『遠山啓著作集』(太郎次郎社)の数学教育論集に書かれた遠山さんの高校数学入門の「三角関数」をここ数日読んでいた。わからないところもあるのだが、およそはわかった。
それで私の書いた三角関数の解説と比べると、遠山さんの方が内容的に優れている。これはもちろん当然であるのだろうが、私の解説はあまりに即物的で広がりに欠けている。これではだめだと思い知った。
遠山さんの解説にも高校生でない私にも難しいところもあるが、悠揚迫らず解説している。
彼の解説でわからなかったのがヘロンの公式の幾何学的な証明であった。ヘロンの公式とは三角形の面積を三角形の辺の長さだけで求める公式なのだが、その代数的証明は有名であり、こちらは問題がまったくない。
この幾何学的な証明を読んでもよくわからなかったので、秋山武太郎『三角法』(日新出版)を引っ張り出してきて読んだ。これにはいろいろ説明が書かれていて、複雑である。これをもうちょっと簡略にした証明を思いついた。
これは遠山さんの証明にすでに書かれていたことかもしれないが、その証明が簡略過ぎて、すぐには読み取れなかった。もちろん新しい証明とまで言うほどのことではないが、秋山さんの幾何学的な証明よりは簡略である。
遠山さんの証明は簡略なのだが、ちょっと説明が不足であろうと思っている。12月発行の「数学・物理通信」にはその証明を載せたいと思っている。
ヘロンの公式に幾何学的な証明があることなど知らなかった。