(愛知県豊川市千両町糸宅 旧郷社 2007年8月24日)
舒明天皇年間(529-41)犬上氏によって創建されたと伝わる犬頭神社は、保食大神(うけもちのおおかみ)を祀る。犬上氏によって奨励された養蚕により、朝廷に生糸が献上された。この生糸は犬頭の糸と呼ばれ、平安時代の今昔物語集には次のように掲載されている。「三河国の郡司の妻が夫に捨てられ寂しい日を送っていた。ある日、大事に飼っていた一匹の蚕を飼い犬に食べられてしまった。妻は嘆き悲しんでいると、その飼い犬の鼻の穴から今までにない雪のような白い光沢のある上質の糸を出した。偶然その場を通りかかった夫は妻からこの様子を聞かされ、今までの自分を恥ずかしく思い妻のもとに戻った。この話が都に伝えられ、それ以後この糸を犬頭のとして収められるようになった。」また、神社の付近は糸宅(いとげ)と呼ばれ、郡司の邸宅があったという。付近には当時の山茶碗が散見できる他、縄文時代の石器も散見することがある。
千両村犬頭神社で紡いだ糸を東上村籰繰神社で糸巻し、足山田村服織神社で機織りされた。