11月8日に星野芳郎が82歳で亡くなった。
それでというわけでもないのだが、星野の著作を読み返している。というかむしろいままで読んでいなかったものを読んでいる。
例えば、星野芳郎著作集の『人間論』とか『科学技術評論』とかである。またアマゾンで新しい本が出ているのを知ったので生協で取り寄せた。それが標題の書である。
これらの書にひょっとしたら武谷三男のことが書かれているかと思ったからでもあるが,ちょっとした言及はあるが,名前くらいしかでていない。
星野は若いときには右翼だったというから、それがどうして右翼であることを止めたのかが興味があった。
彼の言によると若いときの恋愛の破綻が彼を国家というものに批判的にしたということらしい。もちろん単純にそれだけではないようだが、それは彼の自己分析をいまは素直に受け止めておこう。
こういったことを80歳を越えて彼は書いている。立命館大学や帝京大学に勤めたこともあったが、主に在野の技術評論家として仕事をした。こういうことができたのはやはり彼の強烈な個性と優れた資質によるのであろう。
仕事の上では武谷やその他の人との交流はあっただろうが、なかなか優れた人であったようだ。単に武谷の弟子といった評価はやめてもう一度直接に彼を評価しなければならないようである。
武谷が星野を評した言葉を私の先生のOさんから聞いたことがある。官僚でも星野の論理と口論の上手さに従わざるを得ないくらいの頭のよさだと言っていたとか。
しかし、朝日新聞には彼の業績を回顧する誰かの寄稿はなかったと思う。社会に対する影響を評価されていないということだろうか。
それとも反権力的なところがいけないのであろうか。それともこれは科学技術に新聞社は弱いことを示しているだけなのであろうか。朝日新聞の見識が疑われると思う。