小川洋子さんの「博士の愛した数式」を始めて通して読んだ。もちろん小説としての面白味もあるのだが、そこでとりあげられた数学としてどんなことがあるのかが私の関心事である。
そういう読み方をする人はあまりいないのだろうと思われるが、読んでいて小川さんの対数の理解がまったく正しいのに感心した。これはひょっとしたら、高校生に数学を教えている先生でも知らない方もあるかもしれないのに。
小川さんは常用対数からはじめて自然対数に入っているから、それだとどうしても対数の定義が必要だ。小川さんはいう。
「対数とは何か、からはじめなければならない。対数とは、定数を何乗すれば、任意の数になるかという、指数の値である。」
定数 a^{x}=bとなる、x のことを対数という。もっともここで与えられている数は a, b である。普通に指数というときには a, x が与えられており、そのときに b がいくらかを求める。
一方、対数という用語を使うときには a, b は与えられているが、 x は未知である。このときx=log_{a}bが成り立つ。この x を対数というのだが、 a^{x}=b の表示では x は指数である。だからこの表し方を私は指数表示と呼び、x=log_{a}bと表したときには対数表示と呼ぶことにしている。
指数表示とか対数表示とかいう用語は普通には使われないが、こういう用語を使って区別するのが適切なのではないかと思っている。
さらに
「ちなみに、定数の方は``底”と呼ばれる。たとえば、底が10ならば、100の対数(log_{10}100)は100=10^{2}
だから2となる。」
「普段使っている十進数では、10を底とする対数を用いるのが便利で、これは常用対数と名付けれているが、数学の理論においては、eを底とする対数もまた、計り知れない役目を負っているらしい。こちらは自然対数と呼ばれている。eを何乗すれば、与えられた数が得られるか、というその指数を考えるのである。つまりeは``自然対数の底”ということになる。」
とある。そうか。自然対数の底を使って数 e を導入しているのだ。それなら対数の定義がいる。数 e の導入のしかたはいろいろあるが、この説明が一番初等的であろう。つまり、予備知識をあまり必要としない。
これはこの書の最高点のところであり、e{\pi i}+1=0 を説明するところである。残念ながら、e{\pi i}+1=0 の説明はオイラーの公式と関係があるとしか語られていないが、これが小説であり、数学の書物ではないのでしかたがないであろう。
そういう読み方をする人はあまりいないのだろうと思われるが、読んでいて小川さんの対数の理解がまったく正しいのに感心した。これはひょっとしたら、高校生に数学を教えている先生でも知らない方もあるかもしれないのに。
小川さんは常用対数からはじめて自然対数に入っているから、それだとどうしても対数の定義が必要だ。小川さんはいう。
「対数とは何か、からはじめなければならない。対数とは、定数を何乗すれば、任意の数になるかという、指数の値である。」
定数 a^{x}=bとなる、x のことを対数という。もっともここで与えられている数は a, b である。普通に指数というときには a, x が与えられており、そのときに b がいくらかを求める。
一方、対数という用語を使うときには a, b は与えられているが、 x は未知である。このときx=log_{a}bが成り立つ。この x を対数というのだが、 a^{x}=b の表示では x は指数である。だからこの表し方を私は指数表示と呼び、x=log_{a}bと表したときには対数表示と呼ぶことにしている。
指数表示とか対数表示とかいう用語は普通には使われないが、こういう用語を使って区別するのが適切なのではないかと思っている。
さらに
「ちなみに、定数の方は``底”と呼ばれる。たとえば、底が10ならば、100の対数(log_{10}100)は100=10^{2}
だから2となる。」
「普段使っている十進数では、10を底とする対数を用いるのが便利で、これは常用対数と名付けれているが、数学の理論においては、eを底とする対数もまた、計り知れない役目を負っているらしい。こちらは自然対数と呼ばれている。eを何乗すれば、与えられた数が得られるか、というその指数を考えるのである。つまりeは``自然対数の底”ということになる。」
とある。そうか。自然対数の底を使って数 e を導入しているのだ。それなら対数の定義がいる。数 e の導入のしかたはいろいろあるが、この説明が一番初等的であろう。つまり、予備知識をあまり必要としない。
これはこの書の最高点のところであり、e{\pi i}+1=0 を説明するところである。残念ながら、e{\pi i}+1=0 の説明はオイラーの公式と関係があるとしか語られていないが、これが小説であり、数学の書物ではないのでしかたがないであろう。