物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

ホームページ「数学と物理の広場」の開設

2005-11-28 19:10:45 | 数学

ホームページ「数学と物理の広場」を開設した。とはいってもまだ作成途中である。

その中で私が愛媛大学工学部電気電子工学科に勤めていたときにまとめた数学学習のための小冊子「電気電子工学科ミニマム」をとりあえず

http://www18.ocn.ne.jp/~yano.t/minimum.pdf

のアドレスで公開する。

また、自著「数学散歩」(国土社、2005.1)の完成直前の原稿をホームページに載せたいと思っているが、ホームページ作成はしろうともいいところだし、時間の余裕もあまりないのでいつになるかわからない。

完成したものはすでに刊行されているが、あまり書店には出回っていないので、内容を見たい人が中身を見ることもできない。それに買わずに済ましたい人もいるだろう。

そういう人のためにできれば公開をしたいと考えている。


倍分ー反数の訂正

2005-11-22 14:53:33 | 数学

反数のことで先日書いたが、遠山啓のことで同僚だった矢野健太郎氏が書いた随筆に反数という命名に感心していたというのは私の記憶まちがいでした。昨夜その文庫本をとり出して読んでみたら、感心していたのは「倍分」という言葉でした。

これは約分の反対で通分するときなどに使う、分数の分子と分母とに同じ数をかけることです。そういう言葉があることによって例えば、通分するときの操作が説明しやすくなるという訳です。これは多分広辞苑にも出ていないだろうなあ。

しかし、いつのまに倍分という言葉と反数という言葉とが私の頭の中ですり替わったんだろう。おかしいですね。


直交曲線座標系1

2005-11-20 14:08:21 | 数学

座標系の間の変換が必要なことがしばしばある。

数学的には微分方程式を解くときにその方程式の特性にしたがって、いつも直交座標ではなく、3次元の極座標だとか円柱座標だとかで解くと簡単になることがある。

これは電磁気学でMaxwell方程式をある境界条件のもとに解くときとか、量子力学のSchr”odinge方程式を解くときとかに役立つ。

そのときに微分演算子の座標変換が必要になる。Laplacianの直交座標から極座標への変換については自著『数学散歩』(国土社)でも取り上げたが、そういう変換を行うときに直交曲線座標系の概念が有効である。

ところがその変換式の解説はベクトル解析の本にでているのだが、どれを読んでも分かりにくい。式を追うことができないのではなくて、概念が直感的にはっきりしないのだ。

昨夜「物理のかぎしっぽ」というホームページを見ていたら、これについて書いている記事があった。その前に「色々な座標系」というところを読みなさいとの指示があった。

それでそこを読んでみると今まで分かりにくかったところがある程度すっきりしてきた。まだ十分に理解をしていないし、理解ができていないだけではなく説明が不十分のところもあるようだが、基本的にはこの方向で直交曲線座標系の問題は分かりやすくなりそうである。

でもなぜ「直交曲線座標系」と表題をしていないのだろう。実際には直交曲線座標を扱っているのに。難しそうだという予見を与えないためなのだろうか。

直交曲線座標系をわかりやすく説明することはかなり以前から、私の課題として残されていた問題なので、もしこれがはっきりすれば一つの問題が解決したことになろう。

大場一郎さんの『相対論に必要な数学』(共立出版)を今朝から読もうとしているが、さて解決ができるかどうか。岩堀さんの『ベクトル解析』(裳華房)も直接には役立たないかもしれないが、参考になりそうである。楽しみである。


反数

2005-11-15 12:41:32 | 数学

いま反数と入れようとしても半数にしか変換してくれない。私が反数という言葉を知ったのは遠山啓著「数学入門」(岩波新書)だった。

これは普通に使われている言葉ではなく、遠山啓の発明した用語だと思っていた。というのは少なくとも学校ではそんな言葉は習った記憶もなかったから。

その証拠にというわけではないが、矢野健太郎氏の著書「おかしなおかしな数学者たち」(新潮文庫)に数学者についてのエッセイがあって、その中で遠山啓についても取り上げており、遠山啓について感心したという中の一つに反数という造語があるとあった。それで、反数という語は遠山が考え出したとばかり思っていた(注)。

ところが、ごく最近ベルの「数学をつくった人々」(Men of Mathematics)(銀林浩訳)(東京図書)をぱらぱらとめくっていたら、反数という語が出ているではないか。

