『電気電子工学科ミニマム』の改訂を久しぶりにしようかと思い出した。
『電気電子工学科ミニマム』とは何か。私はE大学工学部に長年勤務していたが、定年前の約10年間は電気電子工学科所属の教員であった。
そのころ3年ほど『電気電子工学科ミニマム』を編纂して無料配布した。初版は1999年であったが、第2版は2000年で、第3版は2001年であり、これが最終版となった(注)。
その後、数年後に定年退職したのだが、1年生とか2年生くらいのときには学生が『電気電子工学科ミニマム』の有用さがわからなかったらしい。
ところが、4年生になって卒業研究をしたり、大学院生くらいになってくるとその有用さが分かってきて、それらの学年には配布していないのに、その冊子を求めて学科事務室に学生がくるという事態があったらしい。
これは端的に言うと、数学の公式集であるのだが、ちょっとアンチ公式集といった趣のある書であった。第3版は83ページの小冊子である。第1版と第2版とはもっとページ数が少ない。
とりあつかったテーマは
・三角関数
・指数関数と対数関数
・微分と積分
・Taylor展開
・ベクトル解析
・フ―リエ解析
・微分方程式
・複素数
・線形代数の有用な定理と公式
・偏微分
・双曲線関数
・デルタ関数
・逆双曲線関数
等である。今考えるとけっこうたくさんのテーマをとりあつかっている。
簡単で要領のいい数学入門でもあったので、学科に所属する数学の先生の中には自分たちの講義を学生が聞かなくなるのではないかと危惧した方もあったらしい。
電気電子工学科の学生は、いわゆる応用数学のユーザーでもあるので、この危惧はいわれがないわけではなかったもしれない。
(注)この小冊子は新入生に無料配布した。ところが私が行っていた『量子力学講義ノート』は有料配布だったので、間違えてこの『電気電子工学科ミニマム』を高額で購入させられたという不平を言う学生もいた。
これはまちがいであることは言うまでもない。『電気電子工学科ミニマム』は無料で配布したので、この小冊子の配布に際して一銭たりとも、学生から費用を徴収したことはない。当時の学生においても、記憶がまま変わってしまう良い例であった。
ちなみに、この第3版の1冊を国会図書館に納めてある。印刷部数は300冊くらいだったろうか。