田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

豊かな大地“北海道”

2010-10-27 14:13:43 | 札幌学 & ほっかいどう学
 「豊かな大地“北海道”」という言い方はよく使われる惹句である。今回はあらためてそのことを考える機会となった

 10月24日(日)13時から「北海道新聞野生生物基金ネイチャーフォーラム ~北海道の大自然を未来へ~ 」 が道新ホールで開催され参加してきた。

         

 フォーラムは2部構成になっていて、第1部が「自然の息吹 ~北海道」と題して自然写真家の矢本純一氏によるスライド&トークだった。
 山本氏はプロとしてデビューしてまだ日が浅いそうだが、北海道の自然を題材にして精力的に写真を撮り続けているようだ。
 山本氏が切り撮る北海道の自然は私が思っていた以上に魅力に満ちた世界だった。

 スライドを見ていて気付いたことが一つあった。
 カメラのレンズは時として人が見えないものまで写し撮ってしまうことがあることを…。
 特に光量が少ないときにそのことが顕著であり、そのことがまた北海道の自然の魅力を再発見することにも繋がった…。

 第2部は「大地の響き、いのちのうた」と題して、民族楽器によるネイチャー・アコースティック・アンサンブルのコンサートだった。
 プレイヤーは、ラテンアメリカのサンポーニャやケーナを奏でる岡田浩安さん、モンゴルの馬頭琴と喉歌を駆使する嵯峨治彦さん、ギター奏者の智詠さん、ブラジルのさまざまなパーカッションを操る渡辺亮さん、そしてラテンアメリカの打楽器を操りボーカルも担当する吉田ゆう子さんの5人のユニットだった。

 ふだんはそれぞれ独自に活動している5人がこの日のためにユニットを組んだようだ。
 南米とモンゴル…、遠く離れた地域で育まれた楽器が同じステージで奏でられても一つも違和感のようなものを感じずに聴くことができた。
 南米、そしてモンゴルと自然豊かな中で育まれた楽器にはどこかに通底するものがあるのだろうか?

 コンサートは彼ら5人が紡ぎだす音とともに、山本さんが写した北海道の自然がスライドでバックに写されながら進行した。
 その音と映像にも違和感を感ずるどころか、アコースティックな音色が北海道の自然に良くマッチしていた。
 特に、岡田さんを中心としてスライドに合わせて即興的に音を紡ぎ出した時には私自身が深い森の中にいるような錯覚に陥るほど素敵な瞬間だった。

 ステージの彼らが絶賛した北海道の自然を私ももっともっと味わわねばならないと感じたひと時だった。

ほっかいどうにできること

2010-10-09 15:05:40 | 札幌学 & ほっかいどう学
 広大な土地、食料生産基地、四季のメリハリ、観光資源etc.…、ポテンシャルに富んだ土地と言われ続けながら、低空飛行を続ける北海道。その北海道の可能性について各分野で活躍する人たちのシンポジウムを聴いたのだが…。

              
        ※ シンポジウムの写真はNGでした。したがってしわくちゃの   
         パンフレットでお茶を濁すことにします。             

 10月5日(日)日本経済新聞社の札幌印刷40年を記念して表記シンポジウムが札幌パークホテルを開場に開催され参加した。

 シンポジウムはまず、北海道日本ハムファイターズオーナーの大社啓二氏「食とスポーツでほっかいどうを元気に」 と題する基調講演から始まった。
 大社氏はファイターズのオーナーであるとともに、日本ハムの取締役であることから、二つの事業を融合しながら北海道に貢献できることを語った。
 しかし、聞いていて私は無理して二つの事業を融合したような理論立てが必要なのか、と思った。「食」の産業である日本ハムが「スポーツ(野球)チーム」を持つ意義を並べ立てられても後付のように感じられてならなかった。
 北海道民としては、それぞれ違う分野の企業なのだから、それぞれ独立した理念で北海道への貢献を考えてくれればそれで良いのではないかと思った。