「あれれ」、反数は遠山のつくった用語ではないのかなと思った。

反数という訳語は銀林さんが遠山さんに極めて近い人だから、すんなりと出てきても不思議ではないが、少なくとも反数という語に対応する英語があるということはわかった。

ではあまり知られてはいないが、一般的な用語なのかなと思って広辞苑の第五版を引いてみたら、確かに反数という語が出ていた。前の版では出ているかどうかはわからないが、辞書に出ているということは一般的な言葉らしい。

では元の英語ではどういうのだろう。和英の辞書が手元にないので、調べることができない。

今度新しく出た「算数・数学百科」(日本評論社)にはもちろん反数の説明はあるが、その英語はない。岩波書店から最近出た数学教育辞典には反数という言葉さえ出ていない。

銀林浩、純著「数・数式と図形の英語」(日興企画)には出ているのではないかと思ったが、どこかにあるはずだが、いまちょっと見当たらない。

ということでそのままになっていたが、今朝ひょっと書棚をみるとこの本があった。それでこの本の29ページを見るとopposite(s)とあった。

反数とはなにか。それを説明しないで言葉にだけこだわってきたが、これは簡単なことである。ある数aがあれば、それに負の符号をつけた-aが反数である。また、掛け算に対してある数aに対して逆数1/aという語があり、これはよく知られている。

逆数という概念からすると、反数は足し算という演算に対する逆数と考えられる。

逆という概念を拡張していけば、数の逆数とはちょっと違ってくるが逆格子ベクトルなんてものも考えられる。それはそれで有用だが、数の場合と違って逆格子ベクトルは元のベクトル空間には属さず、双対ベクトル空間といわれる元のベクトルとは別のベクトル空間に属している。

(注:2010.7.14付記) これは私の覚え間違いで矢野氏の感心した用語は「反数」ではなく「倍分」であった。訂正をこのブログの数日後にしているが、ここの部分は話の都合から訂正をしなかった。


四元数

2005-11-09 11:46:19 | 数学

四元数なんてものはついぞ関心がなかったのだが、昨日触れたCauchy-Lagrangeの恒等式とか不等式との関係において関心が生じてきた。四元数では 1 , i , j , k の4つの元があるから四元数というのだが、このうちの i , j , k がある代数を満たしている。

それがこれらの2乗はー1でこれはまず虚数単位 i と同じ性質でいいとしても、i , j ,  k の積が例えば i・ j =k といったようにベクトルのベクトル積と同じ性質を満たしている。だから四元数とベクトル積とは何か共通のものをもっているにちがいない。

いま私にわかっていることはそのくらいだが、『現代数学教育辞典』(明治図書)に森毅さんが書いているところでは四元数はベクトルへの橋渡しとなったと書いている。現在では四元数自身は廃れてしまってあまり省みられなくなっているが、それなりの影響を与えたということであろう。どういう風に関係しているのか知りたいと思っている(注)。

それと昨夜に複素数の虚数単位 i ^{2}=ー1となったことを複素数が体をなすことから、導こうとしたのだが、これはできなかった。『数学序説』(培風館)を今朝開けてみたら、この昨夜の考えはちょっと行き過ぎており、2次方程式の解があるようにということで数の範囲を広げてきたと説明があり、Hamiltonたちの試みも紹介されていた。もっとも四元数の導入の説明はなかったが。

虚数単位 i の意味を発見法的に導入した遠山啓の『数学入門』には昔感心したが、これはベルの”Men of Mathmatics”にすでにこのアイディアが書かれていることを知った。遠山は独自に考案したのかもしれないが、ベルという人はなかなか深い理解を数学にしていたことがわかる。これは分岐点の概念についてもそうであったことは自著『数学散歩』(国土社)でも触れた。

また、反数という言葉も遠山の発明かと思っていたが、これもベルの本の中にあるようだ。反数は英語でなんというのだろう(後でわかったが、oppositeという)。ベルの本の訳者は銀林浩さんなので、反数という訳をすっと与えているが、英語ではどういう言葉になっていたのだろう。

(2011.4.24付記) この四元数のブログを書いてから、なんどとなくこのブログに四元数のことを書いてきた。また、四元数についての認識は私としては深まっている。

四元数について書かかれたものとしてはJohn Stillwell (上野健爾・並川幸彦監訳)『数学のあゆみ』下巻(朝倉書店)20章 多元数 の説明がいいと私はいま思っている。

また、「数学・物理通信」(インターネットで検索せよ)に載せている、私の四元数の3回の記事が役立つと思う。このシリーズを、「数学・物理通信」にもう少し書き続けるつもりである。

このシリーズは上記の書とは独立に書かれたが、いま振り返って見るととても似通っている。私自身はこのシリーズを書くことによってようやく上記の『数学のあゆみ』に書いてあることを理解できたのである。

