京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 名を呼んで、名を呼ぼう

2011年02月18日 | 日々の暮らしの中で
                                       
『かんさい特集  認知症を抱える老夫婦・山登り1年の記録』(午後8時NHK総合)をみた。~ふたりでめざす登山1万回~とある。

学生時代に出会った二人。夫の事業失敗のたびに、妻は看護士をして蓄えていたものを黙って差し出していたという。
苦労をかけたと思っている。この先10年、15年・20年と妻への償いだ…、と夫は穏やかに語った。料理も洗濯も衣服を身につけることも、身の回りのことは何も自分ではできなくなってしまった節子さん。夫は10か条の接し方を自らに課して、認知症の進む妻を支え、共に生きている。心を通わすことを大切にしてきたと。

二人の趣味だった登山を始めて35年、元気に明るく生きていこうと、今は金剛山登山1万回を目指しているのだった。雪の降る日、手をつなぎ、いろいろなことを語りかけながら9840回目を登りきった。「よかったなあ、今日も来れて」
「節子、ウグイスが鳴いている」「節子、きれいだねえ、ほら見てごらん」
「節子、そう言わんと少し(お茶を)飲んだら」
「節子、手を貸して」「節子と手をつなぐの好きだから」「節子の手はあったかい」

ふと、気づいた。節子、節子、節子、節子は、節子が、節子に・・・と、いったい何度 妻の名を呼んでいたことか!

     
その昔、TBSアナウンサーだった榎本勝起氏はこんな事を番組放送中に話されていたようだ。 

   名を呼んで 叱るときより 誉めるとき
   名を呼ぼう 朝・夕・晩と 温かく
        相手の心 ノックする声
   名を呼ぶは あなたの愛の メッセージ
        愛なき人の 名をば誰が呼ぶ

そして、「名前とは、単品限りのブランド。家族の、友人の、その人の名を、もっともっと呼び合おう」と。

昭和63年発行とあるから古くなったが、著書『榎さんの 魅力の女性(ひと)讃歌』に収められていた。
亡き弟の書架から抜き取ったままになった1冊であった。珍しくつい最近、ページを開いたのだった。 
コメント (4)
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