 実際に「食」の分野では北海道各地に養豚場や養鶏場を展開して多くの雇用を生んでいるし、「野球」に関しては目に見えた形で北海道民を元気にしてくれている。私は日本ハムの二つの事業がそれぞれにこれからも順調に事業を継続してくれることが何よりの北海道への貢献ではないかと思った。

 続いて、四氏が登壇してのパネルディスカッションに移った。
 そのパネルの前に、パネラーの一人である(株)グーグル名誉会長の村上憲郎氏「グーグルのミッションは北海道の役に立つのか?」と題しての話題提供を行った。
 グーグルのミッションは、世界中の情報を整理して①世界中の人がアクセスできて、使えるようにすること、②それを無料で提供する、③収入は広告のみで、というところまでは付いていけたが、それからの少し専門的なネットの世界の話は私には理解不能だった。ただ、村上氏が「これからはますます距離が意味を持たなくなる」ということを「Death of Distance」と紹介したことが印象的だった。

 続いて行われてパネルディスカッションの登壇者は、村上氏のほかに釧路公立大学長の小磯修二氏、(株)植松電機専務取締役の植松努氏、知床羅臼町観光協会事務局長の三浦里紗氏の四氏だった。
 仕事の出勤時間が迫っていたことから最後まで聞けなかったのが残念だったが、刺激を受けたのはグーグルの村上氏の発言だった。
 村上氏は大分県の出身ということで、九州と北海道を対比して語ってくれた。
その中で、九州では地域発展のために県境を越えて連携することが多い。韓国・中国に近いという地域の特性を生かして「外需の内需化」を大きくすること、つまり韓国・中国人の滞在を常態化させ、長期化させることに取り組んでいるということだった。
 また、北海道より狭い地域に7人もの知事が存在し(沖縄を除いて)切磋琢磨しているとの指摘もあった。
 対して、北海道の三氏はどうも北海道の事情に詳しすぎるためか、言い訳や苦情に終始するきらいがあったようでちょっと残念だった。

 こうしたテーマには私も関心があるので各種のシンポジウムやフォーラムに顔を出しているが、北海道の未来図についてなかなか明確な絵を描けずにいるのが現状である。
 しかし繰り返し、繰り返しこうしたテーマで多くの人たちが論ずることからきっと光は見えてくるのではないかと思う。私も関心を持ち続けたいと思っている。

札幌軟石発掘大作戦 南区の陣 2

2010-10-05 11:21:34 | 札幌学 & ほっかいどう学
 一つの札幌軟石も発見できず、暑さの中で疲れが私たちを包む中ではたして札幌軟石の建造物を発掘することができたのだろうか?それでは続きを…。  
 
 気分を変えるために、近くの藻南公園内にある「札幌軟石採掘場跡」に向かいました。
 そこで札幌軟石を見て、石の特徴を再確認してから再び発掘大作戦に取り組もうとしたのです。
 そして捜索場所も変えてみることにし、藻南公園駐車場に車を停め、藻南公園の周辺を捜索することにしました。

 するといきなり、藻南公園駐車場の花壇の縁石が札幌軟石で囲まれているのに気付きました。さらには駐車場前の歩道も札幌軟石で舗装されていました。

        
      ※ 私の中で最初の発掘となった藻南公園駐車場の花壇の縁石です。

        
       ※ その花壇に接するように歩道に札幌軟石が使われていました。

 マップ上に軟石の位置をポイントし、歩測で長さを測りメモします。さらに形状など特徴を記して一丁上がりです。

 目ざすものを発見できた喜びはモチベーションを大いに上げてくれます。
 藻南公園近くの民家の塀が札幌軟石で囲まれているところも発見できました。

        

 さらには、国道から藻南公園に折れる角のところには、藻南地区のウェルカムゲートと称するモニュメントが立っていて、そこを取り巻く花壇の縁石にも札幌軟石が使われていたのでした。

        
        ※ モニュメントの下のほうの縁石は確かに札幌軟石でした。

 すっかり気分を良くして、初めに入った住宅地に入って調査を続けました。
 こちらはやっぱり軟石を使っているところはありませんでした。
 担当地域の2/3くらい戸数にしておよそ330戸くらいを終えることができたでしょうか。私も妻もかなり疲れてしまったので、この日はこれで切り上げることにしました。