ただし、四元数といえば、現在では空間回転との関係であろうが、これについてはまだ書いていない。インターネットのたくさんのサイトでこのことを述べられているが、まだもう一つ納得ができていない。

(2016.12.6付記)  このブログは多分私が四元数のことに言及した、おそらくは最初のブログであろう。この後、何回も四元数について言及している。そして『四元数の発見』(海鳴社)という本まで書いてしまった。いまは四元数について私のまだよくわからない話題を探してはときどき「数学・物理通信」に書いている。

「数学・物理通信」についてはインターネットで検索すればすぐに検索できる。

 
(注)3Dグラフィックスの回転等で四元数が使われていることは今ではよく知られている。また、ロケットとか人工衛星の姿勢制御とかでも使われている。また実情はよくは知らないが、CNC(computer numerical control)の分野でも欠かせなくなってきているであろう。義弟がこのCNCの分野で日本での特許をとったのももう十年近く前である。
 
(2022.4.14付記) 何回もこのブログで書いたと思うが、小著『四元数の発見』を修正したいと思いながら、果たせてない。それにその修正部分を含んだ英訳本を書きたいと思いながら、これも果たせていない。
 
『四元数の発見』の修正部分のいくつかはすでに「数学・物理通信」に掲載してある。が、もっとも重要と考えている、第6章「四元数と空間回転 3」6.3節の書き換えはまだ果たしていない。
 
ここの節が唐突だといった読者はいないが、ちょっと唐突だと思っている。もっとも辛抱して読み進めてもらえば、話の筋が通るようになっている。それで、特にこの節の書き方がわるいとは思われないのであろう。
 
インターネットで検索すれば、けっこう『四元数の発見』に触れて下さっている方々も多くなった。私のいう、発見法的な数学の理解についてもそういうタイトルで四元数のことを書いておられる方も数名出てきた。
 
まだ数学の発見法的な理解をするという考え方に世間の理解が行き届いているとは言いかねるが、それでも一部には以前よりは普及してきている。
 
(2023.3.20付記)小著『四元数の発見』(海鳴社)を2014年11月に発行してそれがほぼようやく初刷の2000部を売りつくして第2刷が出たのが、昨年2022年11月であった。いくつかのミスプリントはこの第2版で修正をしてある。まあ私のように四元数の導入にこだわる人はいないだろうが、もしか100人に一人くらいそういう人がいるとしてもそういう人の要求には答えているつもりである。
 
 
 

Cauchy-Lagrangeの恒等式

2005-11-08 14:35:47 | 数学

前にもCauchy-Lagrangeの恒等式のことを書いたと思うが、Cauchyの不等式とかSchwarzの不等式とかいうのとあわせて関心を持っている。

もっともあまり詳しく書いたものは少ないのだが、あちこちの本の中から拾い読みをしている。

このLagrangeの恒等式がどういういきさつで出てきたかというのが、一つの関心事である。

私の現在分かっているところではどうも不等式の方が最初のような気がしている。それを証明しようとしてCauchy-Lagrangeの恒等式が出てきたような雰囲気である。これらと三角不等式とかの関係を少し調べてみたいと思っている。

Cauchy-Lagrangeの恒等式の証明も定数の数によるのだが、四元数を用いた証明とかベクトルによる証明とかあることがわかっている。

全く何十年かぶりにソーヤーの「数学へのプレリュード」を拾い読みしていたら、これについて出ていた。それで関心が復活したというわけである。いつかまとめてみたい。

(2011.9.27付記) その後、Cauchy-Lagrangeの恒等式の題で5つのエッセイを書いて、愛数協の機関誌「研究と実践」に載せた。

正確には第5番目のエッセイは投稿中なのでまだ発表されていない。これが何の役に立つかといわれれば、何の役にも立たないだろう。

だが、これは私の知的な旅である。後世になって誰かが読んでくれたのでよい。誰かが関心をもったという痕跡があればいいのである。

(2020.5.20付記) このCauchy-Lagrange恒等式が私の小著『四元数の発見』(海鳴社)を書く動機となった恒等式であった。これは私の個人史にとっては事実である。もっとも、それは他人から見たら取るに足らない小さなことである。

(2024.10.25付記) 最近ではこの関心がフルヴィッツの定理まで膨らんでいる。まだ十分にこのフルヴィッツの定理についてよく知っているわけではないがこれをよく知るまで私の関心事の旅は終わらない。


論文の準備がほぼできた

2005-11-06 16:09:39 | 物理学

工学ジャーナルという昔の工学部の紀要にあたるものへの投稿原稿の目途がやっとついた。今回は自分で計算したところは皆無。全部共同研究者の計算したもの。自分でも計算はしようとはしたんです。これでも。でもうまくいかなかった。

