というのは日本語では『部分と全体』(みすず書房)という題で出版されている、ドイツの物理学者W. Heisenbergの自伝である。もちろん『部分と全体』はすでに読んだことがある。
ところが、このドイツ語版を先日に東京神田の古書店である、明倫館の店頭にあった中に見つけて買った。定価ははじめ900円がついていたが、最近ではドイツ語を読む人など一部の人を除いていないと見えて、私が見つけた時には300円の値段がついていた。
それで私が他の本と合わせて購入した次第である。私だってそんなにすらすらとドイツ語が読めるわけではない。それで、興味がありそうな章だけ読んで見ようとしているのだが、あまり進んではいない。
dtv(Deutscher Taschenbuch Verlag)の1冊であるので、日本でのいわば新書みたいな感じである。Taschenbuchとは直訳すれば、ポケット版書籍とでもなろうか。一番関心があるのはHeisenbergが行列力学の端緒をHelgolandで見つけたという箇所であるが、その後はEinsteinとの話が出ている。話はドイツ語からの訳書で読んで知ったことだが、Heisenbergが原子内で電子の軌道は観測できないから原子の理論から軌道という概念を追い払うという考えだったのに、Einsteinはそういう考えはおかしいという異論を述べたというのである(注)。
Heisenbergは特殊相対論の論文でそういう考えをあなたは展開したではないですかと反論したが、それでもやはりそういう考えはとるべきではないとEinsteinがしたという話であり、観測できる量は理論が決定するのだというEinsteinの主張が述べられる。
この章が一番興味深いので、ここだけでも通して読んで見たいと思いながら、まだ通して読むことができていない。
最近NHKのEテレで放送の「仕事の英会話」の中にある会社の営業担当者(?)の名前としてWerner Heisenbergという人が出てくる。Heisenbergも死後およそ40年も経つと英会話の一人の登場人物の名として復活を遂げているとはご存知あるまい。
ちなみにハイゼンベルクHeisenbergは1901年12月生まれで、1976年2月に亡くなっている。 ちなみに語尾のgはクと発音する。ハイゼンベルグではない。
(注)電子の軌跡は霧箱(cloud Chamber)や泡箱(buble chamber)の中で見ることができる。これは厳密には電子そのものの軌跡ではないかもしれないが、一応難しいことをいわずに電子の軌跡であるとしておくと、電子の軌跡は観測にかかることになる。もっともこれは原子内の電子の軌跡ではない。