この春、4月に石狩湾に姿を現した洋上風力発電が本格稼働を始めたことが話題となった。いったい風力発電とはどのようなものか、そしてそのメリットとデメリットは何か?研究者からお話を伺った。
本日午後、札幌コンベンションセンターにおいて「GLOBAL OFFSHORE WIND SUMMIT JAPAN 2024」が開催され、数多くのプログラムの中で一般市民にも開放されたオープンセミナーの特別講演に参加した。
特別講演は「洋上発電事業と地域の共発展」と題して東邦大学理学部生命圏環境学科の竹内彩乃准教授が講演された。
竹内氏は私たち市民にも理解できるよう、明快に分かり易く説明いただいた。
氏のお話の概要をレポしたい。
まず、洋上風力発電とは文字どおり海上において風力発電をすることで、風車本体を海底に着床する「着床式」と、海上に浮かばせる「浮体式」があるということだ。その「着床式」、「浮体式」にもさらに細分化された方式があるということだが割愛したい。石狩湾で稼働を始めた風力発電は「着床式」(ジャケット式)だという。
※ 洋上風力発電の着床式、浮体式の概念図です。
今、洋上風力発電を推進する理由として、次の3点があるという。その3点とは…
① 気候変動対策(石化エネルギーからの脱却)
② エネルギー自給率の向上
③経済波及効果(新たな産業の創出)
さらに、洋上風力発電を推進するメリットとして
① 事業効率の良さ
② 大量導入のポテンシャルの高さ(海に囲まれた日本)
③ 経済波及効果
④ 漁業への影響(海底部にできる漁礁による魚類の増加)
反対に課題としては
① 生態系への影響(バードストライクなど)
② 景観への影響(海上に人工物の出現)
③ 設置、メンテナンスコストの高さ
こうしたことを背景にして、洋上風力発電を推進するには “地域共生” が必要となるが、そのための視点として、「双方向の熟議学習」が必要であり、さらには洋上風力発電の導入が「コミュニティの便益」に寄与することが大切と解説された。
さらに、我が国の洋上風力発電をさらに推進するためには「再エネ海域利用法」の整備、あるいは領海からEEZへの展開が必要であるとした。
最後のキーワードとして「地域との共発展」(共発展とは私には初耳のワードだったが、産業と地域がともに発展することと私は理解した)のためには再エネ海域利用法に基ずく “法定協議会” を機能することが大切と結んだ。
陸上の風力発電が風況の難しさ、あるいは生態系への影響などの問題から限界が見えているのに対して、周りを海に囲まれている我が国にとっては可能性のある方向なのではと思われる。
石狩湾で稼働を始めた洋上風力発電は14基で一般家庭約8万3,000世帯の年間消費量に相当する電力の発電が可能だという。竹内氏のお話では、石狩湾に設置した風車は直径が84mのブレード(羽根)だという。しかし、現在の技術はさらに大きなブレードを造る技術も可能なレベルだという。
※ 石狩湾で稼働を始めた14基の洋上風力発電です。
さまざまな課題も多いと思われるが、ポテンシャルの高さは相当である。課題を解決しながら推進していくことに期待を寄せたいと思わせてくれた講演会だった。