サーキュラー『数学・物理通信』に連載をしている、四元数シリーズの「四元数と空間回転5」の原稿をようやく書き始めた。
今回は回転公式としては誰にでもなじみのある、Rodriguesの回転公式の導出を中心としたい。
Rodriguesの回転公式とは普通のベクトルの有限角の回転公式である。だから、名前は知らなくても、この回転公式を物理で学んだ方々は大抵知っている。
それをAltman の"Rotations, Quaternions and Double Group" (Dover)の説明にしたがって、述べようと思って一昨日草稿を書いた。
しかし、ちょっとわかり難いところがあると感じたので、別の説明を昨日ゴールドスタイン『古典力学』 3版 (上)(吉岡書店)を見たら、どうもこちらの説明の方が簡明なようだ。
それでRodriguesの回転公式の導出法をゴールドスタイン流の説明に置き換えた方がいいかなと思うようになった。
Altmanの説明も簡潔なのでこちらが気に入って、この説明を採用することにずっと以前から決めていたのだが、実際に文章を書いてみて、途中の計算の過程をつけ加えているうちになんだか複雑と感じるようになってきた。
どちらの説明を最終的にとるかはまだ決定をしていないが、多分ゴールドスタインの説明法を採用する可能性が強い。
ちなみにAltmanはこの回転公式をconical transformationと呼んでいる。だが、他の文献でconical transformationという名を聞いたり、読んだりしたことがない。
また、まったくどうでもいいことかもしれないが、Rodriguesの発音はロドリーグでいいのだろうか。それともロドリーゲスと発音するのだろうか。
(2017.10.17付記)このRodriguesの回転公式の私の説明で私のとった回転角の正の方向が普通のとり方と反対になっている。それを標準的な角度のとり方と一致させた方がいいのではないかと感じている。『四元数の発見』(海鳴社)をそのうちに英訳するつもりでいるのだが、なかなか取りかかれていない。英訳のときにはどうしても普通の回転角の正の方向のとり方をとるようにしないといけないと思っている。
(2019.12.23付記) いろいろ障害があって、とどこおっているが、この代替のエッセイはできあがっており、「数学・物理通信」9巻9号に掲載を予定している。これは将来の『四元数の発見』の英訳のための準備の一環である。
これとか「Pauli行列の導出」とかはその作業の一環である。もっとも「Pauli行列の導出」の方はまだ原稿が十分でないためにこちらはいつ「数学・物理通信」に掲載できるのか、目途が立たなくなった。
かなりのページの原稿はあるが、自分自身の理解がまだ十分でないということがわかったのが、途中で原稿を引き下げることになった理由である。
『四元数の発見』を改訂をしたいと海鳴社に申し出たら、まだ手元に500部以上残っており、一年によく売れても70部なので、5年か6年は無理との出版社の言い分はどうもごもっともである。
5年か6年もすると、そのうちに海鳴社は廃業するかもしれない。四元数の補遺のエッセイもその後に4編ほど「数学・物理通信」に書いているので、それとか『四元数の発見』では補注となったところを本文中に入れたほうがいいかもしれないなどと考えている。
それらが英訳を考える理由である。それにgoogleの翻訳プログラムがかなり良くなっており、はじめから自分で英語に訳さなくてもまずはgoogleの翻訳を使ってみたらとのお勧めも1,2いただいている。半分くらいはそのまま使えるのではないかというご意見もある。
(2021.1.30付記) 上に書いたRodriguesの回転公式の回転角を反時計方向にするエッセイは「数学・物理通信」9巻9号(2020.1)に書いて掲載されている。また「Pauliの行列の導出」は「数学・物理通信」9巻10号(2020.2)に掲載した。あわせて読まれるといい。
「Pauliの行列の導出」は朝永振一郎さんの『角運動量とスピン』(みすず書房)の該当箇所を読み解いたものであり、これによって朝永さんの解説がより分かりやすくなったのではないかと思われる。
(2024.3.27付記) 最近知ったことで自分の不勉強を白状することになるが、セガの「線形代数講座」によるとRodriguesの回転公式は簡単に導けていいが、回転の合成が難しいとか。そのため、四元数による回転の合成とか行列による回転の合成がされるのが普通であるという。
もちろん、Rodriguesの回転公式もすぐに行列の形に書けるので、それを使えば難しいことはないのはもちろんである。このときにテンソル記法を使えば、ずいぶん便利である。
空間回転の表し方は
1)Rodriguesの回転
2)Euler角による回転
3)四元数による回転
の3つがある。従来2)が使われてきたが、最近は3)が使われているであろう。小著『四元数の発見』(海鳴社)を見てほしい。