しかたなく、他人のまとめてくれたメモをもとに何とか15ページの論文をまとめた。すみません。いままでこんなことをしたことは一度もなかったのです。

でも、今年は世間の義理がなかなか果たせていないので、こんな結果になっています。分量的にはまあまあでしょう。
ガンマ関数を複素数でどう評価するか、Bessel関数で次数が純虚数のときどう評価するか等Mathematicaでやれば、なんてことないかもしれませんが、旧式の人間なのでfortranではどうするのかこれから調べてみたいと思っています。

研究というほどのこともしていないのだけれど、やはり研究的なことをしていないと小著「数学散歩」(国土社)に出てくるようなネタは得られないのです。多次元の球の体積を解析的に求めるというようなことを考えてみたのもやはりモンテカルロ積分を行ったときのその誤差評価ができるからと思ったからです。


これからしたいこと

2005-11-02 12:54:06 | 受験・学校

「何もする気がしない」ということもあるのですね。といいながら、ブログを書いていたりしていて矛盾しているかもしれませんが、昨日が締め切りの原稿があったのですが、まだ半分もできていないという状況で、する気が起こらないのは困ったことです。

11月11日と12日に熱海である集まりがあるので行かなければならないのですが、飛行機の切符も汽車の切符も手配をしていないという状況です。

「どうしようかなあ」と考えています。今回は汽車で行くつもりなのですが、時間がかかると疲れるので、大阪か名古屋まで飛行機にするかなと思いつつなんだか、切符を申し込みにいく心の余裕もない。できるだけ飛行機には乗りたくないのですが、でも体が楽だから飛行機に乗ってしまう。無事についたなら、飛行機ほど便利で快適なものはない。

話は急に変わるが、まだまだいくつかのテーマで数学や物理の分野でエッセイを書きたいのです。そのためにはまだまだ生きていたい。そんな気持ちでいつもいます。

いま考えているのは「定積分を求める方法」、「ガンマ関数」、「球の体積」、「超幾何関数」、「直交曲線座標系」、「Green関数」、「ラメの定数の導出」、「Lagrangeの恒等式とSchwarzの不等式」、「逆格子ベクトル」、「電磁気の単位の換算」等いろいろなテーマがあります。

これらは学術論文にはなりませんが、教育としては役に立つものだと思います。『続・数学散歩』とでも名づけるべきものの構想の一部です。私の友人のYamaさんとかTomiさんとかに聞かれたテーマもまだきちんとした回答を出していないし、「日暮れて道遠し」といった感があります。

できたら、「電気電子工学科ミニマム」に線形代数の項を追加してその英訳を出したいとも思っています。

Goldstein『古典力学』(吉岡書店)の翻訳もあるし、それを早く済ませて上に書いたテーマのエッセイを書くこと、またe-Learningのコンテンツをつくること等、自分のやりたいことに集中したいのですが、なかなかそういう風にはなれないでいます(2017.7.8 注)。

しかし、自分のやりたいと思うことがなくなったら、お仕舞いですね。

(2017.7.8 付記)上に書いたやりたいことの中で「球の体積」、「超幾何関数」、「Green関数」は全部ではないが、その一部を数学エッセイに書いた(「数学・物理通信」参照)。ところが他のテーマはまったく手が付けられていない。私の課題はほとんど達成されていないということがわかった。「ガンマ関数」、「直交曲線座標系」はまたこのごろ気になりだしたテーマである。

(2017.7.8 注) Goldstein『古典力学』(吉岡書店)の翻訳とは、この著名な書の第3版の翻訳のことで、これはすでに2006.6と2009.3に発行されている。

(2019.10.10付記)
2005.11.2に考えていたテーマ
「定積分を求める方法」、「ガンマ関数」、「球の体積」、「超幾何関数」、「直交曲線座標系」、「Green関数」、「ラメの定数の導出」、「Lagrangeの恒等式とSchwarzの不等式」、「逆格子ベクトル」、「電磁気の単位の換算」
の中で
「定積分を求める方法」、「球の体積」、「Green関数」、「ラメの定数の導出」はすでに
タイトルは同じではないが、「数学・物理通信」に書いた。「超幾何関数」については第1報は書いたが、続編を書くことができない。

なかなか宿題ができない小学生のようである。

「ガンマ関数」、「直交曲線座標系」、「Lagrangeの恒等式とSchwarzの不等式」については私にとってどこが問題だったのかも忘れてしまった。

「逆格子ベクトル」については準備稿を書いてあるが、なかなか完成原稿にはならない。