ホグベンの『百万人の数学』(筑摩書房)はかなり古い本である。戦前から訳本が出ている。その上巻だったかは亡くなった父の蔵書であった。
戦後というか1970年になってその新訳が出てそれを購入して持っている。最近、それのまた新訳が出ているが、そちらは購入していない。
アマゾンコムだったかの書評で本の中の図が前の書たち(「たち」は複数を示す)の方がはるかにいいと読んだこともある。訳は新しいものが多分いいのだろうとは思うが。
それはともかくとして、この中のどの章もきちんと通読したことはなかった。「数学・物理通信」への投稿があり、これが近々発行の14巻4号に掲載になると思うが、この原稿を読んだことが『百万人の数学』下の第10章「算術の社会化」を読むきっかけとなった。この章の主題は「対数の発見」である。
前にも読もうとしたらしく、いたるところにミスプリを修正した跡がシャープペンシルで入っている。それを昨夜はじめてほぼ読み通した。ページ数がかなりあったので「こりゃ私には読み通せないな」と弱気が出たが、私には珍しくほぼ読み通せた。
高校生のころ(1955年のこと)、この『百万人の数学』の戦前版を抱えて数学の先生にわからないところを聞きに行くという同期生を見掛けたことがあった。そのN君は高校2年から松山東高校に転校して実験物理学者になった。
N君は比較的若くして亡くなったらしいが、中学校時代から高校生時代にかけてクラスが一緒になったりしたことの多かった、K君と私の3人が同じ高校の同期生としては物理学の研究者になった。
K君はきわめて秀才の方であったが、先年病気でやはり亡くなった。だが、お互いに学問的な影響を与えあったりしたことはないと思うので、それぞれが独自の道を歩んでのことだったと思う。同期生だが、そういうこともある。
N君のお父さんはゴールドスタインの『古典力学』(吉岡書店)の初版の訳者の一人であり、物理学者であった。『古典力学』のもう一人の訳者は故瀬川富士(とみお)先生である。