 9月29日、残った部分を私の調査を手伝ってくれると言ってくれた知人の二人の応援を得て、調査を続行しました。
 時折雨が落ちる生憎の天候だったのですが、残りの住宅地域を巡って歩きました。
 やはり住宅街では軟石を使っているところはありません。マップ上の住宅を赤ペンで潰していくだけの作業となりました。
 そうした中で、知人の一人が住宅の基礎部分の縁石に軟石を使用している家を発見しました。ほとんど見逃してしまいそうなところでの発見ですからとても嬉しかったです。
 またその様子からどうやら二次利用ではないかと推測できる状況だったのも調査報告会の席上で発表できそうです。

        
        ※ この軟石の使われ方は、どこかで使っていたものの二次利用ではないかと思われます。

 9月29日に調べた戸数約130戸、二日間の合計で約460戸(大きな集合住宅含まず)の地区の調査から6カ所の札幌軟石を発掘することができました。残念ながら建造物として札幌軟石を使用している建物は発見できませんでした。
しかし、このような札幌の文化遺産を記録するという取り組みに参加でき、個人として一定の役割を果たすことができたことに一種の達成感のようなものを感じています。
 11月末に行われる調査報告会ではどのような結末が待っているのか大いに楽しみです。その様子もまたレポートできたらと思っています。

札幌軟石発掘大作戦 南区の陣 1

2010-10-04 14:30:16 | 札幌学 & ほっかいどう学
 札幌建築鑑賞会というNPOが提唱している「札幌軟石発掘大作戦」に参加している。下見も含めて3日間を要した私の担当区域の調査をこのほど終えることができた。

               

 「札幌軟石発掘大作戦 南区の陣」…、名称がいい!
 遊び心が感じられながらも、札幌の文化遺産をしっかりと記録しようとする心意気に賛同した。
 この作戦は2006年に開始され、これまで中央区、東区、豊平区、北区、そして昨年から南区に作戦を展開しているらしい。
 南区は札幌軟石のメッカということで2年目に入っているそうだ。

 7月17日、趣旨に賛同した30数名の発掘隊員が集まった。
 調査方法の説明、記録のつけ方などの説明を受け、会場近くの札幌軟石の建物を実際に見ながらその見分け方の説明を受けた。
 そして調査区域の割り当てが行われた。
 私に割り当てられたのは、南区の第72調査区域である。と言ってもこのブログを読んでいただいている方にはちんぷんかんぷんだろう。
 具体的には札幌市の藻南公園を含めて、公園から西側の縦500m、横750mの区域である。この中をくまなく調べて、札幌軟石が使用されている建造物を捜すのである。かなりの広さである。

 8月に入り、与えられたマップを片手に現地を確認した。
 しかし、暑さもあり期限にも余裕があったので、この日は確認のみで終わった。

 9月12日(日)、暑さは多少和らいだこともあり、妻に同行してもらいいよいよ発掘作戦を敢行した。
 割り当て区域の西側の住宅地から順にしらみつぶしのように一軒一軒調べていった。
 比較的新しく拓けたところらしく、札幌軟石を使った建物はまったく見当たらない。
 住宅の周りに巡らした門や塀に似たような岩石(らしきもの)が使われているところがあったが、よく見てみると違うものだった。
 すでに150戸以上の住宅を調べたが札幌軟石を使った住宅も倉庫も、門も塀も縁石も何も見つからなかった…。
 暑さと疲れが私たちを包んだ。そこで気分を変えてみることにした。

        
        ※ このように何軒かの家の門や塀に似たようなものがあった
         が、詳細に見てみると札幌軟石ではなかった…。
        

                            (続きは明日のブログに)

札幌の市電延長を考えるシンポジウム

2010-09-12 19:52:27 | 札幌学 & ほっかいどう学
 はたして札幌の市電の延長は本当に必要なんだろうか?私はこの問題に対してはニュートラルな立場であるが、問題を考える良い機会と考え参加したのだが…。

