ベータ崩壊の謎というか。ちょっとしたことが気になっている。
ベータ崩壊で原子核から出てくる電子のエネルギーが一定でないという謎は昔に大問題になったが、これは電子とともに反ニュートリノが放出されているとの考えでエネルギー保存則が成り立つことが予想された。
ニュートリノはなかなか検出できなかったが、たぶん第二次世界大戦後になってその存在が実験的に確かめられたと思う。
ここで謎といったのはそのことではない。電子と反ニュートリノは原子核から放出されるのはわかっているのだが、同時に陽子が原子核が放出されないのはなぜかという疑問がでてくるかもしれない。
それに対する正確な答えは知らないが、すぐに考えつくのは電子はその質量が小さいのに対し、陽子の質量は電子の質量と比べて約2000倍も大きいことである。
もともと中性子が原子核内で静止していたと仮定すると、それが陽子と電子と反ニュートリノに崩壊したのなら、そのときの運動量の保存則とエネルギー保存則が成り立つとすると電子と反ニュートリノが持ち去る運動量P_{1}と陽子の持つ運動量P_{2}とは向きが反対だが、その大きさは等しいにちがいない。
ところがそれから電子のもつ運動のエネルギーは電子の質量に反比例して大きいのに対して、陽子のほうはその質量が約2000倍大きいので陽子のもつであろう運動エネルギーは電子のもつ運動エネルギーの約2000分の1の大きさとなるので、ほとんど動かない。
その上に原子核内の陽子には核子(陽子と中性子)の間に働く力が約1000倍も大きい。その結果として陽子は原子核から放出される現象は起らないと考えられる。
この推量が正しいのかどうかはわからないが、こういう議論をした文献はまだ見たことがない。どこかで議論されているのかもしれないが、よく調べてみたいと思っている。