いま直ちに授業ネタを思い出す訳ではないが、いくつかの授業ネタをもっていないと先生には授業がつとまらない。というのは予定の分の講義を終えて少しまだ時間が残ったりするからだ。
または授業の残り時間を計算して少し余談を入れたりして、学生の緊張を一時的に解いたりしなくてはならない。大抵、後で学生からの意見を聞くとあまり評判がよくなかったりするが、でもこういう余談は場合によっては必要だと思う。
そういう話の一つとして超能力の話がある。「超能力があるのかないのか」をどうしたらチェックできるか。
これは超能力があったとしてこれが生産に使えるかどうかがその真偽を決める。実際に生産の現場や現実に役立つものは始め怪しげであったとしても多分物質的な基盤を持っていると思う。
オウム真理教の教祖が空中浮揚ができるということで10年以上前に話題になった。これはもちろんまやかしであったが、若者の中にはそれを信じてオウム真理教に入った者も多かった。
空中浮揚が出来たとすればどこかに行くのに役立つが、残念ながらそれはまやかしであった。本当はこんなことができるのなら、物理学のテクストを書き換えねばならなくなるのだが。
教祖様が移動の手段として実際に使っていたのはドイツの車メルツェデス・ベンツで、空中浮揚してどこにでも出かけるのではなかった。すなわち、人の移動の手段として空中浮揚が役立つわけではなかった。そういう風に考えることができたら、噂や話の虚構がわかってしまう。
このように現実の世界に役立つかどうかに照らして考えるとその虚構は明らかだが、そういうことを若者はどこでも学んでいない。またそういうことを書いた本もほとんどない。
私の知っている、唯一このことを書いた本に武谷三男の「物理学入門」上(岩波新書)があり、もう絶版になっているが、この書はいま季節社から出版されている。しかし、こういうことを物理でも多くの人は学ばないから怪しげな言説に簡単に迷わされてしまう。