         

 新聞に小さな告知記事が載った。
「◆路面電車はまちづくりの主役 札幌の市電延長を考えるシンポジウム 7日午後1時30分、札幌市教育文化会館(中央区北1西13)。札幌市市民まちづくり局公共交通担当の岸光右部長と、市電を守り再配置をすすめるプロジェクトの荒川尚次体表が、延伸に関する現状や取り組みについて報告と質疑応答を行う。参加無料。(後略)」
という内容に興味を持ち足を運んだ。

 シンポジウムは、札幌市の岸部長から「環境負荷を抑えたまちづくりと市電の在り方」、「市電事業の現況」、「市電を延伸する場合の事業費」、「延伸した場合の事業見通し」、「諸外国・他都市の市電の状況」などについて説明があり、札幌市は平成22年3月に市電を延伸する方針としたが、その規模、延伸する方面などの基本計画はこれからの課題であるとした。
 市としては延伸の方針は明言しつつも、採算を重視し「事業として成り立つ市電」を模索していると受け止めた。

 これに対して、プロジェクトの代表の荒川氏は過去に市電の完全廃止をストップさせた実績と、今後環境負荷の小さい市電の延伸を現在考えられている3方向に採算を度外視しても速やかに実現すべきであり、不採算路線は社会福祉政策として税金で補填すべきだと主張した。
 聞いていた私には、まるで「市電」を公共交通の主役とすべきであるかのような主張に映った。

        
        
 休憩を挟んで、参加者から意見を募った。
 10名の方々が発言したが、そのほとんどは荒川氏の発言に同調するものであり、事業者である市に対してさまざまな要求を突きつけるものだった。
 とても市電の延伸について疑問を呈するような意見を言える雰囲気ではなかった。

 私はこの問題について、現段階では次のように考えている。
 現在ある市電の路線を延長することは交通機関の選択肢が増えることから、一利用者としては歓迎すべきことなのだろう。
 しかし、延長するための事業費見込みが3方向全て整備するとなると約150億円の費用が必要ということだ。そのために税金の投入は避けられないという。しかも確実に採算が取れるという見込みも立っていないということだ。
 こうした状況下で市は延伸を決断したという。それは多分に政治的な判断であったのだろう。

        
        ※ 「路面電車と札幌の未来をみんなで考えてみませんか」
         と題する札幌市が発行したパンフレットの表紙です。      

 この後、この問題がどのような経過を辿り、どのような結論を見出すのか…。
 関係者にはぜひとも市政全般にわたって総合的に考え、判断してほしいと思う。
 財政が逼迫している札幌市にとって解決すべき課題は数多い。
 私には「市電の延長問題」が市の最優先課題だとは思えないし、市電が札幌市の公共交通の主役だとも思えないのだが…。

札幌の自然って結構面白い!

2010-09-07 21:43:17 | 札幌学 & ほっかいどう学
 過日、本ブログで「ボランティアガイド養成講座」を受講するとレポートしたが、その後真面目に講座を受講している。これまで二度にわたって「札幌の自然」について学んだ。その概要をレポートすることにする。

        
        ※ パワーポイントを使って「札幌のおいたち」を詳しく、やさ
         しく説明いただきました。
 
 講座は座学とフィールドワークから成っているのだが、初めは二度とも座学であった。
 8月25日は「札幌の自然~植物」、9月1日「札幌の自然~地質」というテーマの講義だった。講師はいずれも札幌市博物館活動センターの学芸員の方が担当したが、二人とも専門的力量はもちろんのこと、伝える力も備えていて、なかなか興味深い内容だった。

 植物に関しては気候の変動とともに植物相も変化を繰り返してきたということだが、現在の北海道は「冷温帯と亜寒帯が接する地域」にあり、その境目がちょうど札幌を含む石狩低地帯の辺りにあたるということだ。したがって札幌を南限・北限とする植物も数種類あるとのことだった。

