物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

Lagrangeの恒等式

2005-06-27 19:53:45 | 数学

Lagrangeの恒等式については小著「数学散歩」(国土社)で書いたのだが、田崎晴明さんのMathbookを見ていたら、3次元のベクトルについてのスカラー積の2乗とベクトル積の2乗の和からすぐに出てくることがわかった。

これはほとんど自明である。もっとも、これを成分で表せば、Lagrangeの恒等式であるとは田崎さんはexplicitには書いてはいないけれど。

ところがこの証明は2次元とか一般のn次元の場合には適用できない。

そのことも「数学散歩」にちょっと触れてあるが、n次元のベクトルと思ってそれらの成分の反対称のものをつくると3次元のときだけ軸べクトル(実は2階の反対称テンソル)になれるが、他の次元ではうまくいかないことがすぐわかる。それは成分の数があわないので、同じ種類のベクトルとはなれない。

もっとも佐竹一郎著「線形代数学」(裳華房)にはこの一般のLagrangeの恒等式の証明が載っていることはNさん(当時大阪工業大学)に教えてもらった。

私の一般のLagrangeの恒等式の証明は数学的帰納法だったので、面白くもなんともないものでしたが、いろいろ証明法はありそうである。これからも探してみたい。


括弧の省略

2005-06-27 19:30:46 | 数学

標題がどういうコンテキストからつけられたかは、ちょっとわからないでしょう。算数とか数学での演算規則の表記が括弧を省略するようにつくられているらしいということです。

先日も分数の計算についてちょっと書いたのですが、これは分数だけではなくていろいろなところに括弧の省略のために演算の優先順位が決められているということを銀林浩著「子どもはどこでつまずくか」(国土社)で知りました。

このような演算の優先順位は近頃は多分コンピュータ言語の中でしかひょっとしたら意識されていないかもしれません。加減乗除があれば、加減よりも乗除を優先するというのも括弧の省略ためであることをしりました。また、abとかa/bとかべき乗とか開法のときには括弧がなくても演算が優先されるということです。乗除よりもべき乗と開法が優先されるのは当然でしょうが、コンピュータ言語の中でしか私は意識をしていませんでした。

このことについていつかエッセイを書いてみるつもりです。いわゆる代数の本の中にもそのことはきちんと指摘をされていません。さすが銀林さんですね。上に述べた本にきちんとした説明を見つけてほっとしましたが、もっとそのことに注意を喚起した説明がなされるべきだと思います。


強迫観念?

2005-06-23 13:20:24 | 数学

ブログをやり始めたのはいつだったか5月の終わりだったと思う。どうも昨日今日は何か書かなくていけないとの強迫観念に襲われている。

それでこんなテーマが選ばれた。およそ馬鹿らしい話である。自分に何か言いたいことがあったから、ブログを始めたのにそれを忘れて自己目的化してしまったとはね。

いま、あまり学校で強調されなかった数とか式の演算規則について関心を持っている。3÷2/3というような式があったとして3÷1/3×2としてはいけないというようなことです。これはもちろん3÷(1/3×2)とかっこがつけば正しいのですが、なぜ後ろのかっこがはずせないのかということをどのように説明するか。

いくつかの説明をすでにインターネット上でしたのですが、これについて詳しく書いてみたいと思っています。


今日は話題なし

2005-06-22 18:02:16 | 物理学

Goldstein「古典力学」の3版の3章の訳ができたので、読み返している。昨日からはじめて20ページまできたらもう今日は読み返す気がしなくなった。これではいけないと思うのだが、どうも暑さのせいか。2章は吉岡書店から校正刷が来たので、江沢さんの方へ回した。

もう3年目になるので、早く訳を仕上げないと書店に悪いのだが、遅れに遅れてしまっている。でもその分日本語はこなれているかもしれない。


小川修三先生

2005-06-20 14:56:47 | 物理学

名古屋大学名誉教授の小川修三先生が亡くなったのは今年の1月9日だった。

それから約半年が経って、先生の「学問と人を偲ぶ」集会が名古屋大学で12日にあった。私も先生の教え子の端くれとしてその集会に参加した。

5人の方々がそれぞれ先生の学問や人柄等を語った。それらの話を聞いているといろいろ思い出したしたことがあったが、その話の後ではすべて忘れてしまった。

懇親会でもまた、それぞれの参加者がそれぞれの関わりを語った。なかなか思い出が皆さん多いので、時間が予想以上に経っていたので、私は2点だけに絞って話した。

小川先生に叱られたことはないのに、叱られた夢を見たと先生に言ったら、先生は自分の先生の坂田さんには叱られたことがあるが、叱られた夢は見たことがないといって笑われた。

