UHB(北海道文化放送)制作の「厚真の土にいきて」というドキュメンタリーを視聴した。北海道胆振東部地震で一家4人のうち3人を失いながら一人だけ九死に一生を得た山本隆司さんが父の遺志を受け一人懸命に立ち上がろうとする姿を描いた感動のドキュメンタリーである。
※ 今回掲載した写真は全てウェブ上から拝借した写真です。
今日(20日)、札幌市教育文化会館において日本映画テレビ技術協会北海道支部主催の「キタ・ドキュメント」が開催され参加してきた。「キタ・ドキュメント」とは、NHKを含む道内放送各社がそれぞれドキュメンタリー番組を一作提供するとともに、高校放送部のフィルム他を一挙放映するイベントである。私は朝10時から参加したのだが、14時でSTVとHBCの番組は見ずに帰宅した。
私が視聴したのはNHK制作の「目撃!にっぽん『“遠すぎる”郷土~北方領土 島民の歳月~』」、TVh制作の「人間国宝 柳家小三治~噺家人生 悪くねぇ~」、UHB制作の「厚真の土に生きて」に、高校放送部の作品4作品だった。
放送各社の作品はそれぞれ各社の代表作であるからとても見応えがあったが、私から見てUHB制作の「厚真の土に生きて」が特に私の心を打ったのである。
※ 地震で破壊されてしまった農業機械を見る山本さんです。
ドキュメントの対象は山本隆司さんという54歳の独身男性である。山本さんは米作農家の長男だったが大学に進学し、 コンピュータ関係の会社に就職したのだが心の病から退職し実家に帰っていた。山本さんの父親は“米作りの名人”として知られる農家だったが、山本さんは父親の米作りよりはカボチャ作りに精を出していたようだ。そんな中、2018年9月6日未明、あの北海道胆振東部地震が発生した。山本家は山の麓に家があったために崖崩れによって一家は生き埋めとなってしまい父母、そして妹の三人を失ってしまった。山本さんも家族同様に生き埋めとなりながらも奇跡的に助かることができた。
※ 新調した農業用トラクターを調整する山本さんです。
実はここまでは山本さんの背景を説明したのであって、ドキュメントの本番はここからである。米作りの経験もない山本さんがあれこれと思い悩んだ末に父の遺志を忖度し、米作り農家として生きていこうと決心し、米作りに挑戦する姿をドキュメントは描いているのである。
山本さんの水田は崖崩れによって使える状態ではない。山本さんは米作りを諦めた親戚の水田を借りて米づくりをしようと決心したのだ。しかも農作業用の機械を一新して…。
※ 実りの秋を前にして水田を眺める山本さんです。
先述したように山本さんは現在54歳、けっして若くはない。しかも未婚である。そんな背景の中でなぜ米作り農家として生きようとしたのか?そこに彼の父に対する尊崇の念、あるい農業人としての誇りのようなものを感じさせるのである。
山本さんは、米作りはほとんど素人である。周りの米作り農家の方々の指導、農協職員の支援を受けながら失敗を失敗を何度も繰り返し、試行錯誤しながら米作りに挑戦する姿を描いていく。
山本さんの決心は容易ではない未来を予測させる。例え米作りに精通することができたとしても農業人として54歳は若くはない。しかも一人である。他人事ながらその未来が心配である。
ドキュメントを観ていた私は彼の未来に対して何もできない。ただ声援を送るのみである。できうるならば、制作したUHBには今回のドキュメントで終わりとするのではなく、山本さんの奮闘ぶりや健在の様子を追い続け、私たちに伝えてほしいと思うのだが…。