 植物は本来、気候によってその植物相が決まってくるのだが、最近は人為的な原因によって植物相が乱されてきているとも指摘した。それは人の往来、輸出入の増大によって移入される植物の種が増えてきたということだ。
 人の往来、物資の輸出入が増えることは歓迎されることであるが、研究者たちにとっては難しい時代だということを認識させられた。

        
        ※ 札幌の地質についての講義を担当した古沢学芸員です。

 地質の話で面白かったことは、日本列島の生成を学ぶ中で北海道が三つの部分(ピース)が寄り集まって出来ているということを知ったことだ。これは初耳だった。

 また、札幌の市街地が豊平川扇状地の上に形成されていて、その扇端部をJR函館線が走っていることは知っていた。しかし、歴史的にはその扇端部がもっと先まで伸びていてその後その部分が海水に侵されて湿地帯となってしまったが地質的にはしっかりしているためにその昔の扇端部付近を高速道の札幌新道が走っているそうだ。

 また、地質学の世界では豊平川河畔で発見された「サッポロカイギュウ」の化石は世界のカイギュウの進化発展を語る上でエポックメーキング的な発見であったということだ。

        
        ※ 実際に発掘されたサッポロカイギュウの化石の一部です。

 このように私の知らない“札幌”を見つける喜びを感じさせてくれる講座である。
 私の「札幌を知る」旅はまだまだ続きそうだ。

北海道を元気にする!? Part Ⅴ

2010-08-14 11:58:46 | 札幌学 & ほっかいどう学
 ここまで4回にわたって「北海道を元気にする!?」イベントについて紹介してきたが、シリーズの最終回として私なりの考えをまとめてみたい。素人の空理空論にすぎないが、自らの地域について素人なりに考えてみることは悪いことではないだろう。 

 Part Ⅳで自分なりにまとめてみたいと書いたが、このような大きな課題をどのように論述するか迷いに迷った。結果、素人っぽい方法で「誰が」「どのように」「どうするのか」という視点からまとめることを試みてみることにした。

《リーダーの育成》 
 地域の活性化を推進していくにはリーダーの存在が欠かせない。
 それは小さな地域の集まりから、市町村、そして北海道全体をリードする存在まで、それぞれにおいて意欲的なリーダーの存在が不可欠だと思う。
 以前、「一村一品運動」が華やかし頃、北海道各地に意欲的なリーダーがたくさん出現したように思う。私はそうした彼らの何人かと話をする機会があったが、彼らは一様に自らの地域を愛し、自らの実践を進めることにとても意欲的だった。
 それらの中から、上士幌町の熱気球や、置戸町のオケクラフトなどが生まれた。

 そうした熱意は今やどこへ行ったのだろう?
 「一村一品運動」の功罪はいろいろとあるのだろうけれど、私は今一度あのようなムーブメントが必要ではないかと思うのだがどうだろう?

 また北海道の現状を改革することに意欲的な北海道全体をリードするリーダーの誕生も待たれるところである。 

《誰かを頼らず》 
 生討論の中で「中央を頼ろうとする北海道」という指摘があった。つまり何をするにも行政を頼ろうとする北海道民の気質を指摘したものである。行政と連携する、行政に提案していくことは地域の活性化を図るとき欠かせぬ視点である。
 しかし、必要以上に行政に頼っていては地域の活性化も、地域の自立もおぼつかないと思う。全国には中央を頼らず、あるいは行政を頼らずとも元気な地域がたくさんあることが報告されている。
 
 誰かを頼ろうとするとき、そこから自由な発想や闊達な動きに制限が加えられてしまう恐れがある。
 誰にも頼らず、自らの知恵と力で自由な試行錯誤を繰り返すことが地域に眠る未知の鉱脈を探り当てることに繋がると私は思う。

《自立の道こそ北海道を元気にする!》
  日本は今、政治的にも、経済的にも、文化的にも、全てが中央集権的な傾向となっている。したがって中央から離れるほど全てが遅れ、離されていくという構図となっている。
 この構図から脱却することこそ今最も北海道に求められることではないかと思う。
 とは言っても、長年培ってきたこれまでの構図からの脱却は言うほど容易ではないことは誰もが知っている。