もう一つは静岡県立大学の小出義夫さんがNiu粒子の解釈についての日本語の論文のコピーをもらったという挿話である。そのことから小出氏はこのNiu粒子が新しい自由度を示した新粒子であるとの解釈に小川先生が自信を持っておられたと思ったという。

12日の集会の講演は録音を沢田さんがとっておられたので、どこかで文章化して発表されることを願っている。

(2024.4.24付記) 日本で素粒子物理学を昔専攻した人たち(私も含む)は自分の先生のことを先生とは呼ばないというのが慣習である。例外的に先生と呼ぶのは湯川、朝永、坂田、武谷の年代の先生のことだけである。

それ以外の方々は先生とは呼ぶなとはかなり普遍的に言われてきたことである。だから小川先生などと呼んだら、泉下の小川さんに叱られるであろうかと思う。ここではしかし、世間的な慣習にしたがっている。


量子力学

2005-06-17 15:08:49 | 物理学

田舎の大学だけれども、私は35年以上量子力学を教えてきた。

数学もその量子力学を理解しようとした範囲内で勉強してきた。工学部で教えてきたのだが、他大学はわからないが、私の教えた大学ではあまり熱心な学生にはいくつかの例外を除いて出会わなかった。

いま話題としているのは学部段階のレベルの初歩的な量子力学である。それより高等な話はほとんどない。でも、数学のいろいろな疑問が出てきたりして、体系としての数学ではなく、その数学の断片的な知識が必要とされた。そういう過程から、『数学散歩』(国土社)が出来上がってきました。

今日は量子力学の講義でトンネルダイオードの話をしたのですが、その準備で少し半導体のことを木下是雄先生の『物質の世界』(培風館)で勉強してみました。あまり、半導体は勉強する機会がなかったことですが、結構面白いですね。これは木下さんの書き方がいいのだろう。

もっとも、電気電子の学生でもここに書かれているようなことを知っているのかどうかは疑わしい。4回生くらいになると、多分もっと知っているのでしょうが、相手が2回生ですからどうもはじめてみたいな顔をして聞いている。

もっとも、私自身が学校であまり半導体のことは習っていない。大学に勤めるようになって一夏かかって学生実験のテキストを書いたことがあり、そのときに少し勉強したがあまり日ごろ使わないので忘れてしまう。そこらあたりが専門家と専門でない者との違いでしょうか。

量子力学といっても、偏った量子力学で、大学の理学部で学ぶ一般の量子力学とは言いがたい。でも、1時期うんざりしたことがあったが、その1時期を除いて、いつも新鮮な気持で授業に取り組んできた。学生からの評判はとても悪くて落ち込むことのほうが多かったが、それでもくじけずにやってこられたのは、ひとえに量子力学の奥深さと面白さによるものだろう。

昨年の講義が最後と思っていたが、事情で今年だけ非常勤講師をしている。今年はあまり黒板で計算はせずに主な内容を説明するという方式をとっている。はたして評価はどうだろうか。楽しみである。


五捨五入

2005-06-15 18:42:41 | 数学

自著の「数学散歩」をある卒業生にあげたら、五捨五入について自分の経験をメールしてくれた。

それは会社でアメリカ人の顧客に計算の仕方が違うということで、注意を受けたという。ところがそれを聞いた日本人の技術者か誰かがそれはおかしいといっているという話です。私の教え子は彼らを教育する立場にあるので、そのクレイムについて納得させることができず、お客様は神様だといったようなことでお茶を濁していたらしい。

私の「数学散歩」(国土社)を読んで、アメリカ人は計算のときに五捨五入を用いていたのは計算の誤差が少しでも小さくなるという理由だったと分かったというお話です。

私は原理的にはそうだろうということを述べたのですが、それが実際に使われているとは知らなかった。本というのもの少しは役に立つということがわかりました。


公開されたものはみんなの財産?

