私の基礎物理学の講義では「ベキ関数の微積分」しか必要でないとこの間,講義で大見得を切ったのだが,ところがこれからの講義ではそれだけでは済みそうにない。すでに学生には講義ノートを渡してあるのだが,その内容を私はほとんど忘れてしまっていた。
学生は私を嘘つきだという判断をするだろう。三角関数の微分は使わないにしても近いうちに対数関数とか指数関数とかの微分は使うことになる。それに仕事とエネルギーとの関係も学生にはまったくわかっていないらしい。これはそれについて話さなかった私が悪いのだろうが。
簡単なデモ実験を来週にはやった方がよさそうだ。考えているのは棒でテニスのボールをおすという実験とか高い所からボールを落とす実験とかである。動いていることがエネルギーをもっていることであり、また高い所に物体があるということもエネルギーがあることになるということを示さなければならない。またバネはポテンシャルエネルギーをもっていることも話す必要がありそうだ。 力を物体に及ぼせば,エネルギーが増えるという事実もこれは日常の経験からはわかりにくい。
というのは力は知らず知らずに摩擦力のように物体に働いているのにそういうもののない世界を物理学では考えていることをわかるのは難しいからだ。ああ、なんということだろう。
日常生活における実際経験と理想化された物理学の世界とはかけ離れている。もちろん、物理の本を読んで勉強を初歩からしてくれれば、理解できるはずだが,そういうことをして来た学生は少ないらしい。