 しかし、その萌芽は少しずつではあるが育ってきているような気がするのだ。
 例えば以前は存在しなかったプロスポーツチームが次々と誕生したこと、北海道発の文化人やタレントが育ってきたこと、など文化的な面で中央と比肩するような存在が誕生してきたことがある。
 つまり北海道の自立を論ずるとき、そのトップランナーは文化的な事象からではないかと思っている。そのことを後押しするのが北海道内のメディアであろう。メディアが積極的に後押しすることによって北海道民の意識に変革をもたらすのではないだろうか。

 経済面においても北海道発の元気な企業の誕生のニュースが見られるようになってきた。まだまだ規模としてはそれほど大きなものとは言えないが、若手経済人の活躍はこれからが楽しみでもある。
 残りはこうした動きを支え、後押しするために政治的にも自立の道を目ざしてほしいということである。政治的などというと大げさに聞こえるが、それほど大それたことではなく、北海道の人々が暮らしやすく、北海道発の産業が成長するための基盤整備を北海道独自に作り出していくことではないか。

 もはや「ルック東京」ではなく、「北海道のローカルスタンダード」を確立すべきときだと私は考える。
 
 まったく稚拙の域を出ない私の考えだが、現時点での思いを述べてみた。
 私のように名もない人間が稚拙でもいい、独りよがりでもいいから北海道を元気するために自らの考えを表出する人が増えることが北海道の自立に繋がっていくと信じている。
 これからも「札幌を知る」活動を続け、仲間と学び続けながら、この問題について私なりに考えていきたいと思っている。



北海道を元気にする!? Part Ⅳ

2010-08-13 09:19:32 | 札幌学 & ほっかいどう学
 講師の木村俊昭氏は、ある時はスーパー公務員と称され、またある時は地域再生の仕事人とも呼ばれ、全国を駆け回っている。NHKTV「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演されたというスーパーな人だった。

        
 
 HTBの「北海道朝まで生討論」が放映された同じ8日に公開講演「北海道を元気にする!」と題する講演会が自治労会館で行われ、知人と共に参加した。
 講師の木村氏は全く未知の方だったが、案内パンフレットで小樽市から農水省に出向している方だということだけは予備知識としてあった。
 しかし木村氏は今や相当に有名な方であることを知り、私の不明を恥じた。
 木村氏は小樽市職員として、小樽の歴史的建造物を活用した全国初のライトアップに関わったり、「ガラスの街・小樽」のブランド化を成功させた手腕を買われ、2006年より内閣官房企画官として出向し、2009年小樽市に復職後間もなく再び農水省の企画官として招請され現在に至っている人である。

        

 主催者から紹介がなかったが、本当の講演題は「地域活性化の動向~農商工連携等の事例を交えて~」というものだった。
 木村氏は自らの事績について触れることはほとんどなかったが、全国で地域が活性化している事例を紹介する中で自らの理念を語っていった。そのいくつかを紹介したい。

《プラス思考でいこう》

 地域の活性化がうまくいっていないところでは、できない理由を並べ立てる傾向がある。自らの地域の可能性のあるところに目を向けよう。木村氏は全てのことをプラス思考で考えるようにしていると言う。

《如の心を持とう》
 「如」という字には「柔和に従う」という意味がある。この言葉の意味するところは、自らの意思はしっかりと持ちながらも、全体の意思にはしなやかに、柔和に従うことが地域の一体感を生み出すことに繋がるという意味ではないかと私は解釈した。

《エレベータートークを心がけよう》
 人に伝えていくときは「わかりやすさ」が一番である。エレベーターに乗っている程度の短い時間で言いたいこの要旨を述べ、相手に理解してもらうことが大切である。

《いい人で終わってはいけない》
 北海道人は「いい人」と言われる。つまり、北海道人は素晴らしい原材料を提供してくれるいい人だというのである。他府県はその素晴らしい原材料を用いて付加価値の高い製品を産出しているのである。

