標題の本を出版している人がいる。土屋秀夫という人である。
どういう人かわからないのだが、東京大学と東北大学の物理の図書室にこの本は登録されている。国立国会図書館には所蔵されていないようなので、これは自費出版の本かと思われる。ページ数が521ページと分厚い本なのでかなりの大著といえる。
出版社の創栄出版に問い合わせたのだが、今日は土曜日なので返事は月曜日以降になるだろう。創栄出版は仙台の出版社で自費出版等を盛んに行っているとある。
googleで検索したら、日大の東北高校を平成11年に退職した人に土屋秀夫さんという方がいる。日大東北高校は野球で有名な高校であるから、調べてみると福島県郡山市にあることがわかった。創栄出版の返事が不発に終われば、ここに照会をしてみるつもりである。
詳しい朝永の量子力学の研究がなされているとすれば、やはり一読に値するだろう。『朝永振一郎著の「量子力学」の研究』を手に入れて、ぜひ読みたいと思っている。
(2011.11.3付記)
この書を東京大学の物理図書館から借り出して、コピーをとった。だからこの書のコピーをいまではもっている。詳しい計算とか内容の解説をした書である。
これは自費出版された書で、出版社にも問い合わせたが、1部も残っていなかったということは別のブログで書いたかもしれない。また、出版社に著者への連絡先がわからないかと尋ねたのだが、いつのまにか出版社でも連絡先がわからなくなったとのことであった。
私自身も朝永の『量子力学 I 』 は2回ほど講義をしたことがあるので、そのノートをつくってもっているが、そのノートとこの著書と比べてみたいと思ってもいる。
ともかく、なかなかしっかり計算をしてある書で、内容の解説も書かれている。この書が一般書として出されていないのは残念である。
しかし、前にも書いたかもしれないが、式の表わし方を工夫するとかは必要だと思っている。また、この書の活字はあまり感心しないし、式の表示も現在ではlatex等で表示すれば、もっときれいで見やすくなるであろう。どこかの出版社で出版をしてくれないものだろうか。
内容の問題ではなく、本の活字とかの見かけが問題だというつもりであるので、上に書いた批判についてご寛容をお願いしたい。
(2020.2.7付記) 土屋秀夫さんは他でも書いたと思うが、東京大学工学部化学工学科を1971年に卒業された方である。私よりも7歳か8歳若い方である。
「波源が波の進行速度より速い現象」のことを学んだのは多分流体力学の講義のときだと思う。流体力学の何たるかは結局わからずじまいであったが、この現象がどんなところに現れるかは頭に残った。
この現象の一番いい例は船のつくる波である。この波の速さよりも船の速さの方が一般に速い。
次の例としては衝撃波であろう。例えば、ジェット戦闘機が急降下して衝撃波をつくる。そしてこの波によって家のガラス窓がブルブルと震えたりすることがある。このようにして音速より速く飛行する飛行機によってつくられた衝撃波も波源の速度が衝撃波の速度よりも速いという特性をもつ。
第三の例としては水中を走る荷電粒子の放出する、Cerenkov(チェレンコフ)輻射である。光は真空中では10^{8}m/sの3 倍の速さであるが、水中では荷電粒子の速さの方が、その荷電粒子から放出される光の速さより速くなることがある。
というのは真空中での光の速さcをその媒質の屈折率nで割ったものがその媒質中での光の速さになるからである。媒質の屈折率 n が1より大きいとき、この媒質での光の速度はもう真空中の光ではなく、c/n となる。このような場合にはその荷電粒子の放出する電磁波の速さよりもその荷電粒子の速さの方が大きくなることがある。
原子炉屋さんなどはこういう原子炉の燃料棒がある水中で発生するCerenkov輻射を日常茶飯に見ているらしい。もう亡くなられたが、私の友人の核化学者であった Tam さんを京都大学の原子炉実験所に訪ねたときにそういう話をしてくれた。
私の知っている例としてはこの3つであるが、他にも例があるかもしれない。多分この現象のことは流体力学の講義で M 先生に教わったのだと思うが、それはもう定かではない。それともそのときのテキストに使われた谷一郎先生の『流れ学』(岩波全書)の中に書かれていたのだろうか。
(2013.2.18 付記) このブログは2007.8.23付けの古いものであり、まさか隕石が落ちてきた時に生じる衝撃波で1000人を超える人が負傷をするなどということが起こるとは予想だにしていなかった。
そういうことが最近、現実にロシアで起こったので、このブログもどなたかの検索にひっかかって読まれたということがわかった。
朝日新聞の隕石の被害の解説にも波源の移動速度(これは隕石の落下速度のこと)が音の伝わる速さよりも速い現象であると説明がされていた。それがどれほど他の現象でも一般的なのかということは、隕石とは関係がないので書かれていなかった。
昨日の朝食の時に妻にその話をしたが、妻はまったくの素人なので、理解は難しかったであろう。しかし、ここに書いたようなことも理解されるとか関心を持たれるというのは、ある種の進歩だと思っている。
昨日、谷一郎『流れ学』(岩波全書)をひさしぶり取り出してきて調べてみたが、ちょっと見たところでは表題に書いた、「波源が波の進行速度より速い現象」の説明はなさそうである。もしそれが正しいとすれば、私たちに流体力学を教えた、三村洋一教授の講義から知ったことであったろうか。
その後 2008.6.27 日付のブログで『湯川秀樹と隕石』という記事を書いている。
(2013.5.8 付記) 5月5日の日曜日にEテレのサイエンスゼロを見ていたら、上の衝撃波による圧力波のことをソニック・ブームと言っていた。ジェット旅客機はこの何十年かで断然安全になってきたが、ソニック・ブームの被害のためにジェットの速度は音速を越えることを控えているのだという。
コンコルドというジェット機が超音速の飛行機としてフランスとイギリスの手で共同開発されたが、ソニック・ブームの被害のためにあまり使われなかったという。製造は20機だったという。
ところが、最近ソニック・ブームなしの超音速旅客機ができそうになっているのだという。技術の進歩だが、果たしてそういうことが私の生きている時代に実現するのだろうか。
(2017.1.27付記) 私のブログの中のランク10位で検索をされていた。このブログの扱っている内容が内容だけに普通の人の関心を引く内容ではない。それでも検索されたということはこういう現象に関心がある人が私以外にもおられるということである。
「波源が波の進行速度より速い現象」の説明をどこかで読んだことはなく、どうしてそういうことを私が知ったのかもいまではわからない。M教授、すなわち、三村教授の講義でそういうことが説明されたのかどうかもわからない。しかし、現象自身は多分流体力学の講義で触れられたのであろう。
谷一郎さんの『流れ学』(岩波全書)に出ていたと思って数年前に探したのだが、載っていないようだったが、それも探し方が十分でなかったのかもしれない。多分、大学のときの物理の同級生に聞いてみてもこんなマニアックな内容を覚えているかどうかはわからない。