういえば、数学者W. W. ソーヤーの著書に「数学の楽しさ」(Mathematician's Delight)というのがあった。

Johさん(イギリス在住)は航空工学を専攻しているそうだが、以前は数学を専攻していたのではないかと思うぐらい数学がよくわかっておられるようだ。その上、ご自分の分かっておられることを惜しげもなくわかりやすく教えてくれるというサービス精神にも富んでいる。また、現代数学的な論理をあまりに重視しすぎないところがいい。

私は微分形式のところを全部読み終わってはいないが、微分形式についてようやくわかりそうである。Lie群の説明にもぜひ挑戦をしてもらいたい。