《街全体の最適化を考えよう》
 個別最適化をやっても地域は活性化しない。街(地域)全体がどの方向に、どのような方法で改善し、潤っていくかを考えねば地域の活性化はおぼつかない。

《行政に頼らない》
 木村氏はこうした語録を披露しながら全国各地のさまざまな実践を紹介した。
 その中で鹿児島県鹿屋市の柳谷(やなだん)集落の実践が印象に残った。
 柳谷集落は戸数わずか126戸、人口330人の小さな集落だが、一人のリーダー(豊重哲郎氏)を中心に行政には頼らず、集落としての生産活動を行い、住民の心を一つにし、さらには外から移住する人を迎えるなど注目すべき地域づくりを実践しているということだ。
 ここで学ぶべきは「行政に頼らない」、そして「強力なリーダーの存在」ということだろうか。
 「行政に頼らない」ということは理念としては理解できる。しかし「強力なリーダー」はそうそう簡単には出現しない。

 木村氏には「地域活性の伝道師」として全国を回り、全国の素晴らしい実践を紹介するとともに、全国各地にやる気のある「強力なリーダー」をたくさん育ててほしいと願った。

        

 さて、次回このシリーズ最終回として、このテーマについて現時点での私なりの考えもまとめなければと思っています。しかし、今の時点では何のアイデアもありません。今日これから一日かけて考えてみたいと思います。

北海道を元気にする!? Part Ⅲ

2010-08-12 16:57:02 | 札幌学 & ほっかいどう学
 「北の大地に未来はあるのか」のHTBテレビ「北海道朝まで生討論」は北海道の負の因子を取り除く処方箋として“北海道独立論”に話が進んでいった。 

【北海道独立論とは?】
 さまざまなところで、さまざまな論者が論じている“北海道独立論”であるが、番組では手嶋龍一氏が文化人類学者の梅棹忠夫氏が若き日に著した「北海道独立論」について紹介した。
 梅棹氏は戦後の北海道には二つの道があると指摘した。
 その一つは、政治を機軸としたとき、中央政府からの自立を目ざすのか、それとも従属するのか。
 もう一つは、産業や文化を機軸としたとき、本州の産業や文化から自立するのか、それとも同化してしまうのか。と指摘したというのだ。

        
        ※ 道産子である手嶋氏は北海道の自立論を熱く語った
 
 その後の北海道の姿は、政治的にも、経済的、文化的にも中央にひたすら従属し、同化する道だったと手嶋氏は指摘する。
 従属同化 、なんと屈辱的な言葉だろう。
 ここら辺りに北海道を元気にするヒントが隠されているような気がするのだが…。

        
        ※ 函館市長の西尾氏はやや我田引水的な論に走ったきらいがあった?

【北海道の自立を模索して…】
 「北海道の独立」と表現すると過激に聞こえる向きもあるかもしれないが、意味するところは梅棹氏が指摘するように政治的、経済的、文化的に中央からの自立を意味する言葉として捉えたい。
 その自立がなぜできないのか。
 パネリストたちは「北海道民は危機意識が薄いのではないか」と指摘した。

        
        ※ 政党の論理から逸脱できない紙氏の論には限界を感じた?

 パネリストの一人、松田氏は北海道民の生活レベルはけっこう高いのでそこに満足してしまっているのではないか。しかし、北海道自体は起債収支(国でいうところの貿易収支)の赤字が膨らみ国からの補填も難しい状況の中、北海道自体が外貨(国内において道外から利益を得ることも含めて)を稼がねばならない状況となっていると指摘する。

 そして松田氏は徐々にではあるが、北海道の中にも「何とかしなければ」という機運が芽生え、従属と同化の歴史から脱却し自立への道を模索する動きが出てきていると言う。
 番組で話題に上った農業、観光業はもちろんのこと、注目すべきは松田氏が直接関わるIT産業においても札幌は国内的に注目されるポジションにいると彼は言った。
 こうした胎動に我々は注目していきたいと思う。