2005-06-13 19:33:09 | 受験・学校
ごく最近はインターネットのホームページをサーフィンして数学の話を見ている。といっても高校レベル以下が主なんですが。面白い質問がありますね。分数で割るときにその分数を割り算と考えてそのまま書いたら結果が違うのはどうしてかといいたような。今日も「0の定義」は?というのがありました。難しいですね。考えていることをそれなりに書いたのですが、納得してもらえるかどうかは分からないですね。

でも掲示板とかで公開されたことはみんなの財産ということだけはたしかなのではないかな。日本の中で政治的にいろいろな動きがあり、それは世界の体制を後ろ向きに進めるようなところがありますが、でもインターネットやマスコミやその他経済的な交流とかでもう昔みたいにどこかへ侵略して戦争をしかけることはできなくなっているというのが、私の考えですが、一方で憲法を改定して軍隊を持ちたいと考えている人は結構多い。

自衛隊は名称はともかくもちろん軍隊でしょうが、でも外国に戦争をするためにということでは少なくとも派遣はできなくなっている。だが、ともかく現に派遣はされているのですが、憲法が改定されれば、もっと歯止めがかからなくなるのではないかと危惧します。

どうもタイトルから内容がはずれてしまったですね。


定年退職とは?

2005-06-11 16:45:06 | 日記・エッセイ・コラム
定年退職とは私にとってなんだろうか。毎日勤務先に行く必要がなくなったこと。人と会う回数が減ったことである。どうせそんなにつきあいのよかった方でもないから、それほどには感じないだろうと思っていたが、勤めがあるということは人との最小限の出会いにせよあったということだ。大学のキャンパスで偶然に出会って立ち話というようなことも誰もが忙しくなってなくなってきた昨今ではあるが、でも全くなくなった訳でもなかった。

それが定年とともにほとんどなくなった。さびしいというべきかどうかはわからない。それほどさびしいとも思っていない。私はそれなりに自分の世界をもっていたから。

地位とか権力とかとは距離を保ってきた。それでよかった。若いときに基礎物理学研究所で湯川さんに接した。彼は少し神経質だったかもしれないが、権力とは無関係なところに身をおいていたことだけは学ぶべきだと思った。名声は湯川さんには自然とついて回ったからことさらに地位を求めなくてもよかったかもしれないが、そういうものに恬淡としたところがあった。


Levi-Civitaの記号

2005-06-01 12:46:54 | 数学

Levi-Civitaの記号に凝っている。といってもお解かりならない方がほとんどでしょうね。

「テンソル解析」という数学の分野の話題なんですが、これをどのように初学者に導入するかということがまず第一です。

それとLevi-Civitaの記号が二つかかった積ですが、それのうちで添字が一つだけ縮約されたときに成り立つ式をどうやって導出するかということに関心があるのです。

これについては自己PRになりますが、「数学散歩」(国土社)という最近出版した本の中で詳しく述べたのですが、もっと誰でもわかるような方法はないのかと模索しているのです。

最近、北野正雄「マクスウエル方程式」という雑誌「数理科学」の別冊が出てこの中にテンソルについても詳しく述べられています。私の著書の一部もこの本が出たお陰で不要になったかもしれません。

でも、(3.44)式がなかなか理解できないのです。これがわかるといいのですが。この式が上のLevi-Civitaの記号の縮約の式の証明というか導出になっているのですね。
北野さんのホームページにアクセスしてみようかな。

(2013.7.8付記) Levi-Civitaの記号の縮約とかLevi-Civitaの記号そのものについての解説は『数学・物理通信』に書いているので、検索をすれば、名古屋大学の谷村さんのサイトに簡単に行き着くのでそれを参照してほしい。

テンソルの詳しい説明は新しい『物理のためのベクトルとテンソル』(岩波書店)とか私の『数学散歩』(国土社)かその簡約版の『物理数学散歩』(国土社)を読んでほしい。『数学散歩』は品切れであり、書店で購入できないが、『物理数学散歩』の方はまだ購入できる。