これは多分国会図書館が開設されたころ参議院議員であった羽仁五郎が勧めて国会図書館に書かれるようになった言葉だと思っていた。その由来はもちろん知らない。
ところが、先にも書いた佐藤優さんの「宇野弘蔵『経済原論』を読む」(岩波の『図書』2016年2月号)の終りの方に新約聖書の言葉として
「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」
(「ヨハネによる福音書」八章三十二節)
とあった。
さすがに歴史家だった羽仁五郎はこのことも知っていて国会図書館にこの文を掲げたであろう。一つ賢くなった。
ちなみに佐藤優さんは『経済原論』を数十回読みなおしているとあった。このことだけでも佐藤さんが優れた人であることが窺える。残念ながら、私に数十回読みなおした本などない。
たとえば、湯川秀樹が若いころ、HeisenbergとPauliの長大な場の量子論の論文をくり返し読んだとか、誰かアメリカかかヨーロッパの物理学者だったかが、FeynmanかDysonの量子電気力学の論文を数十回くり返し読んだとかどこかで読んだことはあるけれども。
朝永振一郎の『量子力学』I(みすず書房)は学生時代から数回読み返したことはあるけれども、多分その読んだ回数はどんなにひいき目に見ても片手の指の数を越えないであろう。