ドイツ語のクラスで一緒のTさんが、スイス、ドイツの旅行から帰ってきて、そこで写した写真をもらった。逆さマッタホルンである。これはマッタホルンが湖に逆さに移っているのをマッタホルンと共に撮った写真である。
ツェルマットで撮った写真で貴重なものである。それを大きく引き伸ばしてかつ額に入れたものをもらったのだ。大事にしたい。
この逆さマッタホルンで思い出したのは学生の頃に島崎敏樹という精神病理学者がいて、岩波新書に魅力的な書を数冊出していたが、その中に湖の湖面に写った山の写真があり、それを90度回転させた写真を載せていたことである。
それを思い出してこの写真をもらったときに90度回転して見せたが、その意味をわかった人はいなかったに違いない。逆さマッタホルンも90度回転してみると異様な感じがするにちがいない。
これは鏡を足元に置いたときの像と同じであって、鏡に映った像は上下が逆さまに見える。
いつだったかテレビの英語会話でオーストラリアでは南極が上になった地図をお土産に売っているとかでそれを見たことがあった。
日本の世界地図では日本が真ん中に描かれていたりするので日本が重要な国であり、どこの国の地図にでもそう描かれていると日本人は思いがちだが、一般にはそうではない。
話はまったく飛ぶが、先日、たまたま見た中国語会話のテレビで日本人と中国人の友達が肩を組んでいるのを見て、中国では日本と同じ感覚だなと思ったが、これは世界的には誤解を生むしぐさである。
もしヨーロッパで男性同士が肩を組んでいたり、するとこれはゲイとかホモだと思われてしまう。単なる親愛の情とはみなされないのだ。
フライブルクのゲーテ・インスティチュートでドイツ語を学んでいたときに、そのインスティチュートが計画したワイン試飲の小旅行があって、ブライザッハに行った。
ワインの試飲会の後で、近くの丘の上の教会の庭でライン川の向こうのフランスの方を見たりしながら、みんなで並んで座っていたが、スペインからの男子学生が隣の男子学生の肩に手を回しているのを見た。
そのときはなんとも思わなかったが、その後で友人のイタリア人の化学者が「けしからん」と怒っていた。そのときにようやくその意味を知った。
後でその意味を知ってその怒りも無理からぬと思ったものである。一方、男性が知り合いの女性の肩に手を回すのはヨーロッパではそれほど問題ではないと思う。