        
        ※ どのような話題にも独特の論理を展開した堀江氏        

 番組の最後に田原氏は「北海道の状況は、日本の状況に似ている」と言った。その意味は地盤沈下が著しい日本経済だが政治家も含めて関係者の危機意識が低い状況は、北海道の状況と良く似ていると…。
 そうさせてはならないだろう。それでは北海道が一番最初に沈没してしまう。そうはさせないために官民一体はもちろんのこと、私たち一般庶民もこの問題に深い関心を示していくことが必要だと私は思う。

        
        ※ 良くも悪くも田原氏の仕切りに左右された討論でした。

 次回は、もう一つの講演「北海道を元気にする!」をレポートすることにします。

北海道を元気にする!? Part Ⅱ

2010-08-11 13:09:38 | 札幌学 & ほっかいどう学
 「北の大地に未来はあるのか」のHTBテレビ「北海道朝まで生討論」はいよいよ北海道の主産業である農業(漁業)、観光業の振興について話が移っていった。
 
【農業は産業か?否か?】 
 ここでの大きな論点は、日本の農業を他の産業と同じように産業として位置付けすることが是か非かという点であった。
 大きく色分けすると、実業家・評論家は産業として位置付けたうえで大規模化を図り諸外国の農産業にも伍していくべきと主張した。
 対して政治家たちは立ち位置はそれぞれ異なるが、産業として成立しなければならいとしながらも農村社会(コミュニティー)を維持していくことも切り離せぬ問題だと主張した。

        
        ※ 政権党議員としてよく勉強され、誠実な受け答えが印象
         的だった民主党の佐々木氏

 ここでの共通認識は北海道の農業も含めて日本の農業を産業化しなければならないという点だった。そのためには農地法を見直すことも必要との指摘があった。
 グローバル化した社会において、世界に伍していくためには農業もまた産業化しなければならないという指摘であるが、実業家や評論家のようにドライに割り切れない問題も内包しているように思える。
 EU諸国が農村社会を維持しながら、産業としても成り立っていると紹介したパネリストがいたが、日本(北海道)の農業が目ざす一つの姿なのかもしれない。

 議論の中で田原氏が「チャーミングな農業」という言葉を用いたが、私には耳新しい言葉だった。意訳すると「関係者以外にとっても魅力的に映る農業」ということになるだろうか。
 そして今や日本は「農本主義」からの脱却が必要であるということだった。

        
        ※ いまひとつ主張が不明確だった公明党の稲津氏

【観光北海道を売り出すには?】
 この部分は司会の田原氏の関心が高いとは言えず、議論の深まりはそれほどなかったように感じた。
 その中で二三指摘があったこととして、一つは宣伝活動の重要性ということだ。このことは言わずもがなであるが、まだまだ足りないという指摘であろう。
 観光の素材が揃っている北海道であるが、見るだけの観光ではリピーターは望めない。体験する、創造するなどの付加価値を感じられる観光へ進化を図るべきとの指摘があった。
 そして戦略的に発信する必要性ということで、映画をはじめとしてさまざまな媒体を有効に活用した情報発信の必要性を指摘したパネリストがいた。彼は現在フィルムコミッションと連携して北海道を素材にした映画製作に取り組んでいるとのことだった。

        
        ※ 議論の和に加わることが少なく気の毒だった羅臼町観
         光協会事務局長の三浦氏

 議論の中で観光に関わっている二人のパネリストが現状に対する言い訳的な発言が気になった。観光産業の現場に近い、問題点に詳しいことがそうした発言に繋がったものと思うが、だからこそ力強いメッセージを聞きたかった。

 観光産業の振興のためには、中韓台などを中心とする海外観光客の誘致のためには前記したような施策が必要と思うが、やはり国内旅行客が増えることが何より重要だと思う。
 そのためにはやはり景気を回復させ、国民生活に余裕が出てくるような状況を作ることこそ肝心なのではないだろうか。

        
        ※ 帯広屋台村を開設したり多方面で活躍する観光カリスマの坂本氏

 番組では「北海道独立論」に話が進んでいく。そのことについては次回に…。